ep.9 赤い空の教室
赤い空の教室で目覚めた主人公。
名簿には、自分の名前と不気味なメッセージ。
“こっちの住人”と告げる佐伯から逃げるため、ハルカと共に廊下を駆けるが、チャイムが響いた瞬間、出口はすべて閉ざされ――。
耳鳴りが止まない。
ゆっくり立ち上がると、さっきまでいたはずのハルカも佐伯も見当たらなかった。
ただ、薄暗い教室に自分一人。
窓の外は、夕焼けとも朝焼けともつかない赤い空。
太陽は見えないのに、空全体が血のように染まっている。
机の上の名簿をめくる。
そこには見覚えのない名前が並び、その中に俺の名前もあった。
ただし、欄外には小さな赤字でこう書かれていた。
《次は、君だ》
***
教室のドアを開けると、長い廊下が続いていた。
しかし、数歩進むたびに廊下の景色が少しずつ変わっていく。
窓の外の木々が枯れ、天井の蛍光灯が減り、やがて壁にヒビが入る。
角を曲がった瞬間――立っていたのは、笑顔の佐伯だった。
「ここは、君のいる場所じゃないよ」
その声は、どこか別の誰かが喋っているように響く。
「でも、君はもう“こっち”の住人だ」
佐伯の足元から白い線が伸び、俺の足首を締めつけた。
***
突然、腕を強く引かれる感覚。
振り向くと、ハルカがいた。
「早く! こっちはまだ完全に捕まってない!」
彼女に引かれ、俺は廊下を駆け抜ける。
遠くで、チャイムが鳴った。
それは下校時間の音ではなく――閉じ込めの合図のように響いた。