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くらげの足跡は瑠璃色の空へと続く。  作者: 深海かや
第一章 出会いの日。赤く、流れて。
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第十三話

 海月がおばあちゃんの家を飛び出した後、何とも重苦しい空気が満ちた家の中で心配で居ても立っても居られなかった僕は後を追うようにして家を出た。海月に追いつけたなら呼び止めようとも思っていたが、それは叶わなかった。本来なら来週から始まる夏休み中にでも仲直りしてしまえば何事もなかったかのように楽しめるだろうが、僕たちはまだ知り合ったばかりで細い糸を手繰り寄せたような関係だ。断ち切ってしまおうと思えばいとも簡単に出来るだろう。


 それを一番気にかけていた僕は、翌日海月と静香の仲を取り持つことに決めた。海月自身はあんな態度をとって本当に悪いことしたとひどく反省していたのだ。食堂の外で「ほんととに大丈夫かな。静香許してくれなかったらどうしよう」と今は不安気な面持ちだった。僕は何度も大丈夫だよと声をかけ中に足を進めた。食堂には既に拓馬と静香が待っている。


「昨日は本当にごめんなさい」と海月が頭を下げると、静香はへらっと笑って「もう忘れちゃった。何のこと?」とあっけらかんと返した。海月はほっと胸を撫で下ろしたのか柔らかい笑みを浮かべ、その姿をみていた拓馬が「まあ、めでたしめでたしだな」と言った後大きな声で笑った。


「あっそうだ。おばあちゃんにも謝らなきゃ」


 購買で買ってきたカレーパンを両手で掴み、口に運ぼうとしていた海月が唐突に口を開く。


「そうだね、私も謝らなきゃ。おはぎもご馳走になったのに家の空気悪くしちゃったし」

「……ほんと最悪だ。今日みんなでいこ?」


 頭を抱えてたまま机に顔を埋めた海月が上目遣いで僕たちを見回す。


「あーごめん、今日は俺パス!」


 左右の手のひらをぴったりと合わすと同時に頭を垂れた拓馬に二人の視線が集まる。


「なんで?何か予定でもあるのか?」


 僕は隣に座る拓馬にちらりと視線をやって、パックのカフェオレを口にする。


「今日バイトの面接なんだよ、ごめんな。海の家のバイトでさ、夏休みにぴったりだろ?真っ白な砂浜に青い海、水着のお姉さん達に囲まれて最高じゃん!」


 天を仰ぎ冷めやらぬ熱を演説するかのような口調で話す拓馬に、一瞬だけ全員が口を閉ざした。


「バイトするのはいいけど、動機が不純なのよ!」

「痛っ」


 静香の放った口拭き用の紙を丸めた玉が拓馬の頭に直撃した。 


 静香の言うとおり確かに動機は不純だが、なんだか拓馬らしいなと思った。中学の時から思い立ったらすぐ行動する性格の拓馬はいつも僕の前を歩いてる。太陽のように明るく照らされた道を僕は後から追いかけてきたのだ。


「いいじゃん、海の家!拓馬が受かったら皆で行こうよ!」


 話し声や笑い声、食器の重なる音など喧騒に包まれるこの空間に僕は明るい声を放つと、皆の顔から笑顔が溢れた。

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