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ウスラの事情

三話連続投稿してます。

「ウスラ、あなた男性だったの?! 」

「ハハ……まあ、そこだよね。まず気になるのは」


 私はミモザの事務室にいた。

 右隣にはジーク、左隣にはウスラが座っている。私を競り落としたのはウスラなのだが、ジークは当然の権利のように私の手を握って離さない。


「私がアステラの王子だということはわかるよね? 」

「ええ、その白目の痣が王家の証なんでしょ? 」


 それからウスラは自分の生い立ちについて語りだした。


 ウスラの母は名ばかりの貴族で、何の後ろ楯もなく王に望まれるままに正妃になったそうだ。ウスラの兄が生まれ、その五年後、ウスラを身籠った。しかし、母が臨月を迎える時、兄は愛妾の一族の企みで弑されてしまう。

 愛妾といっても、本来は正妃でもおかしくない出自。父王は周りの貴族達に言われるままに愛妾を娶り、血が絶えないようにと子供を作った。愛妾にはウスラより三歳上に王子がおり、その王子を皇太子にという貴族達の企みを、王ですら防ぐことはできなかったのだ。

 ウスラが生まれ、王子だとばれると殺されてしまうと思った正妃は、ウスラを王女として育てた。


「じゃあ、あの時は自分を女だと思っていたの? 」

「いや。まぁ、どちらでもいいかなって。ただ、あのままだとジーク王子に嫁がされそうになったから、男だって暴露したんだよ」


 どちらでもいい……がわかりませんが?


 ジークに嫁いでいたら、双方不幸だっただろう。見た目はこの美男美女のカップルにはなっただろうけど。


「この三年で、兄を推す一派を殲滅して、王位を継いだんだ」

「って……王様?! 王様がこんな娼館で無駄遣いとか、意味わかんないけど」

「アハハハ、無駄遣いってわけじゃないんだよ」


 私の右にはこの国の皇太子、左には隣国の王って、どんな状況よ?!


「なぜよ? 」

「私の未来の正妃の願いでね。というか、ディタを連れてこなければ求婚は受けられないって言われて」


 ジークは頭を押さえ、私はジークとウスラの顔を見比べる。

 この二人に共通して、私のことを知っている人物を私は一人しか知らない。


「……アンネ? 」

「正解。我が妹は、ウスラ王の求婚に条件をつけたんだ。王妃見習いをする半年間、ディタに側にいて欲しいって。できれば、近従としてアステラにも来てほしいとね」

「はあ?! 」

「まあ、とりあえずは君を落札した半年間は確保できた訳だ。後は話し合いになるかな」

「ダメ! 半年後は僕のお嫁さんにするんだから」


 ジークは、まるで子供のように私にしがみつきウスラを威嚇する。


「だから、ならないし」

「ならないの? 」


 甘い瞳で見つめられ、私は言いよどんでしまう。この瞳に見つめられて、意識が飛びそうになるキスをされると、何にでもうなづきたくなってしまうからだ。

 ジークもそれがわかっているから、私の手を握りながらスリスリし、最高に甘い笑顔でにじり寄ってくる。


「愛人なんてもっての他なの! 」


 愛妾にはなれても正妃にはなれない身分だ。第一、一夫多妻制なんて、私の常識じゃアウトなんだから。


「何人妃がいても、愛してるのは君だけだよ、愛しいディタ」

「やっぱり、他に妃をもらうつもりなんじゃない?! 」


 私だけだとか言いながら、こういう時に本音が出るのよね。


 私はジークの手をピシャリと叩いて、ジークと距離をとる。


「違うよ、誰よりも愛してるって言いたかっただけだよ」

「あんたと結婚とか、マジで無理だから」

「ディタ、なんなら私の愛妾になるかい? もちろん、名目上だよ。私もアンネ以外の妃を迎えるつもりはないんだが、一人だと回りがうるさいからね」

「それは……妻としての役目(子作りに付属する行為)をはたさなくていいってこと? 」

「まあ、私はどちらでもいいんだけどね、君に妻を求めたら……アンネにボコボコにされそうだからさ」


 ジークがいなければ、私はこの提案にのってしまったかもしれない。

 Sexなしの友達夫婦なんて、まさに理想だから。

 でも……。


 ジークの「まさか受けないよね? 僕を捨てたりしないよね?」という庇護欲を刺激される眼差しに、私はウスラの提案に首を横に振った。


 こんな残念エロ王子だけど、凄く不本意だし、できれば回避したいけど、ジークが相手ならば初体験も再度(楠木彩の時以来)チャレンジしてもいいかな……と思わなくはなくなっていた。

 本当に、無茶苦茶、できる限り回避したいんだけどね。

 できれば、泥酔している間に、何かで気絶でもしている間に、済ませて欲しいって思わなくもないけど。


「とりあえず、半年間王宮に通います。その後のことはまた後で」


 私は半年間アンネの話し相手として王宮に日参し、半年後にはミモザに大金貨七枚完済してカシス共々晴れて自由の身となった。


 そして王子様と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ………なんてことにはならないからね、絶対に!!


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



間があいてすみませんでした。

続編はカクヨムにて完結しております。


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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポのよいお話でとても楽しかったです カシスも恋愛して欲しいですね 続編もぜひこちらに掲載お願いします!
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