蝋燭の炎
私は好物です。素敵ですよね。
日は落ち、月明かりと街灯に照らされているビアンカの住宅街。周りと比べて明らかに豪華な家の、ある一室。
コトン…と静かに音を立て、ティーカップが机に置かれた。
「ありがとう…」
ぎこちなく紅茶を口に含み、飲み込む。
「それで」
お盆を持ったメイドは顔を上げる。
「今はマグナが番をしているので構わないのでございますが…、ここまで来てお話することとは一体何でございましょう」
「フェルニー…その、」
高級そうなソファーに腰掛け、緊張したように肩を狭めるエイン。
「今日、会ったの…あいつと…」
「…あいつ、とは?」
「覚えているかしら…いえ覚えているでしょうけど。金髪緑眼のエルフ…」
漠然とした情報だが、フェルニーにはそれで十分にわかった。
「…ああ、彼女と。では先程の報告にあった謎の女というのは」
「ええ。そいつよ」
「彼女がついに目立って動き始めた…と」
「また始まるのかしら」
「いいえ。そんなことは私どもがさせませんから。そうでございましょう?」
「…ええ、ええ。そうね。だってこんなに暖かいの…こんなの初めてだから。絶対に守らなきゃ!」
立ち上がって拳を握りしめる。
「ふふ、ご報告ありがとうございます。こちらでも何かしらの対策を練りますので…、あら」
ガチャリとドアが開く音が聞こえてきた。誰かが帰ってきたのだろう。
「ちょうどお嬢様がお帰りです。夜道は暗いので、くれぐれもお気を付けくださいまし」
「…ええ。ごめんなさいね急に。でも少し気が楽になったわ」
帰り道、ふと気がついた。
フェルニーはお嬢様が帰ってきたと言った。しかし、自分は誰ともすれ違わなかった。居たのは一階の入口近くで、すぐ部屋を出たのだから足音ぐらいしてもいいはずだ。
それに、フェルニーが誰かに仕えているという話は聞いたことがない。確かに、あの家ならお金持ちが住んでいてもおかしくはない。
「…こんなこと考えたってわからないわね」
疑問を放り投げて、真っ直ぐ借りている家へと帰った。
蝋燭の炎がゆらりと揺らめく部屋。
「先程のお話ですが…」
「ええ、彼女は聞いていませんよ。私に聞こえなかったのですし恐らく」
「…あなたにはお伝えしておきます。くれぐれも…」
「彼女も含め口外厳禁ですね、わかっています」
「ええ。よろしくお願い致しますわ」




