星に願いを
「私は、あのとき聞こえた星の願いを叶えたい。だから、星と星を繋ぐ橋を架けるの」
少女の指は五芒星を描く。五つの三角形とひとつの五角形。一つの三角形を除いて、キラキラと輝くヴェールのようなものに包まれていた。
「やっとここまで集めた。こんな所では諦められないわ」
恐らく、五芒星全てを生命の光で満たすことにより、術式が発動されるのだろう。
「そんな術式が発動したら、この星にどのようなことが起こるかわからない⋯空間が歪み、穴が空いてしまうかもしれない⋯!」
「それならそれで構わないわ!」
少女は、周りに星屑を浮かべる。
「人々は星々を忘れてしまっている。あんなに綺麗な星が見えるというのに、人は空を見上げることも明かりを落とすこともしない!」
星屑達が飛び交うのを、ひらひらとかわす。しかし、反撃はできない。少女は、自分の周りを結界で覆っていた。
「だから、教えてあげるの…星々の神秘を、偉大さを、恐怖を!」
結界は、水銀の兵士達では壊せない。スイジーには少女を止めることが出来ないのだ。
エルシーに無理をさせる訳にもいかない。自分がなんとかしなければならないのに、それは叶わない。
知識ばかりあっても、それを活用出来ないのなら無駄なこと。自分は、誰かが助けてくれないと何も出来ない役立たず…。
(…あれ)
何か違和感を覚える。
本当に、その知識は使えないのか?その知識は、自分には扱えないものなのか?
いや、そのようなことは無い。ぐるぐると書架を駆け回り、思い当たったある知識。
それは、錬金術。
おかしい。全て覚えている。覚えているのに。
何故、その力を忘れてしまっていたのだろう。何故、気が付くことが出来なかったのだろう。その知識は確かにあったはずだ。
「…星々の恐怖を教えてあげるのは私」
瞳の青白い輝きが、増したように見えた。
「スイジー⋯!」
木陰で、その様子に気付いたエルシーが焦ったように名前を呼んだ。しかしその声は届いていない。
力を込め、青い光を手に纏わせる。
「惑う星の声を…聞かせてあげる!」
秘められた水星の力が、容赦なく少女に襲いかかる。
その光は、ルナノーリズからも見えたという。
「どうして」
ボロボロになった少女は、座り込んで呟いた。
「人々が星を見上げることを思い出せば…争いごとはきっと無くなるのに」
弱竹のようにか細い声でそんなことを零す。
「…そう、ね。それほどの余裕があれば…醜い争いは、起こらないのかもしれない…」
「…私を捕まえるんでしょう」
少女は俯く。その声は暗く、重たかった。
「あなたを捕まえたりなんて、しない」
スイジーがそう言うと、少女は顔を上げる。
「どうして…、許してくれるとでもいうの?」
「あなたは…決して正しいとは言えないものだけれど、善意を持って行動した。それは間違いない…、それよりも」
それよりも、気になる事があった。
「この術式…あなたが組み立てたもの?」
「えっ?」
キョトンとする。
「違うわ、教えてもらったの」
「⋯誰に?」
不思議そうに首をかしげながら答える。
「金色の短い髪の、女の人」




