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幽霊草~ホラーではない

超お久しぶりです( *・ω・)ノ

 数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

リハビリ作です☆○(゜ο゜)o



 深い深い夜中の森。深山(みやま)の山中。


 「深山幽谷」なる言葉があるが、所謂(いわゆる)「幽谷」からは本の()()だけ離れている。

 いや、谷底の圏内に入っているのかもしれない。

 実際そうなのだろう。

 森の中とはただでさえ湿り気のある場所だが、少しばかりそれが強い。

 秋の入り口にあたる時期もあってか、ひんやりしつつも空気は軽いが。


 歩いて歩いて、ぽっかり明かりの射す地点に着いた。

 スッと伸びる双子の白い茎。てっぺんはキノコの傘に似ているが、遠距離ゆえの視覚かもしれない。満月とはいえ森の木漏れ日。いや月の光。昼中のようには見えない。


 通年で全身にかけている防御結界から派生分裂させるように結界を増やす。静かに、ゆっくり、慎重に、白い幽霊もどきに近付いて行く。踏みしめる苔からジュワリと水が吐き出されているのが、見えていないのに見ているように分かる。


 一歩、一歩、また一歩。のんびり一歩を(おもむ)ろなる一歩を繰り返し、たどり着く。


 幽霊草。

 おそらく間違いはない。

 別名、妖精の想い。


 想像していたより背が高い。私と同じくらい。目の高さに傘ならぬ花がある。

 そう、花。

 やはり近付いて認識が変わった。キノコの傘のようにぷっくりした丸い花。ただし下を向いて咲く花と、普通に上向きの花と。


 頭の中に記録を落とす。

 映像、匂い、触覚。

 後は日付と現在のおおよその時間。夜中、おおよそ丑三つ時、満月、と。


 光、降る、ふる。

 真冬の完全に凍り付く前の滝の水が月光に化けて降るふる。

 秋の入り口に、真冬の光が降りてくる。


 私は幽霊草にお伺いを立てる。

 研究の為、観察の為、あなた方の片方を採取したいと。宜しいですか、と。


 さわさわ、サワサワ。


 耳では捉えられない話し声が聞こえた気がした。

 そして

 下向きに咲く幽霊草が根元から音も無く折れた。私へと。


 私は自身の結界を強めてから、彼の存在を手にする。

 触れる直前に彼の存在を結界に包んで。


 果たしてそれは正解であった。

 おそらく大正解だと判断したい。


 手に触れる直前で──結界を張っていなければ確実に触れていたであろう頃合いで、彼の存在が胞子を放った。

 いや、一応は花粉なのか?

 とにかく彼の存在から放たれた粉は、私に纏わり付こうとして結界に阻まれている。


 それに合わせて(?)残りの一本がふわふわ揺れ出した。

 うねうねネッチョリ、全体から粘液のような何かを分泌し始めた。特に花の部分が酷い……。


 私は残りの一本が揺れ出した時点で周囲の花粉(?)を粗方採取していたので、視界は良好だ。満月の明かりは馬鹿にならない。


 残りの一本が大きく揺れて、私へと花が傾いて


──クワリ!


 大きく口を開いた。

 いや、口という表現は譬喩になる。が、花が大きく開いて私へ向かって来たのだから、もう口という表現でも良いだろう。

 採取し切れなかった胞子(?)花粉(?)が残された一本へ付着していく。


 うねうね、ボコボコ、変容を始め……どうやら失敗したようだ。

 いつの間にか空が縹色に変わり始めた頃合いで、残り一本は枯れた。


 私はこの体験で一つの可能性に思い当たる。






 翌日から私は同じ時刻、同じ座標に通い通した。


 そして新月、今度は一本だけ白い茎がスッと伸びていた。


 自ら仄かに発光しているのかいないのか、暗闇の中に一本だけ浮かび上がるキノコ。


 たぶんキノコ。

 前回のように細い茎で背が高い。ただし先端の傘にあたる部分は丸い。綺麗な球体だ。

 ………花、じゃないよな?


──リン リン リン リン シャラン♪


 微風(そよかぜ)で揺れると鈴を彷彿とさせる音が鳴る。


 私はまた頭の中に記録を録る。


 たぶん、今眼前にあるのが本当の“妖精の想い”。


 ならば前回の二本は何だったのか?

 もどき。

 ある意味では正しく幽霊草。


 幽霊草はおそらく哺乳類に寄生して子孫を繋ぐ。

 二本で一対。

 一方が花粉なのか胞子なのかを獲物に纏わせ動きを奪う。

 残り一本が獲物を喰らい(?)苗床にする。


 私が獲物になっていたら……考えたくないが、来年も同じ場所か私の研究所でヤツが、幽霊草が生えて来たのだろう。


 では眼前のこの一本、真正の“妖精の想い”だろうコイツは何か?


 コイツはコイツで寄生しているのだと思う。


 何に?


 幽霊草に。


 ふと銀竜草を思い出した。

 確か銀竜草もキノコと共生している変わった植物だ。

 菌床から栄養をもらっているんだったか?


 それはそれとして、採取したいが今回は我慢だ。

 もしかしたら、来年もこの場所に妖精の想いが生えてきてくれるかもしれないから。

 もしかしたら、増えてくれるかもしれないから……。







 歳月は巡り、十年以上も大切に観測していたら“妖精の想い”群生地帯が形成された。

 もどきの“幽霊草”も、そこそこ繁茂している場所に。









分野、何にしようか悩みました。

童話にできる感じじゃないし、ホラーには怪談要素が圧倒的にたりない。

ファンタジーにできるほど、あんまり夢も無い……。


 それはさておき、本来なら続き物で落ちを着けたい作品です。

が、題名にもある通り、序章で終わりです。人( ̄ω ̄;)


 題名を変更してので、上記はおまけ程度に読んでくださいm(_ _)m


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