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いずれ魔王を継ぐ者の建国譚  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!


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12/37

宿、そして女風呂へ

 宿の一室で俺とエルモはこれからの予定について話し合っていた。

 あの後、俺はゴロツキのリーダーから必要な情報を聞き出すと、全員をエルモの魔法で眠らせてから、暗くなるのを待って素っ裸にして町の門の外に生えている木に縛り付けた。


 ちなみに町の外へはエルモの魔法でひとっ飛びである。

 今日は月明かりもほとんど無い夜という事もあって、誰に見つかることもなく作業はつつがなく終わった。


 明日の朝、門が開けば門兵が彼らを見つけてくれるだろう。

 俺たちはそれまでにこの町を出て姿を変えるつもりなので、あいつらがどれだけ騒いでもかまわないのだ。

 既に宿代は払ってあるので、いつ出て行ってもかまわないらしい。


「それで結局あのゴロツキたちが言っていた組織の本部に乗り込むつもり?」

「もちろん乗り込んで壊滅させるさ。そうしないとこの先鬱陶しそうだしな。それに」

「それに?」

「魔王軍との戦争の陰で散々あくどいことをして儲けてたらしいからな。本部にはかなりの財宝が貯めてあるらしいんだよ」

「それを手に入れればいちいち町に着くたびに素材屋で換金しなくても良いってことだね」

「ご名答」

「持ち主がわかりそうな財宝には手を出さない方が良いかもだけど、お金とかなら……」

「エルモ。お前今かなり悪い顔してるぞ」

「ええっ、嘘っ。僕そんな顔してた?」

「してたしてた」


 そんなことないもん!

 そう言いながら俺の胸をぽかぽか殴ってくるエルモに俺は笑い返しながら、二人でベッドに倒れ込む。

 中くらいの宿といっても、俺が今まで寝たことのあるベッドの中では二番目に柔らかい。


 ちなみに一番目はあの洞窟の部屋に備え付けられていた物だ。

 賢者オリジは寝具にはそれほどこだわりは無かったようだが、それでもかなり高級な物を使っていた。


「ルギー」

「ん?」

「ご、ごめんっ」


 俺の上に覆い被さるように倒れ込んだエルモが慌てて離れる。

 その顔は真っ赤に染まっていて、俺はついからかいたくなってしまう。


「気にするなよ。いまは女同士なんだから」


 そう言いながら俺はエルモに後ろから抱きつく。

 ふわりと彼女の髪が揺れ、俺の顔をくすぐる。


「もう。ふざけないでよ」


 そんな俺の手を勢いよく払いエルモは立ち上がると廊下へ続く扉の前まで小走りに逃げていく。

 そして扉のノブに手を掛けながら。


「僕、先にお風呂に入ってくるから」


 そう言って部屋を出て行くエルモ。

 この宿には大浴場がある。


 異世界からやって来た勇者たちによって広められた文化らしいが、俺のいた村では未だに風呂は数ヶ月に一度入れば良いくらいだった。

 だが王都や大きな町には公衆浴場という物が何カ所もあって、庶民でも定期的に皆そこに通うのが当たり前なのだそうだ。


「せっかくだし俺も風呂行くか」


 エルモが出て行って一人になると特にやることも無い。

 俺はベッドから立ち上がると部屋の鍵をもって部屋を出る。


「たしか風呂は一階の奥だったな」


 三階の角部屋から階段をいっきに下りて一階へ向かう。

 一階のロビーに併設された食堂では、同じように今夜この宿に泊まっている旅人や商人たちが酒を飲んだり食事をしたり楽しそうに騒いでいた。

 勇者によって魔王という最大の脅威が無くなったことを皆喜んでいるのだ。


「あんな勇者でも俺たち以外にとっては英雄なんだな。ま、今更どうでもいいことだが」


 俺はそんな人々を横目に見ながら廊下を進む。

 大浴場への案内板に沿ってしばらく歩くと、時折風呂上がりだろう客とすれ違う。

 その顔は誰も彼も気持ちよさそうな表情を浮かべていて、俺の期待値もどんどん上昇していく。


「ここか」


 何も無い辺境の村で生まれ育った俺は、実はエルモから色々話は聞いていたがこのような大浴場に入るのは初めての経験だ。

 あの洞窟にも風呂はあったが、大浴場と言うにはほど遠い大きさのものだった。


「さて、たしか中が男湯と女湯に分かれているんだっけか……」


 俺はその時になってやっと気がついた。

 今の俺は女の体だ。

 だが、心は男。

 いったいどっちに入れば良いのか。


「なーんてな。普通に女湯に入れば良いに決まってるじゃないか」


 俺は迷うこと無く【女湯】と書かれた扉を開き中に入っていくのだった。


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