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転校生は俺だけを覚えていた。  作者: RISE
揺らぐ日常
5/12

ep.5 二年前の記録

旧校舎の資料室で見つけた二年前の文化祭写真。

そこには、転校してきたばかりのはずのハルカが写っていた。

「君は覚えてないだけ」――そう告げた直後、俺だけに聞こえる足音と声が迫る。

そして、ポケットのスマホに届いた一通の警告。


《それ以上は危ない》。


翌週の月曜日。

放課後、俺はハルカに呼び出された。

場所は旧校舎――すでに使われなくなった、薄暗い廊下の奥だ。

「……ここ、入って大丈夫なのか?」

「鍵は開いてたよ。たぶん、誰も見てないから平気」


そういう問題じゃない気がするが、ハルカは気にした様子もなく先へ進む。


 


***


 


旧校舎の空気は、湿った紙の匂いがした。

窓ガラスは曇り、床板はわずかに軋む。

俺は何度も周囲を見回しながら、彼女の後ろをついていった。


「ここなら、残ってるかもしれない」


辿り着いたのは、小さな資料室だった。

錆びたスチール棚に、ホコリをかぶった箱がいくつも並んでいる。

ハルカはその一つを開け、中から古びた冊子を取り出した。


「……あった」


声が少し震えていた。


俺は覗き込む。

そこには、二年前の文化祭の写真と記事が載っていた。

笑顔で並ぶ生徒たちの中に――ハルカによく似た少女が写っている。


「……これ、お前……?」


「そうだよ」


「でも、お前……転校してきたばかりじゃ――」


「だから言ったでしょ。君は覚えてないだけだって」


彼女は冊子を抱きしめるように持ち、視線を落とした。


 


***


 


その時、廊下の奥から音がした。

足音。

誰かが、ゆっくりと近づいてくる。


「……誰か来た?」


俺が小声で言うと、ハルカは首を振った。


「この足音、君にしか聞こえないはず」


「は……?」


言い終える前に、視界が揺らいだ。

まるで旧校舎全体が一瞬で暗闇に飲み込まれたように。


そして、闇の中で声が響く。


――ユウト、思い出すな。


 


***


 


気づくと、俺は旧校舎の外に立っていた。

手には、何も持っていない。

ハルカも隣にいなかった。


ポケットの中でスマホが震える。

画面には、一件の未登録番号からのメッセージ。


《それ以上は危ない》

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