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Elements  作者: まそほ
青く光る死神編
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Argentum

Argentum…ラテン語。銀。

「薄暗いわねー、ここ」

「照明が青くて神秘的だな」

「…神秘的っていうかSF?」

雑談をしながら廊下を歩くエインとキュオル。やっぱり緊張感がない。

とは言っても、決して警戒していない訳では無い。

まさに、通路を闊歩する警護ロボでもいそうな雰囲気である。

「うーん、開きそうな部屋はないわね」

先程からいくつもドアを通り過ぎているが、どれも機械的なロックがかかっていて、外せそうにない。

「やはり、あのいかにもバトルフィールドな空間に行ってみるしかないんじゃないか?」

「そうねえ…」

通路の先に、空間があると思われるような光がある。

「…そうよねえ」

ちょっぴり苦笑いしながら、先へ進んでいく。


予想は的中した。

先にあったのは、メルヘンな部屋。壁は明るい桃色で、パステルグリーンのフカフカ絨毯が敷かれている。

ぬいぐるみやクッション、そしてロボットがたくさん置かれている。

「…だぁれ?」

そして一人の少女がいた。

「どろぼうさん?」

「…かなぁ?」

「泥棒ではないんじゃないか?」

「?」

疑問符を浮かべられている。

「うーん」

「誰だろうか」

「???」

疑問符が増殖している。

「はてさて」

「わからんな」

「?????」

疑問符パラダイス。

「でも、しんにゅーしゃはゆるさないよ」

考えることを放棄したのかそう言うと、少女の手の中に槍が現れる。

「幼女に物騒なものをもたせおって」

「ブーメラン投げてるっていうのは黙っておいた方がいいのかしら…」

「パルチだって、たたかえるもん!」

少女の叫び声に呼応するように、ロボットたちが動き始める。

「ええー多い!機械に歌は効果ないからキュオル何とかしてー!」

「何だって」

「うー、これなら硫化してた方が戦える」

「…はあ、全く。ならばその少女は任せたぞ!」

「お安い御用!」

キュオルの手に、巨大な棒付きキャンディーのような武器が現れる。金瓜錘だ。

まったく、幼女に危ないもの持たせおって…、って持たせてるの作者(わたし)か。

「ただの金属と甘く見るなよ、魔法の銅なのだからな!」

重たい鈍器を軽々と振り回し、ロボットたちを薙ぎ払う。

ロボットも反撃をする。遠距離から、光弾を撃つ。

キュオルは武器から片手を離すと、掌を突き出し、青緑色の炎を放つ。

それらは光弾にぶつかると、光弾もろとも消滅する。

攻撃するには小さいが、防御としては十分だ。

「さあて少女よ。このエイン様に年齢なんて関係ないから!」

大人気ない。なんと大人気ない。

といっても、槍を振り回すくらいなら、普通の少女ではないのだろうが。

「パルチ…まけない!」

少女は槍を構える。対するエインは、小さく呪文を唱え、右手に炎、左手に雷をまとわせる。

「電気伝導に熱伝導、トップレベルの魔術を見なさい!」

槍をかわし、炎撃と雷撃で応戦する。

(…その炎と雷で機械と戦えばいいんじゃないかな)

心の中でキュオルが呟いたのを察してか、

「…私魔術師としてはど底辺だからそんなに相手したら魔力持たないの」

とても生気のない顔をしてぼそりと呟いた。

「そうか…範囲攻撃は得意だし構わんだろう」

金瓜錘で、早速ロボットの半数が片付きそうだ。

「にしても器用なもんねー。その槍、身長より大きいんじゃない?」

「そうだよ。でも、おねーちゃんととれーにんぐしたからへーきなの」

エインの質問に律儀に答えてくれる少女。良い教育を受けているようだね。

「へえ、お姉ちゃん?」

「いつもいそがしいのに、パルチのためにじかんをつくってくれるの」

「あらそう、いいお姉ちゃんね」

「パルチのおねーちゃんだもん。いいおねーちゃんにきまってるもん」

「姉想いなのねえ、ご両親もいい子に育てたもんだわ」

(あいつら何で普通に話してるの)

映像はとても激しいが。

「…パルチにパパとママはいないよ」

「え?…っと!」

一瞬動きが鈍ったが、すんでのところで避ける。

「パルチ、めがさめたらきのしただった」

攻撃が弱まる。

「そしたら、おねーちゃんがとなりにいた」

動きもゆっくりになっていく。

「おねーちゃん、パルチにいった…」

その少女を容赦なく打ちのめしたりはしない程度の大人気はある。

「『 私は君から産まれたようだ』」

少女は完全に攻撃をやめた。同時にロボットも停止する。

「パルチ、わからない。どういうことなのか…。パルチはどうやって、どこでうまれたのかしりたいけど、おねーちゃんにそんなこときけないよ…。だっておねーちゃんはいそがしいから」

声を震わせしょんぼりと俯く。

「でも、こわいよ…」

心細そうに涙ぐむ彼女に、エインはいつかの少女を重ねていた。


「…っわかんない!全然わかんない!」

泣きじゃくる少女。

「私は誰なの?どうして私は皆と同じように生まれてこなかったの!?…嫌よ、自分のことがなんにもわからないなんて!!」

そんな少女は、その後なんと言われただろうか。


(確か…)

「私も自分がどうやって生まれてきたかわからない」

「エイン…?」

「でもそんなの気にしなくたっていい。これから自分を創っていけばいいのだから」

二人しか…いや、もしかすると自分一人しか覚えていない言葉。そして、そこに自分の言葉を付け足す。

「あなたはこれから何者にでもなれる。自分を、自分の好きなように彩れる。だけど怖いわよね、自由は。だけど心配しないで、あなたには頼れる素敵なお姉ちゃんがいるんでしょ?」

「…わたしを、これからつくる」

「そ。だから怖がらないでいいのよ」

近づいても逃げないのを確認すると、前まで歩いていき、屈んで頭を撫でる。

(…リチェやルルがエインに懐いているのはこういうことか)

幼女に優しいエインお姉ちゃん。という言い方をしただけで何だか変な響きになる。言葉の力は凄いのですね。

エインが放つのは、金ほど眩しくはないが、暖かい輝きである。

(あれ?でも私にはあんまり…)

そして、明るい、輝きという意味も持つ。

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