スキル『量子力学ノ全テ』vs絶対不死者
第四回なろうラジオ大賞参加作品第十五弾!
「よもやこんな敵がいようとは!」
「どうするのリキ!」
「このままじゃ私達じり貧よ!」
俺の名前はリキ。
異世界召喚された勇者だ。
そして俺は最近の異世界モノのテンプレ通り、この世界を支配せんとする魔王を倒す宿命を負わされ、現在魔王に支配された土地を開放する戦いに臨んでるんだが……俺が異世界召喚された際に身に付けたスキル『量子力学ノ全テ』……まだ全てを使いこなせるほどレヴェルが高くないが現時点でも充分チートなこのスキルでも倒せないような敵が今回現れた。
「もう一度! 出でよ! シュレーディンガーボックス!」
シュレーディンガーボックス。
量子力学で言うところの『シュレーディンガーの猫』を技として顕現させたモノであり、この大きな箱に収めた者の生死が、技の使用者たる俺が観測……ようは、念じた瞬間に強制的に決定されるというトンデモない技だ。
つまり瀕死の状態の味方を入れて『生きてる』と俺が念じれば……どういう理屈か全快した状態になり、敵を入れて『死んでる』と念じれば強制的に死んだ状態にできるのだ。実に恐ろしい技だ。
ちなみに死者蘇生は不可能。
死んだ状態の猫を毒ガスが出る箱の中に入れて観測しても死が覆らぬように。
そして現在そんな技が通用しない敵と戦ってる。
「フン! 俺にその技は通じんわぁ!」
敵が雄叫びを上げ、シュレーディンガーボックスから出てきた。
「なぜなら俺は魔王様の力で不死の体となった不死者ボルガーだからだ! さぁ異世界召喚勇者よ死ねぃ!」
なるほど。
不死者だから、最初から『死んでる』選択肢が存在しないのか。
シュレーディンガーボックスが通用しないワケだ……いや待てよ?
「メル、リアン、今から俺の言う事をしてくれ!」
すぐに俺はなんとかまだ立てている仲間にある指示を出し「もう一度! 出でよシュレーディンガーボックス!」技を出す。
「フン! だから通用しないと――」
そして敵をシュレーディンガーボックスに閉じ込めた俺は……そのまま、見ざる聞かざる考えざるを決め込んだ。
※
「ッ!? ちょっ!? ここから出せ!」
私こと王宮騎士団のメルはリキの策に唖然となった。
リキのこの技は、相手の生死を観測してから相手を外に出す技。という事はリキが観測しない限り、中に入れたモノはどう足掻こうと外に出られぬ事を意味する。
――ならリキが観測しない内に箱を縛れば。
相手を永遠に封印できるという事だ。
私は同僚のリアンと一緒に、箱を鎖で縛り海に捨てた。
【未解禁技】
『コペンハーゲン影分身』
可能性の分だけ術者を分身させる。
『プランク瞬間移動』
電子などの素粒子の如く飛び飛びの移動が可能になる。
『ハイゼンベルク付与術』
あり得ない要素であっても、相手に備わっていると観測する事で付与できる。
などなど。