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Elements  作者: まそほ
序っていうのはどこの小説にもあるんだよ。
8/81

煉瓦の町フィスプ

ぎんぎらぎん

ビアンカの南側の近い位置。小さな森を挟んだ向こう側に、フィスプという町がある。

別名、煉瓦の町。

その名の通り、道や建物などには煉瓦が多く使われている。

エルスメノス王国中を走る列車に乗って、二人の少女がフィスプへとやって来た。

「ふいー、着いたわね」

「え、えと、町長のカーマンさんが駅の近くにいるはず…」

エインとスイジー。二人は、フェルニーのご指名によるお仕事中だ。

「局地的に木が枯れる、ねえ…ふーむ」

今回の依頼の内容は、フィスプ付近の森の木が、特定の場所だけ枯れてしまうというものである。

詳しい話は、町長が直々に教えてくれるようだ。

駅舎を出ると、噴水の近くに立っていた老人がこちらに手を振った。

見た目の特徴は伝えていたようだし、フィスプの人の髪色は、ほとんどが濃いので、すぐにわかったのだろう。

「あの人よね」

「多分…」

駆け寄ると、老人は深々と礼をする。

「よくぞ来てくださいました。わたくしが町長のウェルズィ・カーマンです。ささ、是非わたくしの家へお越しくださいませ」

「ご自宅ですか?」

「ええ。今回の依頼は実は、私と近しいもので話し合った上での独断でもありまして…」

人差し指を立て、小声で言う。

組織の中の一個人名義の依頼は、よくある事だった。組織となれば人が集まる。その人々の中には、元素の存在を快く思わない者もいることがあるのは当然だ。

法的にはグレーゾーンだが、まだ明確に禁止されていないものは違法ではないだろう。この国の司法は罪刑法定主義であるから。

町長の家は、駅前広場からそれほど離れていなかった。

周りよりかは少し大きく見える屋敷であった。門を開けると、石畳の道がある。その両側には、植物が不規則に育っている。

植物自体の手入れはされているようだ。

そして、二人は、屋敷の応接間に招かれた。

壁にはフィスプの写真であろうものが飾られている。古いものから最近のものまで、年代はバラバラだ。

クラッシックなソファに座るように促され、そのフカフカした身に腰を下ろした。

部屋には白い飾り枠のついた煉瓦の暖炉があるが、もう使う季節は過ぎ去ったため、使われた気配はない。

「さて、すみませんねわざわざ」

ウェルズィも、反対側にある同じソファに腰掛ける。

「いいえ、お仕事ですので!」

誇らしげに胸を叩くエイン。スイジーは控えめに頷く。

「まず、フィスプの南側にある名もなき森。そこの木が、1部のみ枯れてしまったことはご存知ですな」

「はい。その後、そこには何の植物も育たなくなったと」

「その通りです。土を調べて見ても異常はなく、特に異変はないようでした。しかし…」

「…明らかにおかしい。人智を超えている、と」

「はい…。どうすれば良いのかわからず、噂に聞いたElementsへとご依頼した限りです」

ウェルズィの表情は、疲れているようだった。Elementsが、最後に残った頼みの綱なのだろう。

「…了解しました!あたしたちが必ず解決してみせます!ね、スイジー?」

スイジーは慌てながらコクコクと頷く。

「それはそれは…心強いです」

ウェルズィは、ほっとしたように微笑んだ。

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