再会した幼なじみ
俺の名はルキシオス。
仲の良い友達からはルギーという愛称で呼ばれている。
辺境の片田舎の村で生まれ育った俺には、共に同じ村で育った婚約者がいる。
彼女の名前はキュレナ。
同い年で家も隣同士の幼なじみだ。
十歳の時に二人の両親が決めた婚約だったが、見かけだけなら村で一番かわいい彼女との婚約に当時の俺は喜んだものだ。
だがそれから六年。
歳を重ねるにつれキュレナはどんどんその本性を現すようになった。
学校でもどこでも、まるで俺を奴隷か何かのように扱うようになったのだ。
特に俺の両親が流行り病で命を落としてから、それは顕著になったように思う。
それでもどんどん美しくなっていく彼女に俺は惹かれ、彼女の言うことをできる限り聞いてあげていた。
この国では十八歳になれば結婚できる。
あと二年で俺と彼女は結ばれる……はずだった。
だが十六歳になった日のことである。
「私、神様から信託を受けましたわ!」
朝、教会で日課のお祈りを捧げている最中に、突然キュレナはそう大きな声を上げたのだ。
そしてその手に一つの光の玉を作り出すとその場に居た人々に見せつけるように屋根に向けて放り投げる。
すると教会の中全てに光が降り注ぐ、まるでそこに立つキュレナは女神のように見えた。
時々神様から強力な力を授かる人が現れるという話は聞いたことがある。
だがそれが俺の幼馴染で婚約者だったなんて。
「凄いじゃないかキュレナ!」
「当たり前じゃない。私がこんな村で無駄に一生を終えることを神様ももったいないと思ってくれたのよ」
彼女の得た力は強力な光魔法。
回復だけではなく攻撃や結界を張ったり出来る万能の力だった。
それだけではなく――。
「勇者様ご一行がこの村に?」
昨今世界を騒がせている、魔王と呼ばれる強大な力を持った魔物を討伐するために異世界から召喚されたと聞く勇者とその仲間たちがこの辺境の村にやってくるというのだ。
そして、その目的がキュレナだった。
「どうやら私、聖女様だったらしいわ。当然よね」
胸を張ってそう告げる彼女を俺は誇らしい気持ちで見ていた。
だが、それも勇者一行がこの村に現れるまでの話。
「ここがお前の生まれ故郷か」
「う、うん」
「王都から離れた辺境とはいえしょっぱい村だな」
「こんな所に高級宿とかはなさそうだな。ちっ、さっさと聖女とやらを連れて一つ前の町まで戻ろうぜ」
村の入り口からやってきたその集団は、全員が全員ひと目みてわかるほどの高級そうで立派な装備をしている。
それだけで彼らが噂の勇者一行だということは誰でもわかるほどだ。
いや、その集団の中で一人だけ簡易的なローブに安物のレザーアーマーと、簡単に顔を覆う程度のフードという装備の者がいた。
綺羅びやかな一行の中で逆に地味すぎて浮いてしまっているその人物は、何やら後ろの一行に村のいろいろな場所を指差しながら話をしているようだが、話しかけられている勇者たちはあまりそれを聞いていない様に見えた。
俺はその姿が不憫に思えたが、次の瞬間その人物が被っていたフードを外し現れた顔を見てつい声が出てしまう。
「お前!」
「なんだ?」
「もしかしてこいつの知り合いじゃないのか」
「もう俺たちの案内はいいから行ってこいよ」
俺の声を聞いた一行の一人にその小柄な人物は背中を押され、ふらつきながら俺の前まで歩いてきた。
やはり間違いない、こいつは――。
「エルモ……だよな?」
「もしかしてルギー?」
「ああ、久しぶりだな。十年ぶりだってのにあんまり成長してないな」
「頑張ってるんだけどなかなかね……でもルギーは凄く大人っぽくなったね」
それは十年ほど前にこの村から家族で引っ越していった幼馴染のエルモという少女だった。
ボーイッシュに短く切りそろえられた髪と、凹凸のほとんど無いその体は少年と言われてもわからないだろう。
「久しぶりだってのに相変わらずルギーは口が悪いよね」
「つい昔の癖でな。しかしお前、勇者パーティの一員になってたなんて凄いじゃないか」
久々に会えたうれしさと、その幼馴染が成長し出世した姿に俺は思わず興奮してしまった。
だが、当のエルモはそんな俺を見て少し困惑した表情を浮かべると俯いてしまうのだった。
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