第四話 我、ステータスで不器用扱いされておるようじゃ
「起きよ、側仕えの男よ」
領主のザッコが喉を潰され死亡したので、我は気絶している男を起こして情報を聞き出す事にした。
領主にくっついていたのなら、この男にも多少の知恵があると思える。
呻き声をあげながら、側仕えの男がモゾッと身体を起こし目を覚ました。青冷めているのは、主の変わり果てた姿のせい……ではなく肌寒いからか。
我は元々こやつが着ていた衣服を返してやる。モゾモゾと着るのを待って質問した。
「この指金はなんじゃ。知っている事を述べよ」
何が起きているのか始めは状況を掴めていない様子だったが、側仕えの男は領主の姿から察したようだった。
「その魔法の指輪は、ダンジョン王国と呼ばれる国のもの。様々なタイプのダンジョンだらけの小大陸がありまして、その地の魔法の品なのですよ」
この男はコバンという名だ。ザッコの動かない巨体を見てから、嫌味な表情を失った。主を失い途方に暮れているようだ。
太鼓持ちに見えて、忠義ものだったのかもしれん。我の質問にも、素直に答えおる。まるで憑き物が落ちたようだの。
「ダンジョンとやらは、あやかしの巣なのじゃな。そのダンジョン王国とやらでは、こうした道具がいくつも流通しておるのか」
この世界にも熊や狼はいるようだ。アカネから聞いた話では火を吐く龍や、山のような巨人までいるとのことだった。
「ザッコ様が亡くなって……指輪の登録が完全に出来たようですな。その指輪には魔力の増幅と、簡単な鑑定能力がついとります」
我に魔法のような力が得られたのは、まだ仮の段階だったらしい。真の登録者になると、指金に備わる力が使えるはずだったようだ。
「なるほど、面白い絡繰のようだな。我の能力をどうやって測るのかわからぬが、強さを示す値が最も高いのが気にいったぞ」
我は召喚されたもの故、指金抜きでも魔法が使えたのだとコバンは推察を述べた。ザッコは指金抜きでは魔法が使えない。だから取り返したくて焦っていたようだ。
「大雑把ですが、相手の能力も同様に図る事が可能となっておるのですよ」
「本来の使い方は、ダンジョンとやらでの適性をこの指金で測るわけじゃな」
「はい。ザッコ様はこれをどこからか入手して、潜在能力の高く見込みのあるものを捉えては売買しておりました。誾千代様が察したように、それと別に欲望を満たすためにも……」
「まあ異国の統治の仕方に、我が何か言うことはない。気に入らなければ我が壊すだけじゃ」
魔法とやらのまじないの存在のせいで、合戦で簡単に始末をつけるのとは勝手が違ってくるようだ。草のもの達と戦うのに近いようだの。
いずれにせよ、我は自分の能力というものがわかった。どれ、教わった手順で確かめてみるとするかのう。
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立花 誾千代 【異界の姫当主】
レベル:3
職業:姫侍
冒険者ランク:──級(未登録)
所属:なし
年齢:7歳
戦闘力 S
生命力 C
持久力 C
敏捷力 A
忍耐力 B
精神力 A+
魔法力 B
魔耐性 A
知識力 C
洞察力 B
判断力 A
発想力 B
器用度 E
統率力 A
交渉力 D
政治力 C
潜在力 S
友愛値 C
幸運値 B
魅力値 A
成長力 B+ 万能
信奉度 385
強化値 277
スキル 固有スキル
・雷鳴閃撃Lv.3(魔力による身体強化Lv.2)(魔力による追加ダメージLv.1)
・立花の誇りLv.5(精神鼓舞Lv.2)(精神魔法耐性上昇Lv.3)(威圧Lv.2)
・言語共通解析(共通認識化)
・父の教え(能力大幅上昇)
◇ 導きの指輪 登録者【立花 誾千代】
レベル:1
スキル 固定スキル
・魔法力上昇Lv.1
・魔力量増加Lv.2
・ステータス鑑定眼Lv.2
・スキル模倣Lv.1
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うむ、戦の力を高く見込まれたのは嬉しいのだが、あくまで自分自身の中の事か。実際強さはどれくらいなのか比較しない限りよくわらんの。何故伴天連共の表記と交じっておるのかも謎じゃ。
「アカネ、おぬしのステータスとやらを見るぞ」
「は、はい。どうぞ」
我はコバンから教わったやり方で、指金の鑑定とやらを使う。これは中々楽しいのう。
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アカネ 【アルカネ】【誾千代の御伽衆】
レベル:1
職業:側仕え
冒険者ランク:──級(未登録)
所属:なし
年齢:7歳
戦闘力 ☆
生命力 ☆
持久力 ☆
敏捷力 ☆☆
忍耐力 ☆☆
精神力 ☆☆
魔法力 ☆☆☆
魔耐性 ☆☆
知識力 ☆
洞察力 ☆☆
判断力 ☆☆
発想力 ☆☆
器用度 ☆☆
統率力 ☆
交渉力 ☆
政治力 ☆
潜在力 ☆☆
友愛値 ☆☆
幸運値 ☆
魅力値 ☆☆
成長力 ☆☆☆ 晩成
忠誠度 ☆☆☆☆ 心酔
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アカネのステータスとやらは、我と違い全ての能力は見えなかった。コバンが表記の見方を教えてくれた。☆の数が高いと能力は高いらしい。
「童子ゆえ戦闘能力はないが、魔法力が高いのじゃな」
能力を見極め、集めて来ただけの事はあるわけか。ついでにコバンの能力を見ておくとするか。
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コバン 【廃業執事】
レベル:8
職業:執事
冒険者ランク:銅級(四等級)
所属:ザックの町 ザルク戦団
年齢:29歳
戦闘力 ☆
生命力 ☆☆
持久力 ☆☆
敏捷力 ☆
忍耐力 ☆☆☆
精神力 ☆☆
魔法力 ☆
魔耐性 ☆
知識力 ☆☆
洞察力 ☆☆
判断力 ☆☆
発想力 ☆☆
器用度 ☆☆
統率力 ☆
交渉力 ☆☆
政治力 ☆☆
潜在力 ☆
友愛値 ☆☆
幸運値 ☆
魅力値 ☆
成長力 ☆ 停滞
忠誠度 ☆☆☆ 心服
状態:密約遂行
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こやつ……横暴そうなザッコに付いていたせいか、耐え忍ぶ力が高いようだ。無能ではないようだ。
……最後の密約とはなんだ? 我に対して心服とあるのに、何か秘密があるというわけか。
欲深い領主についてゆかねばならぬ苦労は察するに余りある。だが……領主が滅んだのだから、今後は強く生きるがよいの。
「い、いや、誾千代様、私も連れて行って下さいよ」
コバンを置いて出て行こうとすると、こやつは我の前に回り込み平伏した。敏捷力が低いくせに素早いのう。
「好きにせよ」
もともとアカネ達も、我が生き延びる為の手駒にするつもりだったからの。生き死には、各自の自由にさせるつもりだった。
我に刃向かうつもりがないのなら、手駒が増えるだけだ。ついて来たいというのなら、構わぬというものよ。屋敷に残るのか、我について来るのかは、他のものも勝手にすれば良かろう。
お読みいただきありがとうございます。
ステータスは遊びのおまけです。あまり深く考えず、何となく楽しんでもらえれば……と思います。