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異世界転生 俺は風になりたい【chatGPT利用】

作者: 夕暮れの家

俺の人生は、風で始まり、風で終わった。


37歳。晩年を迎えるにはあまりに若い。だが、俺の体は病に蝕まれ、気づけば病室という名の箱に閉じ込められていた。


白い天井。消毒液の匂い。点滴の音。

唯一、心を慰めてくれたのは窓からそっと吹き込む風だった。


──自由だな、風ってやつは。


何度そう呟いたか分からない。

そしてある日、静かに、眠るように死んだ。


「ようこそ、異世界へ」


気がつけば、俺の目の前には女神がいた。絵本の中から飛び出したような、神秘的な女性だった。


「ひとつだけ願いを叶えてあげましょう。あなたが来世で何を望むのか──」


俺は迷わず答えた。


「……風になりたい」


女神は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んだ。


「面白い。いいでしょう。風として、あなたの第二の人生を始めましょう」


次の瞬間、俺は風になっていた。


青空を駆け、森を抜け、海を渡る。

体はなく、足もない。でも俺は自由だった。


ヒャッホー! 風だぜー!


初めての解放感に浮かれ、気がつけば世界一周旅行に出ていた。

この異世界は、地球でいうところの中世ヨーロッパのようだった。小国がひしめき合い、戦と混乱が絶えない。


そんなある日、ふと通りがかった戦場跡で、俺は運命の出会いを果たす。


風に舞う血と土の匂い。散乱する武具と焼け焦げた旗。

誰もいないはずのそこに、一人の少女がいた。


ボロボロの鎧を無造作に剥ぎ取り、大人顔負けの怪力で剣を束にして抱えている。

だが、俺の目を奪ったのは、そんな荒々しさではなかった。


その瞳だった。

深い緑。まるで命の底を覗くような──どこか哀しげで、それでいて鋭い眼差し。


鈍く銀色に輝く髪が、血と泥にまみれてもなお異質な美しさを放っていた。


思わず、彼女のあとを追った。


すぐに彼女は二人の少年と合流した。

これは後に知るのだが、彼らは戦場孤児だった。少女はラミア。弟分の一人はシュン。もう一人はドーン。


三人は大人顔負けの力強さで武器や防具を持っていた。


戦場からの帰り道、彼女たちは柄の悪い大人二人組に絡まれた。


「子供のくせに、ずいぶん良いもん持ってんじゃねえか」


唸るような声に、剣を構えるラミアたち。だが、相手は大人。体格も腕力も違う。

あっという間にシュンとドーンは倒され、ラミアも蹴り飛ばされた。


──度し難い。


俺は風を纏い、一陣の突風となって男たちを吹き飛ばした。


「……なんだ、今の」


ラミアは呆然と空を見上げたが、すぐに倒れた仲間の元へ駆け寄り、抱えきれないほどの戦利品を拾い集めてその場を離れた。


俺の存在には気づかない。だが、風は確かに、彼女のそばにあった。



3人は戦場跡を巡って、武器や防具を拾い、町の武器屋に売って暮らしていた。


この辺りは、国同士の小競り合いが絶えない場所だった。

領土を巡る争い、貴族の私兵の暴走、商人ギルドと街の守備隊の対立――どんな小さな衝突でも、必ず血が流れ、剣と盾と骸が残された。


ラミアたちは、戦場のあとを巡って、落ちていた武器や防具を回収しては、それを武器屋に売って糧を得ていた。

ある意味で、戦場を生きる者たちの“掃除屋”だ。



──俺は旅をやめた。

彼女たちが、気になった。


弟分の一人、シュンは非常に優しい少年だった。

だが、誰よりも仲間思いで細かなことにも良く気づいた。

ドーンはおっとりとした性格で、言葉よりも行動で示すタイプ。

見た目はぼんやりしているのに、時折驚く行動力を見せた。

ラミアは姉御気質で二人をいつも支えていた。


三人は、崩れかけた石造りの家に暮らしていた。

壁に穴が空き、夜風が吹き込むそのボロ屋で、彼らは夜な夜な拾ってきた剣を振り続けた。

何の指導者もいない。見よう見まねだ。

それでも、自分たちの身は自分で守るしかなかった。


風となった俺は、誰にも触れられず、語ることもできない。

それでも、ラミアたちが汗を流して鍛錬に励むとき、そっと頬を撫でた。


ラミアたちは戦場後で武器防具を回収するために戦場にいち早く駆け付けた。

そして、息をひそめ戦いが終わるのを待つ。

時折、ラミアたちの方へ敵が来そうになるから敵の気配に気づけるよう、草の音を強くした。


飢えから毒のある食べ物を食べようとしたときは、腐った果実にだけ風を吹きかけた。


ラミアたちは、時々絡まれていた。


「おい、そこのガキ。そいつは俺の剣だぞ。返せよ」


「へっ、女のくせに金なんか持ってんじゃねえよ」


襤褸ぼろを着た大人たちが、戦場帰りの彼らに襲いかかる。

ある時は、この辺り一帯を絞める山賊。

またある時は、奴隷商人の手先。


まだ幼いラミアたちでは、大人の剣士には歯が立たない。

鍛えたとはいえ、限界がある。


「っ、シュン、下がれ!」


「ドーン、矢を引け!」


ラミアの声は、震えてなどいなかった。

だが、その小さな身体が壁際に追い詰められたとき、俺はため息を吐いた。


度し難い。この世界には屑が多い。


風が吹いた。


突風が砂を巻き上げ、追い詰めていた男の目を覆った。

ドーンの矢が、その一瞬の隙をついて肩を貫く。

ラミアの剣が、迷いなく足元を払った。

男は倒れ、逃げた。


俺はそっと手助けするようになっていた。


ラミアは風の吹く方角を見つめて、小さく呟いた。


「ありがとう、風」


それを聞いた仲間のシュンが冗談めかして言った。


「また風の妖精が助けてくれたの?」


「そうだな、きっと私たちを守ってくれているんだ」


そう言ってラミアは笑った。

その笑顔は、血と泥で曇った世界の中で、たった一筋の光のようだった。


「風の妖精か……ただのおっさんだけどな、俺は」


ラミアの仲間たちは、風の妖精がいるのだと信じていた。

それが子供の空想でも、俺にはたまらなく嬉しかった。


この生活が、俺には嫌じゃなかった。

世界一周の夢よりも、ラミアたちが生き延びることのほうが、ずっと大事になってしまった。


俺は風。

吹きすぎるだけの存在だけど――

せめてこの子たちが笑っていられるように、今日もそっと吹いてやる。



ラミアたちが十二になった。

少し前までひょろりとした小枝のようだった体は、剣を振るうたびに筋肉を得て、しっかりとした輪郭を帯びていた。

剣の重さにも、鎧の締め付けにも、もう眉一つ動かさない。


あの頃とは違う。

もはや街のゴロツキどころか、訓練を積んだ剣士ですら彼女たちの敵ではなくなっていた。


俺は──風の俺は、ちょっと暇になってしまった。

戦いで吹く風の出番がないほどに、彼女たちは強くなっていたのだ。


ある日、三人は傭兵ギルドに足を運んだ。

十二歳から登録が可能という制度を聞きつけてのことだった。

そして彼らは、自分たちだけの傭兵団を立ち上げた。


名前は「ウィーリア」。

……風の妖精の名らしい。


思わず吹いた。

いや、笑ったというべきか。俺が笑えば、たぶん草花も揺れたと思う。


ラミアたちは、ウィーリアの名のもとに次々と戦場に呼ばれるようになった。

小規模な内乱の火消し、盗賊団の討伐、貴族間の小競り合いの中の最前線。

なぜ子供が──という声も、彼女たちの戦果の前ではやがて消えていった。


戦場での連携は完璧だった。

ラミアが先陣を切り、縦横無尽に駆ける。

それを支えるように、シュンが敵の剣を弾き、ドーンが矢で援護する。

三人は背を預け合い、幾多の修羅場を潜り抜けてきた。


だが──光が強くなればなるほど、影もまた濃くなる。


ある戦場で、ラミアたちは包囲された。

数は三十。

敵は彼女たちの名声に嫉妬し、罠を張っていた。

三人で背を合わせ、剣を振るう。

それでも、体力には限界がある。

傷が増え、シュンが、ドーンが膝をついた。


ラミアの剣も鈍り始める。

息が荒い。


見ていられなかった。


俺は空気を強く撫で、地面の砂を巻き上げ、風を一気に集中させた。

渦を巻く気流が爆ぜ、轟音が戦場を裂いた。


──吹き飛べ。


まるで風神の一振りのように、敵兵は宙を舞った。

盾も鎧も、吹き飛ばされた男たちも、すべてが彼女たちの周囲から消えた。


戦場に、静寂が戻った。


「風よ、ありがとう」


それはもう、決まり文句のように、ラミアが空に向かって呟く。


その日の戦いは王都でも噂となった。

ウィーリアの三人。風の加護を持つ少女。

それはやがて「風の聖女ラミア」という形で、民の口に上るようになった。


シュンとドーンが面白がって噂を広めたのも、拍車をかけた。

酒場で、街角で、旅人の口から、どこかで必ず誰かが言っていた。


「風が吹くと、ウィーリアが来るらしいぜ」

「まるで風の妖精だってさ」

「いや、あれはもう、神の使いだよ」


そして──彼女たちが十五になった年。


王国の騎士団から、正式な招集状が届いた。

真正面からの、名指しの召喚だった。


「ラミア殿、貴公ら三名を、王都レオフォードに招致いたしたく──」


風が手紙の端をそっと撫でる。

ラミアの手が、その上からそっと重なった。


──行くのか? もう、戦場の掃除屋じゃないんだな。


俺の旅も、また少し変わっていく。

だが、どこまでもこの風は吹くだろう。

彼女たちが、どんな道を選んでも。



招集状は王国騎士団への入団試験を受けることについてだった。


三人は相談し、王国騎士団の入団試験を受けることにした。


元々戦場で名を馳せる三人だ。


順調に試験は過ぎるかと思われたが、馬鹿な貴族の三男坊に絡まれた。


「ウィーリア? 聞いたことあると思ったら、噂の掃き溜め傭兵団か。名ばかりの“風の聖女”がどれほどのものか、見せてもらおうか?」


試験会場の一角、場違いに絢爛な刺繍を施したマントを翻し、一人の少年が声を張った。年の頃は彼らと同じ十五、だがその態度には傲慢さが滲んでいた。


貴族の三男、エリオット=フォルグラン。

この国で腐るほど見てきた、「名家の名を持つだけの雑魚」だった。


シュンとドーンは無視しようとした。

ラミアも、冷ややかに一瞥をくれただけで背を向けた。


だが──その背に、エリオットの剣が振り上げられる。


「おい貴様ッ、貴族に背を向けていいと思っているのかッ!」


刹那、風が吹いた。


エリオットの足元から突風が巻き上がり、バランスを崩した彼は尻餅をついた。


「……まただね」

シュンがこっそり笑った。

ドーンも、ぼんやりとした目で「うん、風だね」と呟いた。


ラミアは剣を抜かず、ただ凛とした声で言った。


「騎士団の試験場で剣を振りかざすことの意味くらい、貴族なら知っていると思っていたが?」


その静かな一言が、試験官たちの耳にも届いていた。


結果、エリオットは「暴挙をはたらいた不適格者」として一次試験不合格。

一方、ラミアたちウィーリアは、実戦訓練でも、体術でも、戦略試験でも文句のつけようのない成績を残し、最終試験まで駒を進めた。


最終試験は、騎士団長自らが見届ける形式だった。

小隊対抗模擬戦。審査対象は「連携・戦術・判断力・士気」。


相手は、王都の訓練所で育てられたエリート小隊だった。


「ようこそ、ウィーリア。……君たちの評判は、耳が痛くなるほど聞いているよ」

騎士団長ガンツの声は穏やかだったが、その目には試すような鋭さが宿っていた。


開始の合図とともに、模擬戦の陣地が揺れた。


ラミアは前線を駆ける。

シュンが左右の動きを制し、ドーンの矢が敵の進行を寸断する。


「三時方向、敵の副隊長が動いた!」

「了解、足止めする!」

「シュン、ラミアに合図!」


彼らは言葉少なく連携を交わす。

その背に、風が流れる。まるで彼らの動きを導くように。


風はただの気流ではなかった。

訓練所育ちのエリートたちにとって、彼らの動きは“違和感”そのものだった。


「なんだこの連携……攻撃のたびに間合いが読めねえ!」

「風が──風が邪魔してんのか……?」


最終局面。ラミアの剣が副隊長の胸元に寸止めを決める。


試合終了の合図。


騎士団長ガンツは、ゆっくりと立ち上がった。


「文句なしだ。ウィーリア三名──正式に、騎士団への配属を命じる」


シュンとドーンは飛び跳ねて喜び合った。

ラミアは、いつも通りに静かに笑い──


「三人でいられるのなら、どこでもいいさ」


そう言って、手を広げた空に、風が優しく吹いた。


この日、風は王都にも舞い降りた。


“風の聖女”はもう、伝説ではない。

名実ともに、王国を支える一柱として、物語は新たな章を迎えた。


──そして、俺もまた。

ただの風から、物語の一部になったのだ。



騎士団の仕事は王都と王族の守護だった。


ラミアたちは王都の見回り隊に配属され多くの賊を捉えた。


民衆からラミアは「銀色の風」と呼ばれ愛される存在になった。


ある日、前線が崩れたという報が王都に届いた。


隣国カッツリーナ帝国との小競り合いが続いていたのは、もはや過去の話。彼らは突如、全軍をもって侵攻を開始し、アスベルト王国の防衛線を蹴散らしながら王都へと迫ってきたのだった。


「王都まであと三日もかからぬだと……⁉」


王宮は混乱に包まれた。守備隊の再編成もままならぬ中、騎士団が立ち上がる。


ラミアもその一員だった。


「数は十倍以上……だが、王都は、民は、私たちが守るしかない」


彼女の声に、仲間たちは黙って頷いた。


そして――決戦の日が来た。


王都の南門前、見渡す限りの平原に、黒き軍旗が波打っていた。地鳴りのような足音。押し寄せる帝国の軍勢。比べて、アスベルトの守備軍はわずか三千。


「数がどうした」


ラミアは銀の髪を靡かせ銀の剣を手に前に出る。


敵軍の号令と共に戦端が開かれた。圧倒的な兵力差が襲いかかる。アスベルトの兵たちは懸命に抗ったが、徐々に押し返され始める。


矢が降り注ぎ、盾が砕け、剣が折れた。


「くっ……!」


ラミアも何度も切り込んでは傷ついた。鎧はひび割れ、血が流れる。


それでも、退くことはなかった。


ついに、敵の軍勢が城門まで迫る。


そのとき――ラミアは空を見上げ、静かに囁いた。


「風よ……私に力を」


その瞬間、空気が震えた。


一陣の風が、彼女の足元から巻き起こり、まるで応えるように強く、冷たく、そして鋭く吹き抜けた。


「――行けッ!」


彼女の叫びと同時に、風は咆哮を上げ、敵陣に突き進んだ。


騎馬隊が宙を舞い、兵士たちが地を離れ、重装の将軍すらもその場から吹き飛ばされた。


「な、なんだこれは……!」


「風が、暴れている……!」


風は暴風と化し、敵軍の隊列を次々と崩壊させていく。その中心には、銀色の光をまとう騎士――ラミアの姿があった。


「王都には、風の守りがある……!」


兵たちが口々に叫ぶ。


やがて、数では圧倒していたはずのカッツリーナ帝国軍は、その風の暴威に恐れをなし、ついに撤退を始めた。


「退け!全軍、退けぇぇぇっ!!」


ラミアは、風が収まった空の下で、静かに膝をついた。


「……ありがとう、風」


彼女の周囲には、もう敵の影はなかった。


こうして、王都は守られた。


――そしてこの日、アスベルト王国に生まれた新たな伝説は、こう語られる。


「銀色の風が吹いた日、絶望は一瞬で希望へと変わった」




アスベルト王国が風に守られたという噂は、瞬く間に諸国に広まった。


「銀色の風」が王都を救った日。

それは人知を超えた力がアスベルトに宿る証とされ、カッツリーナ帝国すら再侵攻をためらうほどの威圧となった。


王都に戻ったラミアは、民からの賛美の嵐に迎えられた。


「銀色の風よ、ありがとう!」

「ラミア様万歳!」


子どもたちが風に乗せた花びらを飛ばし、老婆が震える手で手編みのマントを差し出す。

彼女は、英雄になっていた。


その功を称え、王は彼女に直々の褒章を与えることを決定した。

王宮に呼ばれたラミアは、金の装飾が施された階段の上でひざまずき、王の言葉に耳を傾けた。


「騎士ラミア・セリス。汝の功績、この国永劫に記すべし」


そして、王は続けた。


「さらなる恩賞として、我が嫡子ランドリルとの婚姻を命ずる」


――その瞬間、空気が凍ったように感じた。


ラミアに、拒否権はなかった。


「……」


俺は、見ていられなかった。


戦争孤児から這い上がってきたラミアが、今また運命に縛られようとしている。

そんな筋書き、俺は認めたくなかった。


「……いけ好かない。吹き飛ばすか?」


そう思っていた。


だが、そのランドリル・アスベルトという男に、俺は興味を持った。

第一印象は、内政にしか興味のなさそうな、細っこい書庫の虫。


だが――剣を交えたとき、違った。


「まだ隙があるよ、ラミア騎士殿」


軽やかに間合いを詰めると、風を読むような剣筋で彼女の構えを崩してみせた。


ラミアの頬が、わずかに紅潮したのを俺は見逃さなかった。


それ以来、ラミアは彼と会うたび、明らかに浮かれていた。

無表情を装っていたが、浮かれポンチになっているのが周囲にもバレバレなほどだ。


俺は城中の噂を探りに回った。だが、どこをどう探してもランドリルには悪い噂一つ見つからなかった。


「まったく……これじゃあ文句も言えないな」


そして――


ラミアとランドリルの結婚式は、王都史上最大の規模で執り行われた。


王宮の大聖堂。鐘の音が鳴り響く中、白銀のドレスを纏ったラミアが、ランドリルの手を取って堂々と歩く。


その瞬間、俺は空を見上げた。


「門出は晴れに限るな」


上空を覆っていた重い雲を、力いっぱい吹き飛ばす。

空は一気に晴れ渡り、陽光が二人の未来を祝福するかのように降り注いだ。


民衆は歓声を上げ、王と王妃は涙を浮かべた。


――時は流れ。


「おぎゃー、おぎゃー」


二人に、子どもが生まれた。


ラミアは赤子を胸に抱きながら、風に向かって呟く。


「風よ、私のことはもういい。だから願わくば、この子に守護を」


……ふぅ。


「しょうがないな。もう少しここに居てやるよ」


俺は風に転生した。

だが、自由とは言いがたい。俺を引き止めるものがいくつもある。


家族、仲間、そして――この国の未来。


それでも、悪くない。


「……こんな転生も、ありだな」


風は今日も静かに、王都の空を吹き抜けていた。

お読みいただきありがとうございました。

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