眠る
三題噺もどき―はっぴゃくにじゅうなな。
目の前で煌々と、スマホの画面が光っている。
寒くて頭までかぶった布団の中は、足先以外は温かくなってきた。
末端冷え性のせいか、足先だけはいつまでたっても冷えたままだ。
「……」
電気の消えたくらい部屋の中で、スマホをいじっている。
外は、美しい夜空が広がっている頃だろう。
家の中は、しんと、静まり返っている。
「……」
母は、だいぶ早い時間に眠りについた。
夜の10時を過ぎたあたりから、大抵眠い眠いと言いだす。
じゃぁ寝ればとしか言いようがないが、まぁ、家事やらなにやらやることがあるらしいので、言わない。出来る事があればするが、私も妹たちも夕食を終えれば、スマホをいじるか自室にさっさと戻るので……まぁ、申し訳ないとは思うが、下手に手を出してやり直しとかされても嫌だし。ただの言い訳だが。
「……」
妹たちは、どうせまだ私と同じような状態だろう。
それとも寝落ちしただろうか……隣の部屋から幽かに声は聞こえてくるが、起きているのか否か。寝落ちしたうえで動画を流しっぱなしなら、たたき起こすが。
うるさい状態では私は寝れない。わずかでも話し声が聞こえると気になって仕方ない。
「……」
まぁ、まだ私も寝るつもりはないし、時間もそこまで遅いわけではないので、一旦は放置で良いだろう。
さすがに、深夜1時とかになったら考える。まだ11時半くらいだろう。
「……」
と、思ってスマホに表示されている時計を見ると。
もうとうに、2時を回っていた。
……眠気も通り越して、スマホをいじり続けた結果がこれだ。
明日、と言うか今日もいつも通り学校があるのに。
「……」
寝るつもりはなかったが、寝なくてはいけなくなった。
さすがに睡眠不足状態で学校に行くのは……大抵毎日の事だが、最近続きすぎている気がする。昨日も、なんだかんだと2時くらいに寝たはずだ。時間を記録しているわけでもないので分からないが。
「……」
まぁ、一旦は、スマホを置いて、目の前の明かりを消す。
それですぐ眠りにつけるかと言えば、そういうわけではないので。
眼を閉じ、横向きになっていた体を、仰向け状態にする。
「……」
隣から聞こえていた声も、消えていた。気のせいだったのか、本人が気づいたのか。まぁ、起こしに行く手間がなくなってよかったという事で。
さっさと眠らなければ。
「……」
「……」
「……」
しかし、そう思う程に、眠れなくなるのは、人間の面倒なところだと思う。
どうして、こういう時に限って、不安に襲われたり、ネガティブ思考に走ったりするのだろう。何も考えられずに、意識を失うくらいに寝落ちできた方がいいのに。
「……」
頭の中をぐるぐる回る不安に、一旦区切りをつけてみようと。
眼を開く。広がるのは、真っ暗な天井で、灯り一つない。もう少し幼い頃が豆電球がないと眠れなかったのに、いつの間にか真っ暗じゃないと眠れなくなっていた。
「……」
もう一度、眼を閉じ、眠りにつく準備をする。
意識的に、思考の渦をとめて、今日……昨日のことを思い出す。
あの子と、話したこととか、あの子に、貰ったお菓子の事とか、あの子に、お菓子をあげたときの事とか。
「……」
中学の時の事とか、あの子を余計なことに巻き込んでしまった事とか、あの子に不愉快に思われてしまったかもしれない事とか、あの子が告白を受けている所を見てしまった時のこととか。
「……」
パチ―と目を開く。
眠れそうにもない。
枕元に伏せて置いたスマホを見れば、もう30分程経っていた。
「……」
もういっそのこと、眠らずにいようかと思った。
このまま、思考がぐるぐると回るだけなら、何も考えずにスマホをいじっていた方がいいような気がしてきた。
「……」
もういいか。
お題:不安・夜空・ネガティブ




