表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転校生は俺だけを覚えていた。  作者: RISE
揺らぐ日常
6/12

ep.6 見えない境界線

消えた警告メッセージ。

屋上から見えた、グラウンドの黒い影。

放課後、夕暮れの街角で再びそれを目撃する。

だが、それは影だけの存在ではなかった。


夢の中、少女は白い線を指差し言う。

――「ここから先は、戻れなくなる」。

次の日の朝、スマホの履歴を確認した。

昨夜届いた警告メッセージは、跡形もなく消えていた。

送信元の番号も、履歴からごっそり抜け落ちている。

「……夢、だったのか?」


そう呟いても、胸の奥のざわめきは消えない。


 


***


 


昼休み、ハルカは俺を屋上へ呼び出した。

彼女は風に髪を揺らしながら、じっと俺を見つめる。


「昨日のこと、覚えてる?」

「ああ。……旧校舎で、足音と……声」


「じゃあ、その声は何て言ってた?」


「……思い出すな、って」


一瞬、彼女の瞳がわずかに細くなる。

だが、すぐに笑みを作った。


「それなら、まだ間に合うかもしれないね」


「間に合うって、何に……?」


ハルカは答えず、屋上のフェンス越しに校庭を見下ろした。

その視線の先、見慣れたグラウンドに、見慣れない“黒い影”が立っていた。


 


***


 


放課後。

俺は一人で帰る途中、影のような存在をまた見つけた。

夕暮れの交差点で、信号待ちをする人混みの中に、まったく動かず立つ黒い輪郭。


目を逸らした瞬間、それは消えていた。


(……見間違いじゃない)


そう確信しかけた時、背後から肩を叩かれる。

振り向くと、そこにいたのはクラスメイトの佐伯だった。


「おーい、聞こえてるか?」


「ああ……悪い、ぼーっとしてた」


佐伯は笑いながら去っていく。

だが、彼の影が地面に映っていなかったことに、その時はまだ気づいていなかった。


 


***


 


夜、夢の中で、またあの少女が現れる。

今度は泣きそうな顔でこう言った。


――「ここから先は、戻れなくなるよ」


俺は思わず聞き返す。

「ここって、どこだ?」


少女は答えない。

ただ、俺の足元に引かれた一本の白い線を指差していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ