プロローグ
俺は、大自然が崩壊される故郷の光景を最も景色がよく見渡せる崖から眺めていた。
昔は緑が生い茂り、自然豊かだった筈。しかし、今は都市開発が進み緑は失われ工場から愚かにも川へ汚水を垂れ流す人類に絶望してしまう。
これが、俺の故郷なのか。
汚水は川魚を犯し、大地を病を振りまいた。
こんなことが、あっていいのか。
それほど金が欲しいのか。
それほど有名にしたいのか。
それほど自然を穢しても心を痛まないのか。
最初は反対運動をし、家族や親戚だけではなく地域の仲間達と共に阻止しようとはした。勿論抗議したり、口だけではなくこうすれば自然を必要以上に穢さずに済む方法も提案したんだ。
けど……全ては無駄だった。
資源を必要とする企業は、ただ私利私欲の為に草木を狩り山を多く削り穴を開けた。機械を動かす為のエネルギーを手に入れる為だ。
確かに人の生活は豊かになった。
テレビや洗濯機に冷蔵庫といった様々な発明品は、人々の生活を幸せにするのは確かだ。実際にどれだけ優れているのかを紹介されたこともある。だが、それでは自然はどうなる。
今のままでいいではないか。
畑を耕し、ゆっくりと時間を過ごし、食に感謝する。
大変かもしれないが、自然と共存することが一番ではないのか。
便利は素晴らしいことは、わかる。だか、その便利さが何れ大切な事を忘れ去ってしまうのが末恐ろしい。
勿論、自然は厳しいものだ。だからこそ、人々はより自然に負けぬ様に様々な発明をしてきたのも理解している。
結局は、だ。
誰も、誰も悪くはないのだ。
人の為に発明してきた偉人達は悪くはない。
ただ、それが自然にとって良くないものだっただけ。
理解はしている。
けども、最も許せなかったのはこの現状を変えられなかった俺自身。力も権力もない、紛れも無く、俺自身なのだ。
「もっと、自然を穢さずに。何より、未来の為にも」
だからこそ、俺は自然も守り人々の生活を豊かにする為に新たな発明をするのだ。まだ、学生ではあるが。まだまだ世の中の全てを理解していない未熟者だが、何れこの一生に掛けてでも成し遂げてやる!
それが、俺の夢だ。
ばあちゃんは、ここを愛していた。
勿論俺もだ。
例え、この夢が叶わないとしても……せめて未来には自然を穢さずに済む方法を足し遂げられるだけでもいい。
途方とない戦いだ。
「!?」
すると突然、身体が浮遊した感覚に見舞われたかと思えば俺の視線は倒れ込む様に下へ下へと落ちていく。
もう既に手遅れではあるが、その時にようやく気付いたのだ。己の足場が崩れてしまったことに。
あぁ、まさかこうなるとはと思ってしまうのだがある意味これも運命的な何かかと悟ってしまうが、いや普通もうちょっと慌てる筈と冷静に自己分析している事に案外死ぬ時はこんな感じかと納得してしまう。
いや、多分冷静ではなく混乱し過ぎて逆に落ち着いているだけかも。
そして地面が目の前に直撃する瞬間、俺は愚かにも願ってしまった。
―――――せめて、この世界の未来をこの目で確かめたかった、と。