1話 なんか色々失敗した
「はぁ〜・・・・・・」
頭に血が上る。
復讐などに興味はないが、ここまでされるとさすがに頭にくるな・・・・頭がむしゃくしゃする。
そこにいるのは黒い髪に赤い目。
身長は145センチと明らかに子供。
ここはアルバルス王国にあるダンジョンの奥深く。
『グリードダンジョン』
何回層あるかも分からない。
数多の英雄が挑み・・・クリアされることも無く、しかし英雄が帰ってくることもなかった。それがグリードダンジョン。
では何故そんな危ない場所にこんな子供がいるのか?
理由は簡単・・・勇者として異世界に呼び出され、奈落に落とされたからだ。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「・・・・・・はぁ〜ぁ」
思わずため息が出る。
俺たちは今さっきまで高校の1年3組にいた。そんな俺たちが今はよく分からん王様の前にいて救ってくれと言われ頭を下げられている。
はっきり言ってやだよ。
俺は勇者よりは魔王の方が好きだからだ。
勇者とかつまんないじゃん。何が楽しくていきてんのかわかんねぇよ。
つーかあの国王の髭すげぇな。
すごい伸びてて威厳あるけど邪魔じゃないのかな?国王の両隣にいるのは騎士団長的なやつと参謀的なやつかな?
「分かりました・・・困ってる人は見逃せませんからね」
テンプレ来たな。
あの金髪イケメンは主人公補正かかってそうなイメージだけどぶっちゃけポンコツだしな。頭悪いし・・・ん?おれ?全国模試1位だよ。
さて・・・と、今の状況は・・・・・・後ろに兵士が2人。
ポケットに入れてたスマホはなくなってる。衣服は転移できたけどほかはできなかったみたいだな。
部屋のドアの数は・・・くそ見えねぇ。
俺の身長は145センチだから他のやつの頭が邪魔で見えないんだよな。ま・・・低身長なのは別に悪いことじゃない。場所を移動してても気づかれにくいからな。
35人の人混みをかき分け真ん中側から外後に着くと目の前には聖騎士長っぽい人がいた。
「どこへ行こうとしてるのかな?」
「この身長故どうなってるのか見えないから移動しただけですよ!」
笑顔で答えるが内心はかなり動揺している!!
聖騎士長の動きには特に用心してたのに・・・3秒前に聖騎士長を確認して移動してなかったはずなのに・・・・・・!!!
「・・・ふーん、そうなんだ」
「そうなんですよ・・・恥ずかしながら耳も生まれつき遠くて・・・・・・」
何とか誤魔化せ!!!
ここは異世界!!気に入らないから殺すが許される世界の可能性だってある!!!
多少の疑心感は仕方ない!!!
取り敢えずここを乗り切れ!!!
挽回など後でどうとでもなる!!!
「すみません・・・前の方に移動しても宜しいですか?」
「構いませんよ」
笑顔で言ってくる聖騎士長っぽい人。
白髪の長髪で男である彼は40代は言ってそうだが・・・かなりイケメンの部類に入るな。
この部屋の視線がここに集まっている。
今はあまり目立つ時じゃない。
先頭の方へ行き辺りを見回す。
警戒がとかれた訳では無いが・・・まぁ、さっきよりはマシだろう。
「・・・・・・ふむ、まず『ステータスオープン』と言ってステータスを確認してくれ!!」
「はい!!」
あの金髪イケメン元気に返事しやがって・・・・・・・・・ん?あいつのステータスが俺にも見えてんだけど。
「君が勇者か・・・名前を聞かせてくれ」
勇者・・・職業欄にそう書いてあるからか?
いや、問題はそこじゃない・・・・・・あの金髪イケメンのステータスが俺にも見えている・・・また、反応を見るに周りのヤツにも見えている。
これが問題だ。
個人情報ダダ漏れなのはまずい。
さっき国王は『ステータスオープン』と言っていたな。普通に考えれば『ステータス』と言えば自分にしか見えない状態になると思うんだが・・・・・・。
試してみるか。
「・・・・・・ステータス」
小声でそう言うとステータスが目に見えるようになり周りを見るとそれには気づいていないだろう。
少し拍子抜けではあるがな。
名前:印籐 雅紀(いんどう まさき)
種族:人間
状態:正常
職業:変幻自在
レベル:1
体力:5
魔力:3
攻撃力:5
防御力:4
攻魔力:4
防魔力:3
速力:7
知力:18
『スキル』
剣術:Lv1
『エクストラスキル』
変幻自在:Lv1
『ユニークスキル』
完全処理記憶:Lv―― 図書館:Lv1
しかし職業:変幻自在とは何なのかが分からない。
『完全処理記憶』はともかく『図書館』もわかるようで分からないな・・・・・・。効果を調べようとしたが『鑑定』とかそんな感じのスキルが必要なんだろう。
それとステータスの数値については勇者である金髪イケメンと同じようなものだから大丈夫だろう。
ほかのクラスメイト達も自分のステータスを確認し始めたか。騎士たちがステータスが当たりがハズレか調べてるってところか・・・。
「・・・・・・・んで俺のところにはあなたという訳ですか」
「ああ、残念だったな」
聖騎士長っぽい白髪の長髪イケメンが近づいてくる。
自分のスキルがいいものか良くないものかが分からないから、反応に困る。まぁ、逃げ出したくても無理だからな。
腹を括るしかないか。
「ステータスオープン」
そう言って俺は聖騎士長っぽい人に自分のステータスを見せた。反応はあまり宜しくないようだな。
「・・・はぁ〜、着いてこい」
「構いませんが・・・どこに行くのでしょうか?」
「・・・・・・取り繕っても意味が無いからな」
突然だが俺は・・・人の目や口・動きなどでその人が何を考えているのか・・・私の知ってる知識にあるのなら何をしようとしてるのかが分かる。
何が言いたいかと言うと・・・今の聖騎士長っぽい人の目は人を殺す時の目だ。
「ダンジョンに1人で潜って貰う」
ん?予想より生存率が高い気がする。
そのまま死刑執行も有り得たと思ったんだが、どうやら外れたようだ。むしろ邪魔なやつらと離れられるどころかダンジョンでレベル上げも出来ると・・・・・・。
────────最高じゃねぇか。
「何を笑っている?」
「いえ・・・ダンジョンの方は楽しみだなと」
満面の笑顔でそう答える。
しかしこれで終わると思ってた俺は考えが甘いんだろう。
「お前笑ってるとか馬鹿じゃねぇの!!?
勇者の俺と違ってお前ごときがダンジョン言って生き残れるわきゃねぇだろ!!!」
そう声が聞こえ振り返るとクラスメイト達からは変なやつを見るような目で見られていた。まぁ、そりゃそうか。死刑宣告と大して変わらないようなこと言われたのに笑っていたんだからな。
口に出す勇気はないが異物は怖いから近寄らないでという意味を込めてあの目で見てるんだろう。
理由は分からなくもないが正直イラッとくる。
「・・・・・・・・・ッチ」
つい舌打ちをする。
その瞬間、金髪イケメンの手に剣が握られていてそれを俺に向かって使ってきた。あれが勇者のエクストラスキル『聖剣召喚』だろう。
ま、使ってるのは初心者だからただの宝の持ち腐れなんだけどね。
「おりゃああぁぁぁぁぁ!!!!」
そう言って切りかかってきたのを手の甲で受け流す。
さすが聖剣・・・受け流すだけでダメージを食らうとは・・・・・・。しかし金髪イケメンはこれが気に入らなかったご様子。
ま、学校の時もかなりの頻度でちょっかいかけてきてたからな。自分よりもあみのいい俺が気に入らないんだろう。
そう思いながら金髪イケメンの剣を受け流す。
「あたれ!!あたれ!!あたりやがれ!!!!」
気合いは十分だけど所詮は素人・・・あまり意味は無いかな。これも受け流して反撃しよ・・・・・・。
その瞬間、後ろから誰かに掴まれた。
「・・・・・・聖騎士長っぽい人!!」
そう反応はするものの金髪イケメンの攻撃に今頃対応できる訳もなく綺麗に一撃を食らう。
「・・・・・・・・・・・・っ!!!!」
「ほう・・・声を上げない胆力は認めよう」
・・・ッチ、こいつらホント邪魔だな。
そうは思うものの何か出来る訳もなく次々と剣が切り込まれていく。かなり痛い。体が熱い。だが・・・・・・
「・・・・・・ー・・・・・・・っっっっっー!ー!ー!!ー」
男が痛みで叫ぶのはかっこ悪ぃから叫びはしねぇ。
だが・・・これも気に入らなかったご様子で次にクラスメイトに向かってこういった。
「お前らも見てないでこいつに攻撃を当てろ!!!」
その言葉聞いたものはほとんどは動けず何人かは構えた。俺の味方になるやつは一人もいない・・・・・・と。
「ーーーーーっっーーーっっーー!!ーーっ!」
魔法かありゃ炎やら風やら当てやがって!!!
傷に染みていてぇ。
左の視界が赤色になっている。
頭から血でも流れてんのか?
痛いし辛いし熱い・・・・・・けど慣れてきたな。
『体を変化させます。痛覚を感じない体に変化しました。』
その声を聞いた時・・・体に痛みを感じ無くなった。