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第五話

 交番に辿り着いたのは、十六時を過ぎた頃だった。少しずつではあるが夕方になると、涼しさを感じるようになった。今は、八月も終盤。もうすぐ夏も終わりを迎える。


 僕は青が薄くなり始めた夕暮れの空をみつめ、何故か無性に切ない気持ちに駆られた。


「よしっ行くぞ」


 扉を開くと、中には青の制服に身を包んだ若い警官と年配の警官が座っており、僕たちを見るやいなや「どうされました?」と声を掛けてくる。促されるままに僕は椅子に腰を下ろし、静香と拓馬は僕の後ろに立った。


 二人に話したように、僕は今日見聞きした話を年配の警官に全てを伝えた。そして、一刻も早く海月を見つけ出して欲しいということも。


「なるほどねぇ、ちなみにその居なくなった海月さんのご両親は君たちが警察に届け出を出そうとしていることを知っているのかな?」


 年配の警官は僕の話しを聞き終えるとそう呟き、こめかみの辺りを左手でぽりぽりと掻く。水面に貼り付くような笑みを浮かべてはいるが目は笑っていない。僕は尻込みしてしまいそうになりながらも、海月を見つけ出すという決意の元に強く意気込んだ。


「いえ、知りません。でも、海月のお母さんから事件性がないということで警察はまともに取りあってくれないということは聞きました。だから、早く動いて貰えるように僕たちがこうして来た訳です。」

「確かに事件性は今の所ないからね、署をあげて動くということは出来ないね。これが誘拐とかなら話はまた変わってくるんだけどね。」


 淡々と話し続ける年配の警官に対して、少しずつ憤りが高まっていく。太ももの上で二つの拳を作り、爪の跡が残る程にぎゅっと握りしめた。


「事件性、事件性ってそんなのどうでもいいから海月を探して下さいよ!もし、海月に何かあったらどうするんですか?」


 若い警官は何やら書類に書き込みながら、ちらちらと僕をみる。


「悪いけど、これは決まりなんだ。とりあえず今日の夜から巡回のパトロールを増やすことは出来る。そうしよう。」

「そんなのじゃ駄目だ!!」 


 もう我慢の限界だった。

 僕と年配の警官の間にある白い机を両手で叩きつけると、若い警官がすっと立ち上がった。それを制止するかのように、年配の警官はぴんと伸ばした右手を宙に浮かせる。


「もういいです。静香、拓馬、帰るぞ!」


 最後は吐き捨てるようにその言葉を残し、僕たちは交番をあとにした。


 海月のお母さんの言った通りだった。

 警察はまともに取り合ってくれない。

 海月は世間一般的に言えば、家出という形になるのだろう。

 その全ての事柄に取り合っていたら、どれだけ警察の人がいたって足りない。優先度の高い事柄に取り組み、町の治安を守る為にあの人達だって毎日必死に働いてくれてる。


 分かってる。そんなことは僕だって分かってる。


 でも、海月は大切な人なんだ。

 僕たちにとっても、僕にとっても、かけがえのない大切な仲間なんだ。


 言いようのないもどかしさが吐き出された溜息と共に夕暮れの空に溶けていった。

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