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俺はおかしい。それを自覚したのは、中二の時だ。
俺は男子校の偏差値55ぐらいの中学校に通っていたんだが、不良グループに属していたクラスメートのやつがエロ同人誌をおおっぴらに机に広げて、クラスの奴に見せつけていたことがあったんだ。
その内容が女騎士を辱める物語なんだが…。
俺は同人誌を見たとき、実は心が高揚して憧れてしまった…女騎士にだ!
最後まで、村の人々を守り抜こうとするその精神力に俺もあのような気高い女騎士になりたいとおもってしまったのだ。
だから武道・勉学・美容を極めようと日々精進した。そして、出来上がったのは180cmの【校内抱かれたいイケメン1位】竜胆正志…くそがっっ!!男の俺を磨いたとしても、イケメンが生まれるだけだった!
こうなったら女性になれるようホルモン手術するまでなんだが、親が許さないだろう。俺は所謂、いいところのお坊ちゃんだ。古い考えと言われるがその長男を長女に変えるのは親というか爺さんが許さない。
「というわけで、マイシスターに助力を望みたいんだが」
そう言って、俺は黒髪姫カットのこれぞ大和なでしこを体現している妹の小雪を見る。
「無理ですね。いくらわたくしがお爺様に可愛がられているとしても、お兄様の女体化計画に尽力してくれると思いませんわ。あの老いぼれが財産を貯めて早死にするのを願うばかりですわね」
ズーーと、俺が用意した熱々の緑茶を飲みながら冷たく答える。まぁ、小雪があの爺さんに対して厳しいのは政略結婚とまでは言わないが利用できる駒だと思われているのを感じているからだろう。
「…まぁ疑似的であれば解決できる策を提示するのもやぶさかではないです」
!?なんだと…
「条件は?」
「話が早くて助かりますわね。ライ様とお兄様のツーショット写真でいいです」
ライ様というのは俺が高校で意気投合した友人だ。ライは俺含め学園の代表2トップに位置し、俺が風紀委員長でライが生徒会長だ。
「お前、相変わらず面食いだな」
「うふふ」
俺は、スマホを開き高校1年の修学旅行で行った名古屋の写真を小雪に送信する。
「ごちそうさまです。お兄様♪」
小雪は5分間スマホを見て満足げに頷いた後、小雪はテレビのリモコンを操作しテレビを付ける。U-Tubeか?
「これは、2か月前に販売開始されたVRゲームのCMですわ」
〈CMの内容〉
1森で数体の人型機械が何かの痕跡を探しているシーンから動物型の機械と戦う
2森の開けた場所で洞窟を発見。センサーで人を識別しておりその施設に入ることが可能
3施設の埃の被ったカプセルにはプレイヤーが眠っている
そこまでが、このCMの内容だった。
「あんまりVRには詳しくないんだが…俺の悩みとこの映像は何か関係あるのか?」
「このゲームは従来のVRゲームと比べてアバター制作の幅広く、男性が女性になるネカマのようなことも可能ですわ。それに機械AI通称【Cain】からキャンプ地を守るミッションもありますの」
ふむふむ。
「でも、女騎士と行ったらファンタジーの世界で活躍するイメージがあるんだが、小雪が紹介しているゲームはSF?近未来的世界じゃないのか?」
「シャラップ!!」
!びっくりした。小雪が大声を上げるのはめずらしい。
「なぜ分かりませんの?ロボットの造形を騎士型にすればそれを操縦する操縦士は騎士と呼べるでしょう」
はぁーと思いっきり溜息をはかれてしまった。
「固定観念を捨てなさい」
と、どこから取り出した閉じた扇子で俺の眉間にぐいぐいとアタックする。
「てか、なんでそんなにこのゲームに詳しいんだ?」
「わたくしもこのゲームをプレイしています」
おぉ。なんか夕飯とか合わないからこそこそなんかやっていると思ったら、これをやっていたのか。
「これでも、ランカーでイベントに上位入賞しておりますの」
「…すごいな」
「当然です。それでその時、このゲームへの招待券1枚取れましたのでお兄様にプレゼントしますわ」
「えっ、いいのか?」
「ゲームが趣味な学友も近くにはおりませんから余っていたんです。それに第二陣の抽選は締め切りされていますので、このゲームをやるのが1年先になりそうですしね」
やはり、持つべきはマイシスターか。
「招待コードを送っておきますのでそれを入力して初めてください」
「サンキュー」
「それとわたくし、あちらでやや立て込んでいるので案内は出来ませんが…」
「心配するなって。一応VRは少し経験もある。事前情報を見てから始めるよ」