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第七話

『朝と昼を同時に失ったかのような心地だった。暗い、暗い、道を、這いつくばるようにして歩かなければ前にすら進めない道を、私は歩いていた。その道にひかりが差したのは、君が私の前に現れたから。目の前に溢れる日常の欠片が途端に輝いてみえた時、人はそれを幸せと呼ぶのでしょう。』


 海月からのメッセージは文章と共に写真が一枚添えられていた。見たところ、駅のホームのようにみえる。お世辞にも綺麗とは言えない、年季の入った駅だ。


「朝と昼を同時に失ったかのような心地…?なんだこれ、何かの暗号か?」


 拓馬は海月からのメッセージを読みながら首を傾げてる。静香は咄嗟に海月に電話を掛けていたが、僕をみると小さく首を横に振る。


「いや、たぶん詩だよ。海月は詩を読むのが好きだったんだ。」


 僕は穴が空くほどに携帯を凝視していた。送られてきた文章よりも写真の方が気になった。全体が映し出されていないせいで確信は持てないが、どこか見覚えのある駅だった。写真の上部には電光掲示板が映っており、17時16分発と表示されている。


 どこだ?

 海月、君は今どこにいる?


 隈なく写真をみていると、ある部分に気づく。アーチ状に掛かった屋根に赤褐色に錆びついた小さな穴が二つ空いてることを。


「ここだ!!」

「えっどういうこと?」

「海月は今、あの駅のホームにいる!!」


 僕が指を指す方向。それは、毎日通学する為に使用する駅でもあり、僕が海月と初めて出会った場所でもある。以前から屋根に小さな穴が空いており、雨が降る度に滝のように水が流れ落ちてくるので、いつ直すのだろうかと疑問に思っていたのだ。


 時計に視線を送ると、時刻は十七時十五分を指していた。十六分発なら急げば間に合うかもしれない。僕は、勢いよく地面を蹴った。駅から流れてくる人を縫うようにして走り、券売機の前に辿り着く。


 僕が財布を取り出そうと、後ろのポケットに手を伸ばそうとした時、拓馬が「ほら、これ使え!」と千円札を渡してきた。急いでお金をいれ、どれが一番安い切符なのかと確かめる時間がなかった為、一番左にあった百九十円のボタンを押した。


 改札を抜けた頃には、階段から次々と人が降りてきた。


「くそっ、、畜生。」


 息はあがり、呼吸が上手く出来ない。肺がきりきりと痛み足が少しずつ上がらなくなってきた。それでも、足を遅めることなく、ただ階段を駆け上がった。


 海月に会いたい。

 ただ、それだけの一心で。


 だが、僕がようやくホームに辿り着いた時には、既に電車は走り出していた。最後列の車両が夕陽の中へと消えていく。


 荒ぶった息を吐き出しながら、両手に膝をついた僕は力無く崩れ落ちた。

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