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「…。」

「…。」

 

き、気まずい。


 


俺はちらりと正面を見る。


 


喫茶店の窓から差し込む暖かな日差しがいい感じに綺麗な顔を照らして目の前の少年を引き立たせていた。


 


少年のプレイヤーネームはレオナルドだと確認が済んでおり、少年の新緑の髪と赤褐色の瞳が自然を思わせる。


 


もちろん。暇だからレオナルドを観察しているわけでなく、会話の糸口を探していたためだ。




あの後、俺達は一緒にファーストへ帰還したが、街に着いたらハイ解散!とはならかった。



 

彼、レオナルドからイノシシ型の[Cain]から落ちたアイテムと謝礼金を貰ったのだ。なんでも助けてもらったお礼だとか。

 



レオナルドはアイテムと謝礼金を手渡すのには迷いがなく、まるで必要がないとばかりだったので俺は「少し話をしないか?」とお茶に誘ったのだ。


 


あんな出来事もあれば気落ちするも納得できるが…。



 

「突然、呼び止めてすまなかったな」



 

俺はそう言いながら店員から渡されたメニューを見る。



 

ふむふむ。




ここのおすすめは蜂蜜をふんだんに使ったアップルパイか。


 


「…いえ」


 


俺はメニュー表を見終わったので彼にパスする。レオナルドは長居するつもりがないのか店の商品を頼むのを躊躇していた。


 


「ここの支払いは私がしよう。今は君から受け取った謝礼金があるからな」




俺は敢えて分からないふりをしてKY発言をする。



 

渡されたお金をここで使うのかという目で見られたが、気にしない。




「注文するものは決まったか?」


俺はここでセイご自慢の女神の微笑みを作る。


 


「…はい」



 

だが、セイの美貌は落ち込んだ彼に効くことはなく、しぶしぶ俺に便乗して飲み物を店員に頼んでいた。こやつ、なかなかガードが堅いな。


 


こんな美人なお姉さんがいるんだから普通は心を開くものではないのか?俺の同級生は俺によくそう言っていたが…。

 



そのそろ本題の話でもしようか。



 

「呼び止めた話をする前に…すまなった」



 

俺は座りながら頭を下げた。


 


「パーティーを組んだ相手同士でもないのにも関わらずにタゲを勝手にとってしまった。これはゲーム界ではマナー違反と呼ばれる行為だ」


 


彼は初めて気づいたような顔をし、それから言葉を選ぶように話す。


 


「別に気にしてません。…それにもっとマナーのない人を見たことありますから」



 

俺に対して棘を出しているわけではないと分かっているが彼、怒っているなぁ。


 


「そのことなんだがその現場を偶然、見てしまってな」




「えっ」



 

彼は俺のこの発言に驚いたと言うより、急に俺には見えない何かが目の前に現れて驚いた様子だった。そのことには俺は触れず話し続ける。




「このゲームは悪意を持って人に攻撃することはPVPの場以外禁じられている。ゲーム内の治安を良くするためだと運営は力を入れているからな。先ほどの行為なんか通報すれば、直ぐにログの確認をするだろう」


 


俺の予想が正しければ今、彼の目の間に現れたのは運営からの謝罪文だと思われる。俺が通報したからタイミング的にそうだろう。



 

「何か運営から謝罪文でも届いたか?」


 


彼は俺の話を聞いた後、空中に何か文が書かれているのか目を動かす。




それから数秒後、突然狂ったように笑い出した。


 


おいおい急にどうしたんだ?


【なんか突然、笑い出して怖いんですけど~】と俺の中のギャルがボソッと出てきてしまう。


 



「は~」


彼は笑い疲れたのか笑うのをやめた。



 

「…すみんません。実は僕を押し倒したあいつ、運営の話によると他にも恐喝や詐欺まがいなことを過去にやらかしていて何回か罰則を食らっていたらしいんですよ」



 

にこやかな顔で言うことか?

 



「「今回の件で擁護できなくなったのでアカウント停止の処置をします」だとか」



 

ざまーないなと発言する姿に思ったより彼、いい性格しているなと思ってしまった。俺の心配は杞憂だったか?


 


笑えるほど回復したんだったら精神面はもう大丈夫そうだな。




もうこれ以上ないくらい、にっこにっこだ(❁´◡`❁)


 


「セイさんでしたっけ?…あらためて今回の件ありがとうございます」



 

お礼は言われていたが先ほどとは、まるで気持ちの入り方が違うな。



 

「…あぁ。特に何もしていないが」


「いえ!僕を庇ってくれたじゃないですか!!」


 


そう言って先ほどの俺に興味なかった姿とは、ガラッと変わってレオナルドは俺のことを褒めちぎっていく。


 


「僕を庇ってくれた後姿は~」



 

勘弁してくれ。


 


俺は顔が赤くなりそうなのをどうにか抑えていると丁度、注文したアップルパイが机に届いた。



 

今気づいたが


…食べ終えるまでこれを聞かなくちゃいけないのか。逆に俺は失敗したなと思う。











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