霧の中の欠片
目的地までどれくらいかかるのかは分からないが、大人しく二人についていく。
道すがら、元の世界とやらでの話をした。
どうやらこの二人は、元素たちのことを知っているようだ。どういう存在であり、どのように生まれたのかも。
こちらは相手のことを何も知らないというのに、まさか一方的に観察されていたということか。
しかし、先程何が起こったかについては知らない様子だった。
「へえ、そんなことがあったんだねー」
「不気味な霧…恐らくそれは、この虚世と繋がったために漏れ出たものでしょう」
「そして、運悪くあなたはこちらへ来てしまった」
運。そのようなもので異なる世界へと連れてこられたのか。仕方ないといえば仕方ないのだが、迷惑千万な話だ。
「極論、傘を持っていないのに雨が降ってきたようなものですわ。神の悪戯は除いてね。その現象を決めたものは自然的な力であり、あなたが何をしたからという訳ではないのです」
それはそうだ。…何もやましいことをしていない訳では無いが。
「でも、そっちの世界とここを超えられてしまう環境になったのは、自然現象とは考えにくいね」
「ええ。歪みも感じませんでしたので…」
「ひずみ?」
「歪み…そうですね。空間が歪んだものをそう呼びます。」
「歪みはいわば空間の亀裂。そんなものが何の前兆もなく現れたら溜まったものじゃないよ、普通の世界ではね」
「すなわち、自然現象ではない、何者かによる作用に違いないのです」
「何者かによる、作用?」
思い当たる節がない訳では無い。まさかとは思うのだが。
「全ての世界は宇宙で繋がっている。…正しく言えば、宇宙を共有している。どの世界の住民も、同じ太陽同じ月を見ているのです。とはいえ、ただ単に宇宙へ飛んできただけでは世界の移動は起こりません。そのようなことがあっては大変ですね。しかし、宇宙に対して何かしらの歪んだ力で…あなた方の世界でいう、魔力によって干渉したのなら、有り得ることなのですわ」
「…じゃあ、つまり」
犯人は一体…宇宙に干渉して、何をしようとしている?
「なんで、とかまではわからないけど、そこからはきっとあなたが見つけ出せるよ」
「私たちに出来ることは、もうお見送りのみ…さあ、この先へ歩いていけば帰れます」
「…ええ。私たちの世界のことは、私たちで落とし前を付けるのが道理というやつですからね」
頭を下げ、別れを告げると、白い光へと歩き出す。
段々、光は世界を埋め尽くすように広がっていき、やがて…意識は途切れた。




