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現実的なモンスター転生〜転生先は元の世界な地球です〜  作者: ファンタジーに、お仕事を少々
2/2

第一の獣~第一話~



 “目覚めよ……目覚めよ……”



 ……ん、なんだ?

 うぅ……めっちゃ眠い。

 えっと、確か……俺、死んだ、の、か……?


 は?


 え、ちょっ、あれ、死んだよな?

 しかも、転落死っていう何とも情けない……。



 “目覚めよ……目覚めよ……”



 で、なに?さっきから声が聞こえるのは、誰だ?

 というより意識があるってことは助かったということか。いや、意外と人間って軟に見えて頑丈だったんだな。ってことはここは病院かな。病院にしては静か過ぎ……だよな。



 “……さっさと起きんか、このばかものぉっ!?”



 んぎゃぅ!?


 な、なんだ?


 いきなり全身に痛みと衝撃が……って、よく身体を見てみれば全身透き通っているし。てか自分の手で自分の身体が触れられないのだが……え、これ、幽霊?



 “いい加減にするのだぞ……この妾を無視するとは”



 えっと?


 目の前にちびっ子が。

 しかも何か見た感じ凄く偉そう。

 生意気だな……最近の子は。ま、それはそれでいいんだけどさ。


 

 “なっ!?なななな、生意気じゃと!?この妾を!?この【天照大神(アマテラスオオミカミ)】であるこの妾をか!?何たる不敬!何たる愚者!おのれ……この妾、すごく、すごく偉いんじゃぞ……わらわはぁ、すごいんじゃぞぉ……”



 ……んー、あー、ごめんね。

 あれ?心読まれてる感じ?

 え、えっと、アマテラスオオミカミ……?


 何か……日本の、最高神様のお名前では……。



 “!そっ、そうじゃぞ!妾はお主達が住まう国のえらーいっ!いちばんえらーぃっ、神様なのじゃぞ!”



 確か……何というか、天岩戸で有名とかで引き篭もったとか。



 “あ、あれは!わ、妾のかわいいかわいい弟がの、酷いことをしてしまって……そ、そのムカついて、つい……”



 え、つい?つい引き篭もって世界を、夜にしたの?



 “えっ、えぇいっ!そんなこと言うでない!そもそもそんな結構前の事ではないか!なんじゃぁっ!どうせ下界の人間達は妾の事を笑ってるんじゃろ!絶対そうなんじゃろ!うわぁぁぁぁん!!!”



 うわっ、泣いた。

 いや、天照様の事を誰も笑ってはいませんよ。むしろ日本の最高神様をそんな事する訳じゃないですか。そもそも天照様のせいじゃなくて、弟さんのスサノヲさんなんでしょ?



 “う、うん。そ、そうじゃな!あやつめ、あれだけ可愛がっておったのに下界に降りて、挙げ句の果に妻まで作りおって……昔は、妾にべったりじゃったのに、今では全く顔も見せん……少し位妾と……うぐひゅぅぅ”



 また泣いたよ天照大神。

 というか、何故に疑いも無くこのちびっ子を天照大神だと認識しているのかはわからないが、うん何か残念だけどこのちびっ子が天照大神なのだろう。あまり深く考えてはならないような気がする。



 “いい加減にしてください、天照大神様。貴女のそういうすぐ泣いてしまう癖どうにかしてください。だから他の神々だけではなく人間までもナメられるんですよ”


 “な、なんじゃとぉ!?き、きさま!この妾を―――――”


 “は?”


 “ひゃぅっ!?ご、ごめんなさい……”



 あ、あれー?

 一応あのちびっ子【天照大神】だよね?日本の最高神だよね?なんで横にいる白髪の……狐の耳と尻尾?の女の人?いやわかんねー人に叱られてるの?そして威厳もクソもねぇな、天照様!?

 今にも泣き出しそうな天照様を放っておいて俺の方を向いた白い美人さん。



 “わかればよろしい。さて、初めまして森山(もりやま)志郎(しろう)。私は横にいる天照大神の補佐、【九十九(つくも)】という。君は既に死んでいるのだが、理解はしているかい?”



 ま、まあ……崖から落ちたし。というより、身体が全身透き通っているから余計に。



 “それなら結構。若くして死んだ君に折り入って頼みがあるんだ”



 頼み?


 

 “異世界転生、という言葉は知っているかい?”



 ……へ?イセカイテンセイ?


 えっと、異世界転生か?えっと異世界に転生はわからないが、異世界なら外国の児童文学向け絵本で確かあったな。あの物語中々面白くて図書館で読みふけっていた記憶がある。



 “あー……そう言えば貴方、80年代の人間でしたね。それなら異世界転生については知らなくてもおかしくはない、か。ですが、意外にも異世界系は昔からあるみたいですし。確か1820年程遡るらしいですからね、異世界系の歴史は。分類はどちらかというと異世界転移ですけど”


 “そ、そうなのか!?妾はてっきり最近流行っていたものじゃと”


 “実際、異世界転生なんてものはこちらからすれば非常に困るものなんですよね。考えても見れば、地球の魂を勝手に取ってしまうんですから。天国とか地獄とか、そういう管轄から苦情が来てしまうので本来する訳がありません。あったとしたらそれは非合法な訳なので、容赦なくその盗人を消滅するまでボコります”


 “ひぃぃっ!?”


 “何で貴女が悲鳴を……まさか、天照大神!”


 “ちっ、違うぞっ!お主の顔があまりにも恐くて”


 “失礼ですね貴女。それでも日本の最高神ですか?一度その弱い精神を叩き直す必要がありますね”


 “い、いやじゃぁぁあ!?!?”



 何、この現状。

 てか、何か上下逆だろ。なんで補佐に怯えてるんだよ天照大神。いや、天照大神って確か結構神話とか見ているとメンタル弱そうな気が……あ、これ以上は辞めておこう。心読まれるから。



 “まあこの駄女神の事は後でいいでしょう”


 “駄女神!?”


 “駄女神以外に何がありますか?神話ではあまり描かれてませんがこの女神、今でも引き篭もりしてますからね。確かに日本の文化は素晴らしいですよ。ゲームにアニメ、漫画等など……しかし、やるなとは言いませんが、やる事をやり終えてからにしてください。その口調だって、アニメキャラの影響でしょうに。そんなに好きなんですか、あのキャラ。確かに貴女の容姿と女神という点は合っていますが”


 “な、なぜ知って―――――”


 “貴女の酒癖の悪さ、気付いてないのですか。まあ恥ずかしい事をベラベラ話溢していますよ。最初は引いていましたけど、今は大丈夫です。慣れましたから”


 “あ……あ゛ぁ゛ぁ゛……”



 何か、隠していた事が母親にバレて恥ずかしくて消え去りたい子供みたい。てか、九十九さん凄いな。天照大神、轟沈していますよ。



 “あ、申し訳ない。かなり話が脱線しましたね。失礼しました”



 あ、いえ、大丈夫っす。



 “話は戻しますが、転生して欲しいのです”


 

 転生……異世界転生、つまり地球とは違う世界へって事ですか?



 “いえ、単に異世界転生の事をご存知なら説明は省いても大丈夫と思いまして。ですが、転生はしてもらいますが異世界ではありません”


 

 と、いうと?



 “貴方には私の部下として転生して欲しいのです。ま、簡単に言うと私達の元で就職しませんか、という事なのですが”



 あー、なるほ―――――――えぇ!?



 “嫌ですか?別に構いませんよ。正直こんな事を言ってしまうと失礼ですが、他にも宛がありますので”



 あ、地味にショック。


 い、いや、何故貴女の部下に?転生すると?



 “簡単に言いますと、最近――――といっても貴方達人間からするとかなり昔の事なのですが、前の会議でこの地球のデータを数値化しようという動きがありまして。その為にはかなり人手が必要なんですよ。やはり数値化をしておくと色々便利ということなんです。そこで、貴方には転生してもらい地上で調査してほしいのです”



 な、なるほど。


 数値化、ですか。



 “勿論給与はあります。8時間勤務で完全週2日制。残業代も出ます。寮は1LDKもご用意しますので住む場所にはご安心を。家賃はこちらが負担します。交通費も別途で支給ですね。あとは福利厚生も殆ど揃っていますし、年に一度、天国や地獄の慰安旅行もやっています。自由参加なのでご安心を。不参加の場合は別途で何かしら不参加手当として旅行費分をお渡しします。因みに給与は日本円で20万からです。昇給・賞与は年2回。最初の半年は試用期間としていますが、それ程難しくはないでしょう。ただ移動が少し大変な事くらいですからね。中には移動中に各都道府県のご当地グルメや観光も込みで仕事をしていますから……あぁ、別にいいんですよ。許可していますし。むしろ日本の各都道府県の事を知る事も一つの仕事ですから”


 

 な、なんか、いい仕事だ……よね?

 俺、騙されたりしてない?



 “別にいつ辞めていただいても構いません。現代の日本人みたく、簡単に辞められないのがおかしいのです。辞めたい者はさっさと辞めて新しい道を目指せばいい。無理に辞めさせないのは、仕事の支障にもなりかねないのです。むしろこの仕事から新たな仕事に就職し、そこで開花すればむしろ辞められた側としても鼻が高いと思うのですが。退職は終りというイメージが、現代日本の悪い所。むしろ学校みたいに卒業と捉えればいいものを……とつくづく思います。あと、特に面接とか。何なんですかね、あれ。あんなガチガチな面接でその人物がわかるつもりなんですか?それに面接するなら履歴書を見る必要もない。面接する相手くらい事前に調べておけやボケが。何時までも自分達が人を選ぶとか考えてたら痛い目を見るぞ。逆に面接官を見て選ぶ就活者が増えるぞ絶対”


 

 何かスゲーキレてるな九十九さん。


 

 “……何度も申し訳ない。一応これは面接みたいなものです。と言っても採用前提なんですが”



 採用前提……でも大丈夫なんですか?

 俺が使えないかもしれないのに。



 “使える使えないかはどうでもいいんですよ。もっと言えば資格があろうが無かろうがこの仕事はどうでもいい。そもそも何も知らないのにも関わらず、使える使えないと言う方がおかしいのです。使える様に指導するのが、我々上層部の使命の一つなのですから。要は住めば都、という感じでしか我々は思ってません。なので、仕事に馴染み慣れて言えばいい。欲を言えば楽しんでもらう事がもっといい。あと良い悪い問わず意見は出してください。そちらの方が我々としても助かります”



 お……おぉ。

 何だろう、九十九さんめっちゃ頼もしい。



 “ですが、仕事は難しくはありませんが大変ではあります。難しくないから楽出来る、と言う訳ではないです。これは下界でも同じだとは思いますけどね。勿論、貴方の意見は尊重します。断ってもらっても構いませんし。このまま輪廻転生の輪に入ってもらい次の人生を楽しんでもらっても問題ありません。ですが、輪廻転生の場合は記憶は全て消えるのは間違いないですが。ただ、未来の日本をこの目で見たいと願う貴方には良いものではと感じてここに来てもらったまでです“



 ……そっか。


 未来の日本、か。


 どれ程年月が経っているのかはわからないけど、俺としては願ったり叶ったり。


 至らぬ点はあるかもしれませんが、宜しくお願い致します!



 “そこまで畏まる必要はありません。ですが、よかった。こちらこそ宜しくお願い致します。では、私の部下として転生してもらいます。いいですね?”


 

 いつでも来いっ!



 “では、転生を始めます”


 “あの、妾、何か手伝おうかの”


 “必要ありません。むしろ邪魔です”


 “ひどっ!?”



 相変わらず、天照様に対しては辛辣だ。


 因みに転生して後から聞いた話だが天照様は九十九様よりも遥かに歳上ではあるが、仕事はするものの何か理由を付けてはサボろうとする超サボり魔、いや超サボり神として当初は酷かったらしい。加えて他人に当たるとか酷い事も多々していたとのこと。が、九十九様が補佐に、なってからは大分マシになったそうで周りから最高神に対しても臆さず怒る凄い人と周りの神々からも尊敬の念を込められているのだが――――――――――――――――――それはまた次のお話で。

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