その変化はあまりにも
突然で。
今でも思う。…私はあの時、何故あのようなことをしたのかしら。
結局私は、あの子たちのことが気になって仕方が無いのね。
…研究者のくせに。
閉鎖的な空間に、申し訳程度に設置された窓から外を覗く。
今は夜。よく晴れている。見上げれば微かに星が、見下ろせば鬱陶しいほどのネオンの明かりが見える。
ここは、この辺りで最も背の高いビルであるので、街の光だけがよく見える。
「あ、居た居た。これから新しい研究者たちで集まりがあるので、来てください!こっちです!」
少し前まで、とても暗い顔をしていた新人研究者。今はとても可愛らしい笑顔で、私を引っ張って連れていく。
…そう、ここは変わろうとしている。
本当に、残忍な研究所だった。あの子たちの身体を好き勝手弄って、傷つけることを厭わなかったのだから。まだマウスの方がマシだわ…死ぬことが出来るのだから。
あの子たちは生きていない。だから、死ぬことはない。どれだけ傷つこうと、決して苦しみから逃れることは出来ない。…そう、永遠に。
なんて悲しい性なのでしょう。例えば戦争が起きて人間たちが居なくなったとしても、彼女たちは汚染された世界で生き続ける。…むしろ、その方が楽なのかもしれない。世界を浄化し、再び森を育めば…なんて。
けれど、冷酷な研究者は全て追い出してしまった。前陛下が亡くなられた時に。
もう、ここはクリス…あら、形だけでも陛下と呼ぶべきだったかしら。
陛下の管理下ではなくなった。姉妹の一番下の妹、ミリス様によって、自由が与えられたから。ミリス様は、研究所の悲惨な状態を知っていたのか、私に告げた。
そうして、ミリス様のお陰で事は為された。
「…さあ、壇上へ!」
壇上に上がる。
新しくなった研究所員は、前よりもずっと少なく見えた。
しかし、非道な人間はいないと思っている。
「…私たちは、ミリス様より信頼を賜り、その結果この研究所は生まれ変わった。そして」
そう、もうあの残酷な研究室の名では呼ばれない。
「ここに、中央化学研究所の設立を宣言します!」
元々、呼称なんてどうでもよかった。けれど、かつての名前で呼ばれるのだけは嫌。
何の変哲もない名前だけれど、何であれ私にとっては希望の光。
例えここが平和になったからと言って、全ての研究者があの子たちに手を出さないわけではない。しかし、少しでも、あの子たちの日々が平穏なものになれば良い。研究者の私がこう願うのは筋違いかもしれない。それでも、私は祈っている。
素敵なことよ。




