月光の村ルナノーリズ
近代的な地下空間から外へ出ると、鬱勃とした森が広がっていた。道があり、そこを進んでゆけばすぐに辿り着いた。
「さて、まずは依頼主にお会いしましょう」
名義はルナノーリズとなっていたので、村長に会えばよいのだろう。
木造の小屋が建ち並ぶ道の先に、社のような大きな建物がある。あそこにいるのだろうか?
社に近づいていくと、その扉が突然開いたと思うと、中から、若い女性二人が出てきた。片方は薄いヴェールをいたる所にあしらった艶やかな装束に身を包んでいる。
彼女はこちらを見つけると、静かに歩み寄ってくる。
そしてその後を、少し背の小さい巫女服の女性が追いかける。
「月光の村ルナノーリズへ、ようこそいらっしゃいました。私が村の長のリィネでございます」
深々とお辞儀をした女性の話し方は落ち着いていて、長に相応しい威厳を感じた。
「こちらは私の側近、ミーシャです」
「お、お初お目にかかります!」
初々しさがみえるが、新人なのだろうか。
挨拶を済ませると、早速と言ったように本題へ入る。
「今回及び申し上げましたのも、他でもございません」
「…枯れ木事件」
「はい。一連の事件の話は聞き申しあげていましたが…今回のは少々、様子が異なると申しますか…」
悩ましげに手を頬にあて、考え込む。
「実際にご覧いただくのが早いですね。私共が近くまでご案内致しましょう」
「お願いします」
「それじゃあ、えっと、こっちです!」
二人の後ろを歩いてついていく。
恐らくまだお昼前だが、木々のせいで薄暗く感じる。
「そういえば、村がやけに静かでしたが、皆さんはどちらに?」
「村の方々には社に集まってもらっているんです。何かあった時、すぐに対応できるように」
「なるほど」
村でも対策を取っているようだ。こちらに任せきりでない所に、感謝の念を抱く。
「…何だか、動物が多いですね」
歩きながら気がついたことだが、随分たくさんの小動物とすれ違った気がする。森もどこか騒がしく、事件が起こっていることを実感させる。
「中には、山から逃げてきた子もおります故。気が立っているかもしれないのでご注意くださいませ」
幻想の世界を演出する動物達も、今はよろしくない現実を浮かばせる。居心地もどこかよくない。
「ああ、ここからならご覧になれますね…、あちらです」
木々の隙間を抜けると、崖に出た。そこから前方に山と、緑を割るように流れ落ちる滝が見えた。そして、まるでその山の頂から何かが溢れ出ているかのような、たくさんの黄色い棒のようなものが見えた。
「あれは…木ですか?」
「木、というより…あの山には竹が多いのです」
今まではぽつりぽつりと狭い範囲で起こっていたが、今回は違った。
「術式の規模が大きい…いえ、それどころではなく桁違い…」
「ええ。とても強い力で…人の子では近づくことさえできませんでした」
「まさしく死の呪い。人間どころか、他の生物さえここを避けるんです…」
「非力な我々では何も出来ず…」
「で、でもリィネ様はみんなを守ろうと迅速に対応をしましたよ、みんなに指示を出して…それに、ご依頼したのもきっと正しい判断ですし、何より…!」
リィネは、必死に話すミーシャの頭に、ぽんと手を載せる。
「ミーシャ、…そうね、あなたも手伝ってくれたから出来たことよ」
その様子を見て、スイジーとエルシーは顔を見合わせて頷く。
「ご安心ください、私たちが調べてきます。そして、必ずご依頼を成し遂げましょう」
「ありがとうございます…とても、心強いです」




