~森の中は危険がいっぱい~
「はぁ…、はぁ…」
ここまでくれば撒けただろうか?
まさかこの森で〈奴〉に会うなんて…!
何がこの森は比較的安全でスキルの練習にはもってこいよ
生きて帰ったらあのぷよぷよした頬を抓り上げてやるんだから!
彼女はこの場所を勧めてきたギルドの受付嬢の顔を思い出し
悪態をついた。
「これ、結構高かったのになぁ」
彼女の手には刀身の1/3を残し無残に折れた
ロングソードが握られていた。
この剣ではまともに戦えはしないだろう。
ましてはBランクの魔物〈ジャイアントファング〉の
分厚く硬い毛皮を貫くことなど不可能だった。
ジャイアントファングは大きな牙と分厚く硬い毛皮持つ
4m級の魔猪で、その突進は人間が到底耐えられるものではない。
Booooow!!
近くで魔猪の泣き声が聞こえる
そして足音は少しずつこちらに近づいていた。
彼女Dランク剣士〈フィーリア〉は
頬に流れる汗を拭い覚悟を決めた。
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「なぁどうして頭に乗ってんだ?」
俺は頭に乗っているちび鮫に声をかける
(元はといえば主の魔力量が足りんのが悪いのだ)
フォルネウスは不服そうにぺちぺちと尾ひれで叩いてくる。
話しによれば大鮫の状態は術者に多大な魔力を消費させるらしく
今の俺ではすぐに魔力が枯渇し倒れてしまうらしい。
そこで自身のサイズを20cm程にして魔力の消費を
最小限にしてくれたらしい。
なんて術者思いの悪魔なんだ…
しかしこのサイズだったらちび鮫かわいいな
(おい主よ、もしや失礼なことを考えてはいまいな?)
「イタッ!ごめんってほんと痛いから」
いくら小さくなったとはいえ牙はあるのだ頭を
噛まれればたまったものではない。
(分かれば良いのだ)
ちび鮫は機嫌を直したのか頭の上で大人しくなった。
そこで気になっていた事を聞いてみる
「実際の所フォルネウスはどれ位強いんだ?」
(ふむ、我の力を疑うのか?)
急に頭の上からプレッシャーが襲ってきた。
「いやいや、そうじゃなくてさ
フォルネウスの強さを知ることで今後戦闘する時に
役に立つかなぁーって」
すると頭の上からのプレッシャーが消えた。
(確かに、主に我の力を正しく知ってもらわねば
今後の戦闘に支障が出るかも知れぬな)
メッチャ怖かった…少し怒りっぽくないかこの悪魔?
(我はこの世界のランクで当て嵌めると…)
ちび鮫が自慢げに話そうとした時だった
Booooow!!
割と近い所でけたたましい鳴き声が響いた。
(ふん、我の力を示すのにいい獲物がおるようだな)
ちび鮫は頭から降りるとフヨフヨと鳴き声の方に
泳ぎだしていた。
「ちょっと待ってくれよ」
森の奥に行ってしまったちび鮫を追って双葉は走り出した。
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「もう限界ね…」
フィーリアの脚からは血が流れ地面に血溜まりが出来ていた。
Dランクの剣士がBランクの魔猪と戦っているのだ
勝算は無きに等しい。
あまつさえ、彼女の武器であるロングソードは折れ
相手に致命傷を与えるのも難しい。
それでも彼女がいまだに立っていられたのは
敵の動きをよく観察し回避に専念していたからであり、
魔猪の無限とも思えるスタミナは彼女のスタミナを削り続け、
遂には避ける事すら儘ならなくなり脚を負傷してしまったのだった。
まだ、私は何も成し遂げていない。
こんな所で死ぬわけにはいかない…。
もっと強くなって故郷救うのよ!
そんな彼女の思いを砕かんとする巨大な力の権化が
目の前に迫っていた。
「フォルネウス!!」
しかしその
力は絶大な力にねじ伏せられたのだった。
まずは補足を
ちびフォルネウス→魔力の消費を抑えるために小さくデフォルメしている。
20cmぐらい、肌表面は鮫肌かと思いきや、もち肌プニプ二
ジャイアントファング→Bランクの魔獣結構強い
牙は高級装飾品に、毛皮は防具になる
ただし肉は硬くて人間には適さない
フィーリア→今作ヒロイン予定のDランク剣士。金髪縦巻きロール
剣の腕前はまだまだ。でも観察眼はなかなかの物。
フォルネウスはまだ変身できます。
そのうちお出しするのでご期待ください。