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第三話

 肌を突き刺すような陽の光が、外に出た途端に僕の身体から汗を滲み出させる。手のひらで額に滲んだ汗を拭い、陽炎のように揺らめく道の先へと僕は足を踏み出した。


 ポケットから携帯を取り出し、指を滑らせる。耳に押し当てるとコール音が鼓膜に触れる。呼び出している相手は拓馬だ。


 家を出てすぐに何度も海月の携帯は鳴らしたが応答はない。大方予想はしていたが、実際にそうなってみると虚しさと海月への心配で胸の中が一杯になり吐き気すらおぼえた。


 この待っている間すらも煩わしく感じる。早く出ろ拓馬。早く出てくれ。はやる気持ちをもう抑えきれかった。


 八コール目に達した時。

「おう、どうした?」

 気の抜けたような拓馬の声がやっと鼓膜に触れた。


「今日はバイトだったな?」

「そうだけど。」

「静香も一緒か?」

「一緒だけど、どうした?お前なんか変だぞ。」


 拓馬がそう言うのも無理はない。僕は今平常心を保つ為に全ての意識を注いでいた。そうでなければおかしくなってしまいそうだったからだ。


 けたたましく鳴く蝉の声。アスファルトからの照り返し。天然のサウナのような籠もった熱気。

 自分の周りを取り囲む全てのものが邪魔に思えた。


「海月が消…」


 最後まで言い終えようとしていたその時、民家沿いを歩いていた僕の傍を車が風のように駆け抜けていった。鏡面加工された黒い車体が陽の光を強烈に反射し、僕は思わず目を瞑ってしまう。その拍子に汗ばんだ耳元から手をするりと抜けて携帯を地面に落としてしまった。


 音を立てて虚しく地面に横たわる携帯をみつめ、僕はゆっくりと腰を下ろした。


「畜生!畜生!」


 心の中が次第に黒い感情で埋めつくされていくのが自分でもよく分かる。


 僕は一体どうしたらいいんだ。

 海月、君は今どこにいるんだ?


「響、おい響!」


 熱されたアスファルトの上で焼かれるように地に横たわる携帯から、拓馬の声が聞こえる。画面には小さなヒビが入っていたが、幸い壊れてはいないみたいだ。


 僕は小刻みに震える手で携帯を手にした。


「海月が…海月が消えた…んだ。拓馬お願いだ。力を貸してくれ…。」

「海月が消えた?それ一体どういうことだよ?とりあえず今すぐバイト切り上げて静香と向かうからお前の今いる場所を教えてくれ! 」 


 涙ながらに自分の居場所を伝えたが、道沿いで集まるのは難しいという結論に達し、僕の自宅の最寄り駅で待ちあわせをすることにした。



電話を終えた後、画面にはヒビが入り熱を持った携帯を力強く握りしめ駅へと向かった。

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