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SR:B 2 ─ そして世界は狂い出す─ 【裏版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 現実世界編
5/41

おっちゃんは眠たい頃に話しかけてくる【5】


 貸し切った資料室のスクリーンにて、上映が始まって数時間が経過する。

 特にこれといったKの有力情報が流れるわけもなく、謎めいたKをネタにした杉下ゆいなの体当たり追跡珍道中や、投稿ネタを真面目に検証する大学教授等の小難しい空想科学分析、寄せられた投稿を元にお笑い芸人が想像するKの珍妙画など。

 司会のラキボイの小川が、相方の井村にツッコむ。


「なんでだよ! お前のそれ、もう人間じゃないだろ!」

「え? Kの正体ってツチノコじゃないんですか?」

「それのどこがツチノコだよ!」


 都市伝説をネタにした普通のバラエティー番組だった。

 そのことに安心した俺は心地よい冷房の風と暗い室内が重なって、ついウトウトと眠りに入る。


『ようやく睡眠休憩か』


 誰のせいでこんなに眠いと思っている?


『なんだ。朝のことをまだ怒っているのか? 忘れろ忘れろ。それより良いタイミングだ。今からドギメギするようなゲームの世界に行こうじゃないか。よし、レッツ・ランデブー』


 夢現でいるせいか。

 おっちゃんの言葉が意味不明に聞こえてくる。

 特に後半。


『わざと言ったんだ』


 そうかい。


『それよりお前、今からこっちの世界に来ないか?』


 行かない。


『そうか。それなら強制的にぶっ飛ばすまでだ』


 ふざけろ、てめぇ。


『冗談だ。そう怒るな。お前にこっちの世界でやってもらいたいことがある』


 断る。


『ん? 今雑音でよく聞こえなかった。もう一度言おう。お前にこっちの世界でやってもらいたいことがある』


 何度繰り返そうと俺の答えは同じだ。


『そうか。なら仕方ない』


 ──って、聞こえてんじゃねぇか!


 おっちゃんが鼻で笑ってくる。

『十時だ』


 十時? って、今からか?


『いや、夜の十時だ。その時間にお前を強制的にこっちの世界へ引き込む。また病院送りにされたくなければJを誘っておけ』


 急すぎだろ。Jが仕事だったらどうするんだ?


『その時は諦めろ』


 ふざけんな。Jが仕事だったら俺は行かない。


『あーあー聞こえない。時間が近づいたらまた声をかけ──』

『そんなところで何しているんデシか? 団長』

『どわっ! なんだこの猫!』


 え? この声、デシデシ? しかも団長って


『猫じゃないデシ。でしでしデシ』

『しっ! 馬鹿、この近距離でしゃべってくるな。アイツに聞こえるだろうが』

『アイツって誰デシか? 誰と話しているデシか?』

『どうでもいいからあっち行ってろ。三十分は部屋に入るなって言っておいたはずだろ』

『やっぱり変デシ。ここに帰ってきてからの団長はまるで別人のようデシ。お前は誰デシか? 処刑される前に棺桶に隠れて逃亡できたって話もなんか変だったデシ。──まさかお前、黒騎』


 荒々しい物音とともにデシデシの声が止まる。

 おい、おっちゃん! デシデシに何したんだよ!


『安心しろ。ちょっと魔法で吹っ飛ばしてやったら失敗したってだけの話だ』


 安心できるかッ!


『あ、そうだ。それからお前……』


 おっちゃんの声が急に雑音に紛れて聞こえなくなっていった。



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