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第四話

「響!一杯何があったんだ?」


 駅のベンチに腰を下ろしていた僕の元へと駆け寄るようにして来た二人に、海月の家で見聞きした話を全て伝えた。その後、写真で撮らせてもらった海月の手紙をみせた。


 二人共、海月のお母さんや僕と同じように『9月3日、膵臓癌のステージ4だと宣告されます。』という文に違和感は感じていたが、恐らくそれは姿を消す理由にする為だろうという結論にすぐに至った。それよりも、海月の別れを告げるような言葉が心をずたずたに引き裂いたからだ。


「嘘?なんで……だって一昨日はあんなに楽しそうにしてたじゃない」


 静香は手紙を読み終えたあと、両の目に溜めた涙をはらはらと溢し、しゃがみ込んでしまった。拓馬も衝撃が大きかったようで酸素を求める魚のように大きく息を吸い込み空を仰いだ。僕自身も二人を待っている間に駅前のベンチに腰を降ろし、何度もその手紙を読み返していた。海月のお母さんと向き合っている時は、どうして海月の気持ちを分かってあげないんだ、あなたのせいだ、と感情的になってしまっていたが、読み返している内に僕はあの日のことを思い出した。ホームから飛び降りようとしていた海月の姿を。今は、そうしようとした理由なんかどうでもいい。あの手紙の真意はどうあれ、もし思い悩み、親に別れを告げようとしていた気持ちは本心なのだとしたら。ホームから飛び降りようとしたその決意を、それまでの想いを、ずっと抱え込み、胸の中にあるそれらの黒い靄のようなものを掻き消すことが出来ないままに、この夏の間僕たちと過ごしていたのだとしたら。その考えに行き着いてからは自分が許せなくなった。


「僕も自分が自分で情けないよ。海月がここまで思い詰めていたのに、傍にいて全く気付けなかった。とにかく海月を見つけよう! このままじゃ海月は本当に」


 二人に視線を配りながらそう言ったが、それ以上は言葉に出すことが出来なかった。四人で過ごすようになってからの海月は僕たちを照らすかのように明るかった。だから、忘れてしまっていたのだ。いや、考えないようにしていたのかもしれない。僕たちが出会ったあの日、僕がホームで救った日、海月は死のうとしていたことを。


「見つけようって言ったってどこを探せばいいんだよ。心当たりはあるのか?」


 未だに泣き続ける静香の背中を擦りながら、拓馬が言った。


「あぁ、でもまずは警察に行こうと思うんだ。僕たちだけじゃなく、大人の力も借りよう」


 心当たりは何か所かある。

 短い期間だが、ずっと一緒にいた。

 同じ時間を共有していたからこそ分かることがきっとあるはずだ。


 僕は自分に言い聞かせるように、心の中で何度もそう呟いた。

 

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