机の乱れは心の乱れ
掃除。それは、不純なるものを取り去り、対象を清める作業。
そう、つまり聖なる儀に同じ。
すなわち私は。
「心が綺麗なのよー」
嘘つけ。
ヨウ素のイヨは、ただいま絶賛水路掃除中である。
いつも通り、町長さんからのご依頼だ。
「んー、最近はゴミが多いのよー」
心なしか、水も汚れているような。
お客のマナーが悪いのか、そして上流から汚いのか。
「悲しいのよー、お仕事は楽しいけど、増えても嬉しくないのよー」
「そこにゴミがある限り、我々は掃除をする」
「よー」
ビックリしたが、微妙な反応。
「それこそが清掃員の運命」
茶髪の少女だった。手にはブラシが握られている。
目と目ががっちりと合う。それこそ、真の清掃員を決める戦いの幕開けだった。
「掃除のためならどんな力も出し惜しまないのよー!」
イヨは、魔法もフル活用して水路を磨く。捨てられたゴミは背負った袋に回収。手慣れている。
「これは私にとっての生きがい。易々と負けてたまるものですか!」
一体何がそれほどまでにお掃除に執着させるのか、少女も着実に水路を輝かせていく。真面目な作業だ。
そして、ちらっと通りすがった町長さんが目を丸くするほど綺麗になった頃。
「素晴らしい掃除術、お見逸れしました」
「いーえー、そちらこそ、とても丁寧だったのよー」
手と手を握り合う二人。
「勝者は…あなたですね」
「そんなことないのよー」
「私には楽しむ心が欠けていました…。心に余裕があるからこそ、細かな汚れまでしっかりと見つけられる。あなたはそれに気付かせてくれた」
「私は掃除をこなしてしまっていたのよー。けれど、あなたが初心を思い出させてくれたのよー」
夕日が二人を照らす。熱き友情の芽生えに相応しい景色だった。
「いやはや、私もびっくりしてしまいました。まさかあそこまで綺麗にしてくれるとは⋯」
「あらあら。でしたら、これから水路掃除はあの子に任せることにいたしましょうかね」
Elements。フェルニーと話しているのは、ビアンカの若き女町長シャーロット。赤毛混じりの短い茶髪が爽やかさをいっそう感じさせる、大人な女性だ。
「確かあの子は⋯イヨちゃんだったかな。次回からご指名を入れてしまおうか」
「是非。あの子、お掃除が大好きらしいですから。今回も喜んで引き受けてくれましたし」
「嬉しいことだね、そう思ってくれるのは」
「本当に、幸運なことでございますわ」
数分後、仲良くなった二人がElementsにやってくることとなる⋯。




