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第十話

 時刻は20時を回りホームで待ち始めてから2時間が経った。もう何本通り過ぎていく電車を眺めたのだろうか。その度に海月に置いていかれるような気持ちに駆られ、胸が張り裂けそうになる。


 隣で座る拓馬は両手を天に掲げるようにして身体を伸ばしている。静香は、ぼぅっと遠くをみるかのように向かいのホームを見つめていた。


 僕は、海月から一日ぶりに届いたメッセージを読み返していた。たった一日だったのに久しぶりに届く海月のアイコンから放たれた文章は言葉には言い表せないくらいの愛おしさを感じた。


 海月、頼む。早く連絡してくれ。

 一体どこにいるんだ?


 懇願するかのような目で僕は夜空をみつめ、残りかけのカフェオレを音を立てて啜った。


 その時だった。


 左手で握りしめていた携帯が振動する。拓馬と静香も椅子に持たれていた身体を飛び上がるようにして起こした。

 僕は、急いで携帯に指を滑らせる。


 画面に浮かび上がるのは、海月からの二つ目のメッセージだった。


『人の心に触れたいと思ったのは、人の笑顔をみたいと思ったのはいつ以来だったろうか。少なくとも季節を幾つか遡らなければ、その記憶には辿り着けない。


 この場所で、私は、人生を知った。喜びも、楽しみも、幸せも、そして悲しみも。


 人はいつかは死ぬ。産声をあげた瞬間から運命(さだめ)の道を歩いている。


 その長い道を、歩けるのは、何故だろう。

 きっとそれは、希望があるからだ。


 今を刻んでいく未来に、ひかりがあると信じているからだ。


 でも、その先に、ひかりがないことを、道が途絶えてしまっていることを、先にみえてしまった人間にそれはない。


 私は歩いている。人とは違う道を。

 その先に終わりがあるなら、自分でその時は決めよう。


 私は歩いている。永遠(とわ)(いとま)へと続く道を。』



 海月からのメッセージは、再び文章と共に写真が一枚添えられていた。


 暗がりで細部までは見えなかったが、この写真はひと目みただけでどこの場所を指しているか分かった。


 木造の建物に見覚えのある小窓。写真が切れてはいるが、草木が生い茂っている部分の先は切り立った斜面が続き、小川へと続いているのだろう。


 そう、おばあちゃんの家だ。


 電光掲示板に視線を送ると、電車が来るまであと二分。おばあちゃんの家まではここから四駅で徒歩で二十分程だ。駅から走れば更に短縮することが出来るだろう。


「響、おばあちゃんの家だな!」

「だね!」


 拓馬と静香も写真をひと目みて気付いたみたいだ。当然の事だろうと思った。僕たちにとってあの場所は、おばあちゃんは、かけがえのない大切な場所であり、人だったから。


「今度こそ、絶対に海月を見つけよう!」


 僕が語尾を強めてそう発すると、二人は力強く頷いた。

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