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第3話 出会い

「…まだ情報不足であります。とりあえずこの本に挟んであった地図を見てここからずーっと東にあるセレネ王国に行くであります!」

 ヘイシはまだ少し背中に違和感を感じながらも地図を頼りに進みます。


「まだまだ遠そうでありますな…」


「おーい!そこのあんたぁ!!」


 突然女性の声が聞こえました。ヘイシが声の聞こえる方向をよく見てみると、誰かが手を振っています。

 

「な、なんでありましょうか…」


 ヘイシは小さな声で呟きます。突然の状況に戸惑っている様子。

 その場でキョトンと立ち止まるヘイシに対して、女性は猛スピードで走ってきます。


「はぁ…はぁ…」


 ヘイシの目の前まで来ました。

 息切れしている女性をよく見るとヘイシと比べ物にならない程良さそうな装備を(まと)っています。


「だ、大丈夫でありますか?」


「はぁ…はぁ、大丈夫!それよりあんた!私の仲間になりなさい!!」


 ヘイシに人差し指を向けバッチリとポーズを決める女性に対して、ヘイシは相変わらず混乱して言葉にならない声を出しています。


「あ、え…」


「あえ?はっきりしなさいよ!」


 この女性は結構気が強いようです。

 ヘイシは女の人に免疫がなく、なんの覚悟もしていない状況では咄嗟の判断ができないようです。

 それでもなんとか意志を伝えます。


「はい、よろしくであります…」


「よし!じゃ早速!ルドラ王国に行くわよ!」


「えぇ!?」


 ヘイシが驚くのも無理はありません。ルドラ王国とはヘイシが旅立った国なのですから。

 つまりヘイシにとっては来た道を戻る事になってしまいます。


「そ、それはダメであります!私はセレネ王国に行くのでありますから!」


「はぁ〜?何であんたが仕切ってんのよ!パーティのリーダーは私なの!!」


「い、いや、リーダーは勇者であるこのヘイシ・フツーノであります!!」


「何言ってんのあんた!?勇者は私なんだけど!!」


「……え!!??どういう事でありますか…?」


 どうやらこの女性は自らが勇者だと名乗っているようです。

 そうです、彼女が言っていることは紛れもない真実。彼女もまた勇者なのです。

 時は遡り、今から約7日前――


 勇者が寝返った事による各国の王達の会議が行われた翌日、ここメルク王国ではルドラ王国と同じように勇者の募集が行われました。

 しかしやはり勇者になるという事は自殺行為に等しいもの。志願者はいませんでした。


「くっ、このままでは魔王の手先、ルドラの王にまた無能勇者を排出されてしまいます…」


 メルク王国の女王はルドラ王国よりも先に勇者を排出しようと努力をしていました。


「お母様、私が勇者として旅立ちます。」


 この状況で志願した彼女の名は、メルセデス・フォン・シャルンホルスト。年齢は18歳。

 メルク国王を母と呼ぶ彼女は、この国の王女なのです。


「何を言っているのですか!お前はこの国を継ぐ者なのですよ?」


「そうかもしれません。ですがこの国を、この世界を放っておく事は出来ません。」


「メルセデス…し、しかし……」


 小さい頃から意志の強い彼女を止める事は出来ないと知っているメルク国王は長考の末、彼女の旅立ちに3つの条件をつけ許可しました。

 1.メルク王国兵を数人連れてゆくこと。

 2.メルク王国が誇る最高級の装備を身につける事。

 3.魔王討伐出来ずとも、必ず生還して帰ってくる事。


「わかりましたお母様。2と3は必ず守りますわ。」


 メルク国王は当然のように条件を全て守らないメルセデス王女に呆気に取られながらも3を守るなら良いと旅立たせました。


「やったぁー!!これで自由よ!!!魔王は適当にそのうち倒しとけばいいわね!」


 ――そして現在に至るのです。


「そうでありましたか…てっきり勇者を騙る悪者かと思ったであります!」


「うるさいわね。というか、あんたも本当に勇者だったなんてね。」

 

「しかし、私がリーダーなのは譲れないであります!」


「――私もあんたも勇者。ここまではいいわね?」


「…?はい。」


「あんたは16歳、私は18歳。私の方がお姉さん。お姉さんの言う事は聞かないとねぇ?」


「えぇ!?滅茶苦茶でありますよ!!」


 その後も口論が続き、結局パーティリーダー制は廃止してこれからの事は2人で相談する事になりました。


「もう仕方ないわね。私より頑固な人がいたなんてね!じゃあセレネ王国を目指すわよ!!」


「了解であります!!」


 2人になったヘイシ一行の旅は始まったばかり。





 


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