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Elements  作者: まそほ
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ロマンチックフェアリー

優しい色をした草木、金色の魚の泳ぐ泉。水彩画の世界に迷い込んだかのようなこの森は、エルスメノス王国南西部にある、精霊の森。

桃色黄色水色と、淡い色に発光する蝶たち。

フェアリーフライと呼ばれている。その名の通り、妖精のようだからである。

そんな精霊の森の代表的な生物を眺めながら、2人の少女が歩いていた。

「ちょうちょ、光っているのって」

「ああ、綺麗だね」

ルルとスピカ。仕事帰りである。

「蛍と同じ原理だと思われているようどけど、魔法の力が溢れているんだよね」

元素の誰かから聞いた話を思い出す。要は、魔獣の一種なのである。精霊の森は魔法の力が集まる場所で、そこで暮らす生物にはそれらが吸収されるらしい。

その結果、魔力過剰となって、小さな体に収まりきらない力が外に漏れ出して光っているのだという。とは言っても、魔法を扱えるものぐらいにしか感じられないようなものだが。

人間達にこれがバレると乱獲の原因になりかねないから、内緒ね、と言われたことまで覚えている。

「て…」

ルルが突然、足を止める。

「どうしたんだい?」

「声が聞こえるのって」

「声?」

スピカも耳を澄ましてみる。

…葉の擦れ合う音、水が流れる音、何かの生物が歩く音。そして、その中に、微かに聞こえた。

「…泣き声」

「なのって」

二人は顔を見合わせる。一体、どこから聞こえてくるのだろう。

スピカは腕を組んで首を傾ける。

「……おーい」

とりあえず、呼び掛けてみる。

「誰かいるのかい?出て来ておくれ」

スピカにはわからなかったが、泣き声が一瞬止んだ。

カサカサと草を揺らしながら、幼い少女が草むらから姿を現した。

茶色い髪の、三つ編みおさげの少女だ。

「…どうしたんだい、こんなところで」

近寄ろうとすると、少し警戒したような素振りを見せる。怖いからというよりかは、本能的なものに思えた。

「ルルたちは危なくないのって」

両腕をパタパタさせながら、ルルが必死に主張する。

「………迷子になっちゃったの」

同年代ぐらいのルルを見て少し安心したのか、少女はようやく口を開いた。

「わたし、シャルロッテ。病院で暮らしてるの。でも、ちょっと遠くまでお散歩をしようと思ったら、帰り道がわからなくなっちゃって…。先生は、一人で遠くに行っちゃダメって言ってたのに、わたし…」

目に涙を貯めながら、少女─シャルロッテはぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。

「ほら、涙を拭いて…、病院の名前はわかるかい?」

スピカに渡されたハンカチで涙を拭いながら、シャルロッテは首を横に振る。

「だけど、この森の中にあるの…」

「この森の中?」

つまり、精霊の森にある病院。そのようなものは聞いたことがないが…。自分たちが知らないだけなのかもしれない。

「川沿いの、小さな建物なの。川をのぼると洞穴があって、その奥には綺麗な恐竜さんがいるの」

精霊の森には川が三つ流れている。

そのうち一つは、今この近くにあるものであるが…。恐竜が─魔獣だろうか、住んでいるという話も聞いたことがないので、どの川沿いなのかは特定できない。

「精霊の森は広いからね…探すのは大変かも」

「で、でも…。見つかるのって。きっとこの森は、優しいのって。お家に帰りたいってお願いすれば、きっと大地は応えてくれるのって」

「お願い?」

シャルロッテは俯かせた顔を、上げる。

「そうって。ルルも一緒にお願いするのって」

「…森さん、森さん。わたしをおうちに帰してください。…これからはちゃんと、先生との約束を守ります」

「…お願いなのって。この子のお願いを聞いてほしいのって」

そう言いながら手を合わせる二人を見て、スピカもパンと手を重ねる。

「私からも、お願いします…」

辺りは、自然の音に満たされた。

それから少しの間もなく、不思議なことが起きた。

ルルの金色の瞳が、輝きを増した。大地を風が駆けていった。

「…ルル?」

スピカが何かを訪ねる前に、さらに驚くべき光景が広がった。

淡く輝く光の塊が、集まってきたのである。

「フェアリーフライ…」

蝶たちは、かたまって飛んでいく。

「…道を教えてくれるのって?」

「…ほんと!?」

シャルロッテは、ぱあっと顔を明るくする。

「…」

一体何が起こったのかはわからなかったが、二人が歩き出してしまったので、深く考える余裕はなかった。


白い壁の、小さな館のような建物。

シャルロッテはそれを見て、病院だと言った。

ここは、もしかすると…。

「シャルロッテ!」

女性の声が聞こえた。

建物の方からではなく、後ろからだ。

振り返るとそこには、深紅の髪の女性が立っていた。

彼女もシャルロッテを探していたのだろうか。

「先生!」

シャルロッテは、女性に駆け寄る。

「先生、ごめんなさい…」

しょんぼりとしながら、シャルロッテは頭を下げる。

「…」

女性は、ふぅ、と息を吐くと、シャルロッテの頭に手を乗せた。

「全く、心配しました。これからは、一人で遠くまで行ってはダメよ?」

「…はい!」

「よし。それじゃあ、先に戻っていて頂戴。ニールやマイネも待っていますよ」

シャルロッテはコクンと頷くと、建物の方へ走り出す。

すれ違う時に、足を止めて、

「ありがとうございました!」

元気よくお礼を言って、去っていった。

「…すみません、ご苦労をお掛けしてしまいましたでしょうか 」

「いいえ。そんなことは」

「何かお礼をしたいのですが…、そうだわ、もしお時間があれば紅茶をお淹れしますわ」

「紅茶なのって?」

ルルが目を輝かせている。ここは、お言葉に甘えるのが良さそうだ。

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