ep.7 白い線の向こう
通学路で見つけた、不自然に揺らぐ白い線。
それは夢と現実を繋ぐ“境界”だった。
「絶対に踏み越えちゃだめ」と警告するハルカ。
しかし夜、白い線は静かに俺の家へ向かってくる――。
朝、通学路の途中。
ふと足元を見ると、横断歩道の白線のひとつが、妙に眩しく見えた。
他の線と違い、表面がわずかに揺らいでいる。
「……また夢の、あれ……?」
触れようとした瞬間、視界が一瞬だけ暗くなった。
気がつくと、白線はただの舗装に戻っている。
通学途中の人たちは、何事もなかったかのように歩き続けていた。
***
放課後、ハルカにこのことを話すと、彼女は黙り込んだまま鞄を握りしめる。
「……それ、夢の中で見たのと同じ?」
「たぶん。……いや、同じだ」
ハルカは周囲を見回し、小声で言う。
「見つけたなら、絶対に踏み越えちゃだめ。
そこから先は、こっちじゃないから」
「こっちじゃない……?」
質問しようとした瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。
クラスメイトの佐伯が顔を出し、無邪気に笑う。
「おーい、二人とも帰るぞ!」
だが、ドアの向こうの廊下には、影がひとつもなかった。
***
夜、自室の窓から外を見下ろすと、アスファルトに長い白い線が浮かんでいた。
それは街灯の光でも、道路のペイントでもない。
ゆらめく線は、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
その瞬間、スマホが震えた。
画面にはたった一言だけ。
《見つかった》。