~説明はしっかり聞きましょう~
遅くなりました次話投稿です!
「えと...とりあえず双葉でいいのよね?
魔猪を倒したあの銀鮫はあなたの使役してる精霊?」
魔猪の素材を手際よく集めていたフィーリアが聞いてきた。
「あぁ、正確にはちょっと違うんだが」
フィーリアは素材を集め終わったのかこちらに寄ってくると、ジロジロと双葉を見てくる。
「でも、どう見ても貴方が強いようには見えないのよね」
余計なお世話である。
確かに俺自身は一般人も一般人だがこうもはっきり
弱そうと言われると心にくるものがある。
彼女は物事ははっきり言ってしまう性格らしい。
「命を救われたのは確かだし、これは少しだけどお礼よ」
フィーリアが10cmほどの紫色をした半透明な石を手渡してくる。
おいおいこれって...。
「これ魔石だろ?こんな高価な物本当に貰っていいのか?」
「貰うも何も魔猪やったのは貴方でしょ?
もともと私に貰う権利は無いのよ。」
わかったらこの話は終わりよ。
そう彼女はいうと歩きだしはじめた。
「なにしての?早く行くわよ
双葉にはギルドで一緒に報告してもらわないと」
話によればこの辺りで魔猪がでるのは珍しいらしく、
ギルドで報告するにあたって証人が必要らしい。
そういうことであれば行くことはやぶさかではなかった。
おれもちょうど町に行きたかった所だ、道案内をたのもう。
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この世界で目を覚まして6~7時間だがいろいろ
気がついたことがある。
まず1つ目はあのだ女神から貰った世界の知識のことだ。
一般常識を教えてもらったはずだったんだが、この知識は穴だらけ
もいいところでフィーリアの前でいろいろ恥をかいてしまった。
よくよく考えてみれば、感謝の気持ちをキスで表すなんてこと
元の世界でもハードルの高いことなのだ。しかもあって間もない
男にキスされそうになればビンタをくらうのも道理だろう。
あのだ女神本当に使えねぇ...。
もう1つは俺の力のことだ。
この世界の魔術というものは正確には精霊魔術というものらしい。
世界に無数にいる精霊と交信し、魔力を借り力を発現するというのが
一般的で他にも高位精霊と契約し精霊自体を発現させる者も一部いるらしい。
俺の場合は悪魔達と魔力を代償に力を借りているのだ。
似ているのだが俺の場合は悪魔の名を知り、契約するに値する
魔力を持っていないとそもそも召喚すら出来ないのだ。
なんとも難儀な力である。
それでも望んだ能力なので後悔はしていないが。
そうこう考えているうちに辺りは暗くなり始めていた。
「双葉、この辺で野営するわよ
言っとくけど変な気おこしたら...分かってるわよね?」
言うまでもないがフィーリアはご立腹である。
「フィーリアさっきはすまなかった。
あれが常識だと思ってたんだ。」
嘘は言っていない。
「どんな常識よ!あなたどこの田舎からきたのよ!?
そんな上質な服着てるから何処かの貴族だと思ったら
とんだ常識はずれの田舎者じゃない。」
そういえば俺スーツだった。
こっちだと安物のスーツも上質なものに見えるのか。
そんな事よりフィーリアになんて説明したものか...
そうだ!
「オレは東の果てにあるジャパンという島国からきたんだ。
そこは独特な風習があってつい...。」
実際そんな国があるのは知らないがこの場を収める為だ。
すまないフィーリア...
「確かにあの国ならありえるわね...。」
あんのかよっ!?
この世界にもジャパンあったよ...。
「もう、いいわよ。
地域の風習にとやかく言っても意味ないし許すわ。」
なんとか許してもらえたらしい。
気が引けない訳ではないが大方嘘も言っていないので許して欲しい。
「とにかくご飯にしましょ、まぁ大した物はないけど。
これでも食べる?」
フィーリアから受け取ったのはどう見ても泥団子だった。
フィーリアさん実は怒ってませんか?
彼女はそれを自然と口にしていているので、どうやら食べ物ではあるらしい。
受け取った物をまじまじと見ていると
「もしかして見たこと無いの?
それはパルンていう保存食で、栄養豊富で腹持ちがいいの」
パルンは小麦に似た穀物を使った保存食らしい。
どれまず頂いてみるか人の厚意は大事にしなくては
「~~っ!?」
なんだこれは、せめて想像を絶する味だったらよかった。
見たまんま泥みたいな味だ...。
なんでフィーリアは平然と食えるんだ?
「まぁ、味は見たまんま泥団子だけどね」
ですよねぇ...。
俺の味覚がおかしい訳でなくてよかった。
異世界初の食事は泥団子、なかなか気が滅入ってしまう。
簡単な食事?を済ませると
「じゃあそろそろ寝ましょう。
火の精霊よ常闇を小さな火で僅かに照らせ...灯火。」
唱えると小さな明かりが彼女を中心に広がりながら森の中へ
消えていく。
「フィーリアこの魔法は?」
「火の初級魔法よ?
本来であれば明かりを灯す魔法なんだけど、
大体10m範囲に何か悪意のある者が近づくと警告してくれるの。」
便利な魔法なんだなぁ。
ともかくこれで安心して眠れる。
二人は焚き火を挟んで横になると直ぐに睡魔が襲ってきたのか
寝息をかきながら寝てしまった。
かくして双葉の異世界一日目は夜が更けていった。