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くらげの足跡は瑠璃色の空へと続く。  作者: 深海かや
第三章 夜空に咲く花、赤く乱れて、青く散って。。
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第十四話

 駅から海辺の方へと歩いていくと、ぽつぽつと屋台が増えてきた。夏の淡く甘い風に乗って、香ばしさを孕んだ胃の動きを活発にさせるような匂いが鼻腔をくすぐる。


 会場に辿り着くと、幾つもの屋台がひしめきあい、そこに群がるかのように人が押し寄せていた。歩道の両端には赤提灯が提げられており、ほんわりと道沿いが赤く染まっている。


「すごい人だね。あっあそこにフランクフルトあるよ。あれ食べたい!」

 静香が歓喜のような声をあげて、拓馬に呼びかける。屋台へと足を進めた二人に置いていかれないようにと、海月の手を引いた。


 ひんやりとした冷たい体温が僕の指先から身体に伝わる。細くしっとりとした質感の手を離さないようにと、ぎゅっと手を固く結んだ。


 屋台に着く頃には、拓馬がお金を払い四本の竹串に刺さったフランクフルトをおじさんから受け取っていた。


 僕は急いで後ろポケットに手をいれ、海月と二人分のお金を払おうとした。


 すると、「あぁいいって。今日は特別な日だからお前は一円も出さなくていいんだよ。バイト代だって半月払いだから入ったし今日は俺に任せとけ!」と言って明るく放つ拓馬に僕は首を傾げる。


 特別な日?

 今日は何かの日だったっけ?と思いを起こしていると、後ろから次々と人が流れてくる。屋台の前で立ち止まっていると他の人の迷惑になるのは確かだった。


「何ぼぅっとしてんの?ほら、置いてかれちゃうよ。早くいこ!」


 下から覗きこむようにして僕の顔をみつめてきた海月をみて、心臓がとくんと跳ねた。


 とりあえず落ち着ける場所を探そうと、屋台の裏手にある土手を昇った。芝が群生しているその土手には、既に所狭しとブルーシートが敷かれており、空いてる場所を探すまでに十分程の時間を要した。


「ブルーシートってあるの?」


 賑やかな群衆の中でいつもより少しだけ声量をあげて拓馬に聞いた。


「当たり前!この中に入ってるから、ちょっと待ってて!」


 拓馬はそう呟くと、肩から提げていた黒い鞄を芝におろした。拓馬と駅前で待ち合わせをした時から大事そうに抱えており何を入れてるんだろうと思っていたが、ブルーシートを入れていたのかと小さな疑問が夜に溶けた。


「僕も手伝うよ」


 鞄からブルーシートを取り出そうとしていた拓馬にそう言うと、「あぁ、駄目。お前はいいから、海月と静香ちょっと手伝って!」と突き放すような言い方をされた。

 その反面、口元の両端を持ち上げており、今日の拓馬はよく分からないなと思った。


 ブルーシートは四人で座っても少しだけスペースが余る程の広さがあり、固い地面ではなく芝が敷かれているおかげで座り心地も良かった。

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