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SR:B 2 ─ そして世界は狂い出す─ 【裏版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 現実世界編
9/41

またお前かよ【9】


 朝倉と別れ、ずぶ濡れで家に帰りついた俺は、すぐに風呂に入って服を着替えた。


 髪をタオルで乾かしながら、俺はリビングへと移動する。

 途中、食卓の上のメモ紙を目にし、買い物を頼まれていたことを思い出す。


 あ。買い物のことすっかり忘れてた。


 リビングの窓から外へと目をやれば、空はまだ灰色の雲に覆われていて、雷もまだ鳴っている。雨もまだ止みそうにない。


 この雨だと野球も無理だな。


 俺はソファーの上にあったリモコンを手に取ると、テレビの電源を入れた。

 ニュースに切り替える。

 ちょうどお天気の西野アナが午後から夕方まで雨が降り続くことを伝えていた。


 あーぁ。これで野球は中止だな。


 倒れ込むようにゴロンとソファーに横になる。

 そのままの状態でテレビを見ながらリモコンでチャンネルを変えていく。


 なんか面白い番組やってねーかなー。


 すると頭の中でおっちゃんが声をかけてきた。


『暇そうだな』


 行かねぇぞ、俺は。


『ほぉ。俺が言いたいことを先に予知してくるとは驚きだ。そんな能力を与えた覚えはないんだが』


 今までのパターンじゃねぇか。少しは定型文変えて言ってこい。


『なら変えよう』


 あるのかよ。


『午後十時を忘れるなよ』


 今度は何を始める気だ?


『秘密だ』


 言えよ。


『やーだね』


 クソが。


『糞はトイレで出すものだ。口から出すものではない』


 もういい、わかった。終わりにしよう。おっちゃんと口論しても勝てる気がしない。


『へっへーんだ。ざまぁみろ、お尻ぺんぺーんだ』


 だが精神年齢では勝てる。


『ぅぐっ……! い、言うじゃねぇか』


 まぁな。


 ふと、電話のベルが聞こえてくる。

 きっと朝倉だ。午後の野球のことで電話してきたに違いない。


『それはどうかな?』


 そうだろ。タイミング的に。


 俺はだるい体をソファーから起こし、玄関に置いてある電話へと歩いていった。

 玄関にたどり着いて。

 受話器を取って、相手の声を聞くより先に俺は告げる。


 朝倉だろ?


 すると電話先の声が妙にハイテンションで、


「結衣ちゃんでーす」


 俺は迷わず電話を切った。

 頭の中でおっちゃんが言ってくる。


『だから言っただろ?』


 お前は電話会社の回し者か?


 すると、すぐにまた電話がかかってくる。

 俺は受話器を取った。単調な声で、


 ただ今留守にしています。御用の方は発信音のあとに──


「ねぇK、お願い。ちょっとここまで迎えに来てよ」


 なんでだよ。


「だって急に雷がキャー!」


 電話先から結衣の悲鳴と雷の音が聞こえてくる。


「だからね、一人じゃ怖くて帰れないの」


 別の奴に頼めよ。


「どうして?」


 なんで俺なんだよ。


「せっかくゲームの世界の話をしようと思ったのに」


 はぁ。

 俺はため息をついて尋ねる。


 今どこにいる?


「深橋」


 自力で帰れ。じゃぁな。


「あーうそうそ、切らないで。冗談だから」


 で? 本当はどこに居る?


「いつもの商店街。待ってるから絶対来てね。じゃぁね」


 あ、オイ! 商店街のどこ──


 ぶつり、と。

 電話は一方的に切られた。



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