たたかう必要なんて無い
生も死も無い元素ちゃんたちだからこそ、そう思えるのかも?
「やっぱり、無くなった」
不意に口を開く。
「え?」
「ここに入ってから、あの視線のようなものが無くなった」
こちらはエルシーとスイジー。既にいくつか部屋を見て回ったが、何かの機械が置いてあるだけで詳しいことはよく分からなかった。二人とも、機械に関する知識はあまりないのである。
ようやく機械のない部屋を見つけたとおもったら、何も無い部屋だった。
「…私の、被害妄想かもしれないけれど」
「仕方ないですね、聞いてあげますから早く」
「憎悪の思念…、ハーミに渦巻く強い憎しみ。…私か、あるいは私たち全員に向けられた感情なのかもしれない」
私、と言ったのは、個人のことを指しているのではない。元素のことだ。
つまり、水銀。
「だとすると。やはり私たちを向かわせるよう仕向けたのかもしれませんね。ここに何かがあって、…陥れるために」
「列車に乗った時から付けられていて…ちょうど到着したところを襲われたのは、ずっと監視されていたから?」
「あの黒装束も、変な信者とかでも何でもなく、用意されただけでしょうね…奴らによって」
黒装束の人数はそこそこいた。しかし、この中では一人として出会わない。そもそもとして、そのような集団は居ないのかもしれない。
「スィエルやエインは特に何もなさそうだったし、もしかすると私だけ…、…?」
急にスイジーが辺りを見回す。
「どうかしました?」
「魔術…何かの術式がっ…きゃあ!」
「わっ!!」
言い終わらないうちに、そこにあったはずの床が無くなる。
思考がまともに働くまで、数秒かかった。
「っ…!」
エルシーはスイジーをしっかり抱きとめ、空中に浮かぶ。
「…ここは」
上を見上げると、先程の部屋が見える。その下。今いる所は、広い空間。
「あらあらぁ?」
そして、二つの人影を捉える。
「面白いお客様が落ちてきたじゃないのぉ♡」
奇抜な桃色のツーサイドアップの少女。
「夢のような偶然だね」
羊を擬人化したような少女。
エルシーは地面に降り立ち、スイジーを降ろす。
二人の姿に、見覚えがあった。
「まさかあなた達に会うだなんて…、あとスイジーもう地面に足ついてます落ちてません」
「…はっ!」
「で、どうしてあなた達がここにいるのかしらぁ」
「…なるほど」
「はっきりしましたね、奴らが私たちをここに向かわせた理由。…とりあえずフェルニーに連絡するので二人に事情話しといてください」
「えっ、私が!?」
いともたやすく行われるえげつない行為とはこのことである。
果たしてスイジーはどうするのか!?
「…」
「…」
「…」
重たい沈黙が流れています…。さあ、どう出る?
「えっと、ご機嫌麗しゅうございます」
おーっと、お上品な挨拶だ!お優雅お優雅ぁ!
「ご機嫌麗しゅうございます♡」
「ご機嫌麗しゅうございます」
フレンドリーに返してくれた!
「その、えっと、フィーミャとシエフ…?」
なんと、二人の名前を知っていたスイジー!どうやら知り合いのようだ。しかし合っているのか!?
「フィーミャです♡」
「そう、シエフだよ。覚えていてくれたんだね」
合っていたーっ!お見事です!
「あの…その、とりあえず、敵意はない」
大事ですからねえ、そこ。性格上無駄な争いは避けたいんでしょう。
「そう♡」
「了解した」
相手も了承しました、良かったですね。
「えっと、私たちはハーミの方々から依頼を受けて来たの…一応」
「ハーミの奴らからぁ?」
「む、それはどんな依頼だい?」
「それが…」
緊張が走ります…。
「…なんでも、ここにいる人たちが村を襲おうとしているだとか…。でもあなた達を見て安心した…。やはり嘘だったのね」
「まあ!信頼してくださってたのねぇ?」
「なんだか、嬉しいな…」
無条件の信頼…果たしてそれが裏切られることはないのだろうか…?二人の返答に注目です。
「もちろん、私たちはハーミの連中を襲おうだなんて考えたことないわぁ」
「ノー眼中ってやつだね。興味ない」
裏切られなかったー!良かったねスイジー!
…おっと、皆さん。この子達がどういう関係か、ですね?え、聞いてない?
…あーじゃあ聞いてるってことで。
それはまた、今度のお話なのでございます…。
え、やめて何をするやめ




