いたずらに
私の好きな言葉です。
「侵入者ですか…?」
「うん、今エリーが足止めしてるの」
赤髪のポニーテール少女は、その緑色の瞳の上に不安げにまぶたをかぶせる。
「わかったです。すぐに向かうです」
立ち上がり、ポンと少女の頭に手を乗せる。
「テルーは入口の確認をするです」
「わかった!」
テルーと呼ばれた少女は、再び走り去る。
(エリー、今すぐ…)
まさに駆け出そうとしたその時だった。
『待ってください』
頭の中で声が響いた。
「…これは、さっきの子の声?」
階段を上っていたオウカにもそれは同じように聞こえ、速度を緩めながら耳を傾ける。
「…エリー?」
そして、勢いよく走っていた幼い少女にも。
「もし争いがあるならば、それは無駄なものです。もしまだないのならば、決して生み出してはいけません。…つまり」
回りくどく言いながら、フェルニーに声が届いているであろうことをグッドサインで示す。
「私はエリー。エルビウム。私も含めここにいる者は、あなたたちの敵になろうと思わないはずです…」
「…ま、私達も迷い込んだだけだからね」
よく良く考えればただの侵入者であった。
「なるほど」
その声は、階段の上から聞こえた。独り言を言っていたら近くに誰かいた時ってすごく恥ずかしいよね。
「さてはあなた、穴から落ちてきたりしたですか?」
「いかにも」
「やはり、どこかに通じていたんですね。あの空間は何か嫌な感じがしたので柵をして行かないようにしていたんですが」
「壊してないわよ。越えただけ」
「です」
「でも、別にデストロイしに来た訳では無いの」
どこかのお鉄様がデストロイモードに入りかけてはいたが。
「…私は酸素。名前はオウカ。人探しをしていたら迷い込んでしまったのよ」
「人探しですか…」
ようやく、真っ直ぐ伸びた赤髪の少女がその姿を現す。長袖短パンジャージ姿は、その気だるげな表情とマッチしていた。
「私はユイ。イットリウムです。十数年程前から、この人のいない空洞に住み着いていましたです」
「十数年前…?」
「はい、この空洞は元々あったものです。ですから、最深部の穴のことは私も知らないです。何のために作られ、そしてどこと通じているのか」
「…森の洋館よ。恐らくただの隠し通路ね」
どのように使う気でいたのかまではわからないが。
「…それで、探し人とのことですが」
「ああ…」
「ここには私達四姉妹以外は居ないです」
「四姉妹?」
「長女の私に、双子の次女エリーとテルー、そして末っ子のコヨビ…。今、コヨビはお出かけ中ですが」
「そう…。何だか押しかけて悪かったわね」
「いえ、こちらも事故とは知らず妹が失礼したです」
深々と頭を下げられるが、エリーとかいう少女は何も悪くないような気がする。
「お姉様」
後方から声がする。振り向くと、そこにはエリーとフェルニーの姿が。
「どうやらここには、彼女はいないようでございますね」
「ええそうね…ちょうど聞いたところ」
「果実の森は見当ハズレだったかもしれませんね」
「他のみんなに期待ね…」
ユイは二人の様子を見て、
「さて…。さっきお湯を沸かしたです。コーヒーぐらいしかないですが」
「あら」
「飲んでくですか?」
「それじゃあ…お言葉に甘えて」
元素であることがわかっただけで、争いが一つ消えた。彼女たちには、必死になって守れるような命がないからだろうか。ある種の無気力であるために、無駄な争いを避ける。
しかし、守りたいような命とは一体何なのか。…案外人の命も、空っぽなのかもしれない。
徒…しゅき。




