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Elements  作者: まそほ
消えた少女の捜索依頼編
40/81

夢見乙女

ミデレーリアへは、列車に乗って数時間かかる。

草原を抜け、山を抜け、そして大都会へと到着する。

その頃には、もう午後七時。夏なのでまだ少し明るかった。

駅から出ると、看板を重たそうに持った高層ビルや、気だるげに走る車、機械仕掛けのように歩く人々が目に入る。

「…私はこんなところでは暮らせそうにないよ」

チエが溜め息混じりに言うと、フララも苦笑いをして返す。

「同感だね」

地図を確認し、目的地へと向かう。

「にしても、スイジーが、か」

人々の隙間を縫いながら、チエがぽつりと呟く。

「珍しいことなのかい?」

「ああ。珍しいというか、一度も無かった」

「そう。…彼女は博識聡明と聞いたが」

「それは間違っていないだろうな」

もしかすると、今までもマグナに助言することがあったのかもしれない。

「彼女は…大事にされているね」

「…ああ、あいつは優しすぎるんだ。性善を信じて疑わない。頭は良いが、馬鹿ってことだな」

全く仕方の無い馬鹿だ、と、楽しそうに笑う。

「そうなのかい」

フララも、柔らかく笑みを浮かべる。

チエはもう一度地図を確認すると、前方にある建物と建物の隙間を指さす。

「…そこの路地裏に入ってすぐだと」

隙間へ入っていくと、手紙の通り、ネオンの看板が置いてあるお店が見えた。

Dreamy Bar…メルヘンチックな名前だ。

「店名も間違いなし。じゃあ入るか」

ドアに付けられた鐘を鳴らしながら、引いて開ける。

「あら、いらっしゃ〜い」

木の板の床、橙色の照明。木製のカウンターに立つのは、ポニーテールの若い女性。

「初めてみる顔ね〜。…あ、もしかしてメアちゃんの言ってた待ち合わせ相手?」

「お、恐らく…?」

依頼主の名前はメアというらしい…人違いでなければ。

「大丈夫、彼女からしか予定は聞いてないから。じゃあここの椅子にどうぞ〜」

そう言って、五つしかないカウンター席の端っこを指す。

「ビアンカからよね。ご苦労さま」

「いえ。ええと…」

「私の名前はネオラ・モンティーギュ。出身はセレネメンティアだけど、退屈だから、こうしてバーのママさんをしているの」

退屈というのは、人間関係のことだろう。セレネメンティアで暮らすといえば、貴族がほとんどだ。そんな世界でのカチカチした人付き合いより、こうしてフレンドリーに接する方がいい、ということか。

「あら、もうすぐ四十五分…そろそろ来ると思うわ」

待ち合わせの十五分前。自分たちが言うのもなんだが、早めに来るタイプの人間か。

そして、ネオラの言った通り、ドアが開いて、少女が入ってきた。

「こんにちは、メアちゃん。この二人みたいよ」

ジト目が特徴的な、黒い髪に、焦げ茶の触り心地の良さそうなケープとワンピースを着た少女。

見た目だけ見れば、十八歳ぐらい。

チエもそうだが、路地裏に入る時に誰も不審がらないのだろうか。いや、誰も見ていないか。

「…」

メアと呼ばれた少女は、二人を黒い瞳でじっと見つめる。

「えっと、こんばんは…?」

「…こんばんは」

ネオラに手招きされ、二人の隣に座る。

「わざわざ来て頂いてありがとうございます」

「いいえ、どうってことありませんよ」

「それで、その…」

「ああ、待ってね」

メアがネオラに目配せすると、ネオラは思い出したように店の外へ一瞬出た後、戻ってきてドアの鍵を閉める。

「これでOK、看板の明かりも消したし、誰も来ないでしょう」

「ごめんなさいね」

そういえば、聞かれてはまずいような話と書いてあったような。

「ええと…こほん。改めて、私がお手紙を差し上げました、メアです。こちらへお越しいただいたのは、他でもない、極秘調査をご依頼するためです」

続けられたのは、衝撃的な言葉だった。

「前女王シェーリ様のご息女…三姉妹の末の、ミリス様より言伝を預かりました」

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