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第十二話

 ここに来るのは久しぶりだった。

 階段を昇った先で視界に広がる森のアーチ。そしてその奥にひっそりと佇むおばあちゃんの家の輪郭がみえる。


 昼でも暗いこの道は夜になると真っ暗だった。僕が携帯に指を滑らせてライトを付けると、二人もそれに続く。白い光が足元にうっすらと生えた苔を照らし、時折枝の折れる音が鼓膜に触れた。


 奥まで進み、ようやくおばあちゃんの家が目の前に現れた時、僕は肩を落とし膝から崩れ落ちた。


 天まで伸びる程の巨大樹の隣にひっそりと佇むおばあちゃんの家は真っ暗で、小窓から覗く部屋の中は、物という物が無くなっており、殺伐としていた。


 ここにもう、海月はいない。

 直感でそれが分かったのだ。


 また、すれ違いになってしまった。


「海月っ!!!」


 居るなら返事をしてくれという気持ちから、気付けば僕は腹から声を出していた。


 ふざけんな。

 海月、君は一体どこにいるんだ?

 僕たちを嘲笑うかのように、転々と場所を変えて、一体何が望みなんだよ。

 僕たちのことをそんなに信用出来ないのか?悩みがあるなら、抱えているものがあるなら、僕たちに打ち明けてくれたらいいじゃないか。


 地面に爪を立て土を握りしめた。ずっと抑えていた黒い感情が心の中で渦を巻く。


 その時、肩に手が触れた気がして僕は見上げるようにして振り返る。すると、静香の顔が視界に広がり、精一杯の笑顔を、切なげな笑顔を、僕に向けてくれていた。


「また、次のメッセージを待とう?これで終わりじゃない気がする…。きっとまた来るよ。」


 これで終わりじゃない…。

 確かに僕自身そんな気はした。

 海月からのメッセージまだ続くはずだ。きっと。


 差し伸べられた拓馬の手を掴み、僕は身体を起こした。


「……でも、どうしたらいいんだ?」


 拓馬の放った問いを、僕は頭の中に取り込み疲弊しきった頭を使い必死に考えた。今日一日で、心も身体も頭もぼろぼろになるほどに疲れきっていた。でも、それは僕だけじゃない。拓馬も、静香だって同じはずだ。


 何か変化のある一手を打たなくちゃならない。このままじゃいたちごっこを続けるかのようで、一向に海月との距離は縮まらない。


 先回りするくらいの考えで居なくちゃ駄目なんだ。


 その考えが頭に芽を出した時、ふっと思いついた。


 僕は、僕たちは、写真から海月の居場所を割り出そうとしていた。もし、文章にも意味があるなら、海月の考えや次の行き先が分かるかもしれない。


 ポケットから携帯を取り出した僕は急いで指を滑らせた。

 

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