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第十一話

 電車を降りた僕たちは駆け下りるように階段を降りていき、改札口を抜ける。


「商店街を抜けて高校の前を通るのが確か一番近いよな?」


 拓馬が息を荒げながら問いかけてきたので、足を動かし続けながら僕はただ頷いた。


 ここから徒歩で二十分ならば走り続けたら半分近くまで時間を短縮出来るはずだ。

 既にシャッターの降りた店が立ち並び静けさが漂う商店街に僕たちの駆ける音が響き渡った。虫の鳴き声も最初は聞こえていたが、息があがる程にその音は遠くなっていく。


 荒ぶった息が夏の夜空に溶けていく。

 腕を振り、足を動かし、ただ海月への思いを向けて、僕たちは足を止めることなく走り続けた。


「ちょっと…待っ‥て、ほんとに…休憩させて。」


 高校の前を通り過ぎ、ようやく石畳の階段が目の前に現れた時、静香が両膝に手をついて途切れ途切れに呟いた。


 僕も拓馬も息を整えるので精一杯だった。

腰に手を当て、見上げるようにして顔をあげる。酸素を求めた肺が空に向かって飛び出していきそうな程に激しく胸が上下する。


「ちょっと、休憩しよう。もし…海月がいるなら、どっちみちこの階段を…通り過ぎるはずだ。」

「だな、休憩しよう…。」


 僕はそう呟いたあと石畳に腰を下ろした。そのあと、拓馬と静香も続く。

 両手を石畳につき、夜空に顔を向けた。

熱を持った身体が石畳から伝わるひんやりとした温度で少しだけ冷やされていく。この辺りは街の灯りが比較的に少ない為、星が綺麗にみえた。真っ暗な空を彩るように大小様々な星が瞬いている。


「あー疲れたな。海月のやつ、俺をこんなに走らせやがって。見つけたらこりゃ説教だな。」

「ほんとにそうだよ!私にもこんなに心配かけてさ、言いたいこと沢山あるんだから!」


 二人のやり取りを聞いていると、自然と笑みが溢れてきた。

 確かに、僕も海月に言いたいことは沢山ある。まだ伝えてない気持ちだってあるんだ。

 花火大会の日は、僕が気持ちを伝える前に海月にキスをされて最後まで言い終えることが出来なかった。

 二人にしっかりと叱ってもらったあと、僕も気持ちを伝えよう。


 そう思うと、早る気持ちが芽を出した。


「そろそろいこうぜ、あとちょっとだ。 」


 僕がそう言うと、二人はすっと立ち上がり石畳の階段に足を掛けた。

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