辺境の村ハーミ
「…ねえ、私たちどうしてこんなことになってるの?」
「さてな、知らん」
「あたしの追っかけと見た」
「違うと私が保証してやる」
「何だか愉快な人たちに絡まれたわね♪」
「頭の中がかしら」
「…オウカ、ハロゲン並みの刺々しさだしー」
「あはは何かおっしゃりました?」
「…刺々しい」
列車を降りた瞬間この有様だ。
黒装束集団がわらわらと湧き出てくる。
「こいつらがアレ?ハーミに危害を加えるっていう集団?」
「我々はその手下だ」
突然、黒装束の一人が口を開いた。なんと素直な悪者だこと。悪役依頼された人でももう少しうまく演出できるのではないか。
「し、シャベッター!」
「スィエル落ち着け!普通のことだ!」
「我らの野望を打ち砕こうとはなんと愚かよ」
「我らは崇高なる理想のために」
「我らの主の仰せのままに」
「我らの気高き意志は」
「だあーっうるさい!敵だってんなら殴る!」
「エインよいつからそんな野蛮になった!」
元からだと思う。
「私…皆より戦闘苦手なんですけど♪」
「エヌーゼ。こいつら基準にしちゃダメだから」
チエが安定のお守り役らしい。
「…まあ、だが。知っている事は全て吐かせるから手加減しろよ」
お守り役の許可が降りました。突撃!
…というわけなのだが。
「口程にもないな」
「きゃ♪私勝っちゃったわぁ♪」
「鬼め…」
結果は言うまでもない。こいつらは軍隊ともやり合えるであろうし。
「ぐ…」
黒装束が一人逃げ出そうとした。
しかし、その足は直後に停止する。
「逃げるな。お前らには聞きたいことがたっぷりあるからな」
足には氷がまとわりついていた。
「あ、熱い…熱いっ!」
「おっと温度を下げすぎたか」
「チエちゃんあなたさっき私に鬼って言ったわよね…」
チエによって生み出された氷は、0度など軽く下回る。凍傷なんてお手の物なのである。
息を乱してもがく黒装束に与える慈悲など持ち合わせていなかったらしい。
「…と、こういうのは私には向いてないな。…エルシー頼む」
「ちょっとどういう意味かわかりかねますがわかりました」
「笑顔…怖い…!」
「ちっ、下の下の下の下ですか。ろくな情報持ってやしませんね」
気絶した黒装束を放り投げ、悪態をつく。
何か話したとしても、人によって言っていることが違ったりした。下っ端だから何か変な教団の思想を理解しきれていないのか、それともバラバラなだけなのか。
どちらにせよ、まともな情報はない。
「社会から迫害されて辿り着きでもしたんですかね」
「エルシー本音出てる実はさっきから割と出てるけど本音出てる」
「はっ、私とした事が…少々荒ぶってしまったようですね」
純粋無垢(に見える)キラキラ笑顔である。
転がる黒装束たちを置き去りにして、一行は里へ向かう。慈悲などない。
道以外に人の手が加わっている様子はない。ひらひら落ちた紅い葉までそのままだ。
「…もう、長之月も終わりますね」
長之月が終われば神之月がやってくる。すなわち十月である。
「あー、新しい元素と出会えないかなー」
「でも、最近はやけに新しく見つけまくってるしー」
「チート能力もった奴が来たからな」
いったいどのフランシウムなのか…。
「来たぞ!」
唐突に響いたその声に驚き、ビクッと全員揃って立ち止まる。
「いらっしゃいましたか皆さん!」
「ああ助かった!」
進行方向から聞こえてくる。先に見える人影はハーミの人々だろうか…。こちらに手を振っている。
「ささ、皆さまこちらへ!」
随分と距離が離れた歓迎となった。




