表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の手下〜〜裏切りの貴族〜〜  作者: まさかの
第1章 レーシュ フォン モルドレッド
1/42

始まり①

「世界は青く美しい」



 臭いセリフと思うが男は気にしない。

 なぜなら雰囲気に酔っているからだ。


 彼の名前はレーシュ・フォン・モルドレッド


 ここ先代より急激に実力を付けてきた貴族であり、

嫡子として研鑽も積んできた今では誰も意見を無下にはできない。

 実績もあり、今ではいくつもの裏社会と繋がりがある。

 手に持つワインを優雅に傾けながらチラッと目の前を見る。



 そこには絶世の美女がいた。

 目は大きく、金髪の髪。

 そしてスラッとした体つきにも関わらず、出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。

 服装は露出が大きく、見る人によっては下品と言うかもしれない。




 何故なら今日は欠けてしまった侍従を新しく雇う重要な面接中。

 しかしレーシュは怒らない。


 彼は寛容である?

 違う。

 見た目で贔屓をしない?

 違う。



 彼の面接の紙にはいくつか採点項目が書かれている。

 一部を紹介する。

 六.美貌

 七.スタイル

 八.セクシー

 九.彼氏

 十.結婚歴



 彼と婚約させるため、いい家の娘もたくさん来ている。

 しかし、そのほとんど面接は行うが落とすことが決まっている。

 今回募集している侍従はかなり特殊だ。

 もし来たとしても不幸なことが起きるだろう。

 だから家柄は不問と案内で出している。

 しかし目の前の女性は完璧だ。

 全てがパーフェクト。

 家柄さえも。


 レーシュの中ではもう確定事項だ。

 君に決めた。

 そう自然と心の中で決まる。



 その後も色々なことを聞いて、問題なし。

 そこでもう一度応募者名簿に目を通す。


「エステル」



 目の前の女の名前を呟く。

 目の前の絶世の美女エステルが首を傾げこちらを見ていた。

 慌てて笑顔で今の言葉を隠す。

 あまりの嬉しさに思わず口に出してしまったようだ。

 最初から呼び捨てでは馴れ馴れしくしすぎだろう。

 少しずつ仲を深めていけばいい。



 エステルとの楽しい面接も終わり続いてもう一人入ってきた。

 まだ他の応募者の面接は終わらない。

 しかし応募者名簿を見る限り、彼のお眼鏡に叶うものはいないだろう。

 しかし、貴族の令嬢が来ているため形だけでも行わなければならない。



 椅子に腰掛けた女性をみた。

 服装は一目でその人物を映す。

 麻の服。

 見るからに田舎者だ。

 顔はそう悪くはないがやはり貴族には負ける。



 彼は聞くまでもなく彼女に最低評価を付けていた。


ーーーーーーーーーー


 そわそわと大きなホールを見る。

 手には侍従を募集している広告。

 自分なら絶対そんな職は選ばないからだ。

 だが賃金がありえなく高い。

 高すぎるのだ。



「落ち着くのよ、私! 募集内容は満たしている……よね? 」



 大貴族のお世話をするなど考えたこともない。

 昔は王子様が白馬に乗ってきてくれないかと夢見たが流石に十八にもなるとそんな夢見がちではいられない。

 もう一度募集内容を見る。


 そこにはしっかり、家柄は不問、貴賎なしと書かれている。

 特に重要なのは護衛としても役割があるためその実力を証明する物を持ってこなければならない。

 先日倒した魔物の体の一部だが大丈夫だろう。



 中へ入ると、四十いかない女性がキビキビと受付として仕事をしている。

 もうすでに何人も来ており、どの人も美人だ。

 そのほとんどが戦闘などは無縁な貴族の令嬢だ。

 自分の受付の番になり、プロフィールとして書き込む指示がある。

 ふと視線を感じて横を見ると今受付を済ませた、これまた美人で露出の多い服を着ている金髪の女性が侮辱した目で見ている。



「えっと……何か?」


「あなたよく来れたわね。そのみすぼらしさで。顔も普通。戦いは少しくらいならできそうでしょうけど」



 いきなりの失礼な態度に初対面ではなく知り合いなのでは勘違いしてしまう。

 自分の服装を見てもたしかに質素だ。

 自分以外はドレスを着て結婚でもしようかと思えるほど着飾っている。



「まあ、あなたではどうせ受からないでしょうけど」



 高笑いをして去っていく。

 周りを見回しても皆今笑っていった女性と同じ目をしている。

 来る場所を間違えたかと悔しくなる。

 目の前の受付の女性は特に何も思っていないので嫌悪感はない。



 プロフィールを埋め、魔物の体の一部として赤い鱗を渡す。

 そのまましばらく隅っこで立って待っていた。



 着た順番に三人ずつ名前を呼ばれ始め、どんどん待っている人間が減っていく。

 先ほど言いたいことを言っていた女性は数えてみると自分と同じタイミングで呼ばれる。

 憂鬱になり、順番も近くなってきて緊張してくる。



「こんにちは」



 目の前に貴族の令嬢が挨拶できた。

 その顔は今来ている貴族の女性など比べるのがおこがましいと言えるほどの美人だ。

 同じ女でも見惚れてしまう美しさがある。

 自分ではなく他の人に挨拶したのではと思い周りを見渡すが自分から隅に行ったので周りは壁だけだ。

 そこでようやく自分へ挨拶したことに気づく。



「こ、こんにちは」



「そんなに畏まらないでいいですよ。エステルさんでいいでわよね? 先ほどこの魔物の一部を預かりましたがあなたが討伐したで間違い無いのですよね?」



 まるで疑っているようなその口ぶりに少しイラッとする。



「はい。もし疑われるのなら証明書も作成してもらいましたので調べればすぐにわかると思います」



 そう言って自分のショルダー型のバックから取り出そうとして止められる。



「いえ、それには及びません。ただ本人の口から確認を頂きたかったのです。不愉快な思いにさせたのならごめんなさい」



 貴族の女性は謝罪して頭を下げる。

 エステルは貴族が自分に頭を下げるとは思ってなくて慌てる。

 本来貴族は先ほどのがあたりまえだ。

 庶民を軽蔑して、税で私腹を肥やす。

 だが今目の前にいる女性こそが本来あるべき貴族ではないかと少し考えを改める。



「では私はそろそろいかないといけないので失礼致します。またお会いしたらゆっくりお話ししましょう」



 そう言って貴族の女性は特に名乗ることもなく、ホールから出ていってしまった。

 周りの女性を見て自分が採用されるとは思えないので最期の出会いとなるだろう。

 とうとう自分の順番になり、先ほどの嫌味を言う外面だけはかわいい女と扉の横で待つ。

 一人ずつ入っていく。


 そして自分の番がやってきた。



 目の前にいるのが大貴族の坊ちゃん。

 確かにかっこよく知恵を感じさせる。

 名前を思い出す。

 レーシュ・フォン・モルドレッド

 貴族の令嬢がたくさん来た理由もわかる。

 将来が有望なのだ。

 貴族社会を知らないエステルでさえその雰囲気は感じ取れる。



「よ、よろひょくお願いしゃす」


 緊張で舌が回らず変な挨拶となった。

 それにレーシュは笑いかける、肩の力を抜いて、と。

 エステルは顔が赤くなる。

 イケメンにそんなことを言われれば誰だって恥ずかしくなる。

 すぐにレーシュはペンで紙に書き込んでいる。

 もしかしてあれには緊張しやすいとか書かれているのかもしれない。

 気を取り直し面接を始める。



 面接が終わり、開放感でいっぱいである。

 だが面接中それ以上ペンが動くことがなく、もしかしてそれ以外はパーフェクトだったのではないかと気持ちが舞い上がる。

 しかし期待しすぎてあとでダメだった時の落胆がひどいのはわかっているのでなるべく期待しないようにした。



「レーシュ様かっこよかったな。受かってほしいな。でも最初嫌味言った女性は口が悪くても綺麗だったからあまり望みないのかな。せっかくだし可愛い弟のために本でも買っていこうかな」



 エステルは無事自分の住む村に帰り着き、採用通知を待つこと数日。

 それは届いた。


 採用と大きく書かれていたのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ