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シモキタ・ディープ・ブルー  作者: 双鶴


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9/12

8話

哲也視点



元カノが店に来て以来、3人の様子が少し変わった。笑顔はあるのに、どこかぎこちない。私に話しかける声も、ほんの少し遠慮がちだ。薄々、彼女たちの好意には気づいていた。だからこそ、余計に距離を置かれているように感じて、胸の奥に重さが残っていた。


この空気を変えたいと思った。気分転換も兼ねて、私は珍しく自分から口を開いた。


「ネット販売を始めようと思う」


3人が驚いた顔をした。私が提案をするのは滅多にないことだからだ。


「サイト作りは俺がやる。服のコーディネートは佳奈子。モデルは美雨と智美。撮影は店内と下北堂でやろう」


役割を一つひとつ説明すると、3人の顔に少しずつ明るさが戻っていった。


「え、私がコーディネート?楽しそう!」

佳奈子が声を弾ませる。

「モデルなんて初めて…でも面白いかも」

美雨が少し照れながら頷く。

「じゃあ私も一緒にやる!笑っちゃうかもしれないけど」

智美が笑った。


準備の日、店内はいつもと違う賑わいに包まれた。佳奈子は「この組み合わせ絶対かわいい!」と服を並べ、色や柄を次々に試す。美雨は落ち着いた表情でポーズを取り、智美は「ちょっと恥ずかしい!」と笑いながらも自然な笑顔を見せる。


私はカメラを構え、シャッターを切った。レンズ越しに3人の表情が柔らかく、楽しげに変わっていくのが分かる。失敗ショットにみんなで笑い、ポーズを工夫しながら撮影は進んだ。


「ねえ、背景にレコード置いたら雰囲気出るんじゃない?」

佳奈子が提案する。

「じゃあ下北堂では湯豆腐の鍋を映そうよ。温かい感じになる」

智美が笑う。

「服と食卓って、意外と合うね」

美雨が静かに言った。


下北堂の店先で撮影した写真には、湯気の立つ鍋や笑い声が映り込んでいた。ディープブルーの店内では、服とレコードが背景になり、3人の姿が柔らかく浮かび上がった。


私は黙ってシャッターを切り続けた。けれど心の中では、少しずつ重さが消えていくのを感じていた。元カノとの再会で揺れた気持ちが、3人の笑顔に包まれて薄れていく。


撮影が終わる頃、3人はすっかり明るさを取り戻していた。私もまた、沈黙の中で微笑んでいた。


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