花開く竹なんありける
「竹」
「竹林ですね」
「ルナノーリズの竹林。本で読んだことはあるけれど…見たのは初めて」
「聞いたこともなかったです」
「まあ、観光客向けだから…」
元素たちが依頼以外でお出かけをしない訳では無いが、この2人のはあまりしない。綺麗な景色に関心がないという事ではなく、ただ単にどこかに行こうと思わない。
「動物の姿は見当たらない」
「みんな逃げていったんですね」
「動物を遠ざける術式でもありそうね…、この木枯らしで埋もれて正確に分析できないけれど」
「やはり、中途半端な善心らしきものがあると考えるのが妥当でしょうか」
苦しむ姿を見るのが嫌。しかし植物ならそのような意識はない。そんなところか。
「あら」
何となく上を見上げたスイジーが何かを見つける。竹の先に、葉っぱとも違う何かが見える。
「花が咲いている…」
「花?あの…なんか、もさっとしたやつですか?」
「ええ、あれは竹の花。百年に一度レベルに珍しいやつ」
「なんですって」
「花だけじゃない、実まである」
「どのくらい珍しいんですか?」
「百年に一度且つ数千分の一の確率」
「なんですって」
「言い伝えとしては凶兆を示すけれど…」
「変なフラグを立てないでください」
「でも、それは、竹の花が咲いたら竹が枯れるからで、それを見た人々が不吉に感じただけでもあるの。ネズミが増えるとかいう実害もあったにはあったらしいけれど…」
「ネズミが増えるんですか」
「ネズミも追い払われているのではないかしら」
「それはそれでまずいんじゃ…」
「…確かに」
ルナノーリズの方まで大群で押しかけていなければいいのだが…。
「…?」
「どうかしました?」
「これは…」
スイジーが異変に気づいた。しかしその時には、手遅れだった。
「霧…!?」
気色の悪い紫色の霧がどこからともなく現れ、視界を塞ぐ。
「エルシー!」
呼びかけても返事はない。
(息が…、)
首を絞められているかのように苦しくなる。膝をつき、崩れ落ちる。
(これ、この感覚…は)
照明がフェードアウトするように、意識を手放した。




