静かに動き始める話
「効果テキメンね。さっすがあたしの歌だわ~」
「さて、早く治してやらないと…」
先程と同じように、杖の先をかざす。傷の癒えた動物は、その場で眠ったままだ。
「うーん、でも、原因を突き止めないとどうにもなりませんよね」
「そうだな。例え全員治したとしても…うーん」
ミミットを抱き上げながらカリハは首を傾けて唸る。
「…ん?これ…これだわ!」
突然、エインが声を上げる。
「この魔力だわ!私が感じていたのは…!」
そう叫ぶと、走り出した。
二人も慌ててそのあとを追う。
「え、エインちゃ~ん!待って~…」
エインは急に立ち止まった。
理由は明確だった。
「あんたは誰なの」
「…」
どこで聞いたか、エルフという生物がいたという。尖った耳をもつ人型なのだが、そのイメージと酷似していた。
「…ちぇっ、何だぁ。魔術師が来やがったのね」
金色の短い髪を揺らし、こちらを振り返る。
緑色の瞳が三人を見つめる。
「でもまあ…まだ銀の名があるだけ幸運ね」
「……あんた」
「おっと、何を言おうとしているかはわからないけど、禁忌には禁忌とされるだけの理由があるのよ?」
「…」
ベルとカリハには何の話をしているのか理解出来なかったが、わかることと言えば、この二人は知り合いらしいということだ。
「で?あんたはこんな所で何をしているわけ?」
少女はくすりと笑った。
「さあ?私にもわからないわ。でも…まあいいわ、言われなくてももう手は引く」
「…何のためにこんなことを?」
「…さあね?そんなの誰にもわかりゃしないさ」
そう言って彼女がくるりと一回転したと思うと、いつの間にかその姿は消えていた。
「待ちなさいっ、…」
「エインちゃん……」
オロオロとしながらベルがエインに駆け寄る。
「あいつ…確かね。…あー、なんて言ったっけ。まあいいか。でもあいつの気配は消えたし…何より、あいつの『手を引く』だけは信用していい」
「…お知り合いなのですか?」
「知り合いっていうか…んー、なんだぁ…?まあ知り合い?よくわかんないけど」
複雑な事情があるのか、それともただの遠い知り合いなのかはわからないが、エインの言葉はあまりに曖昧だ。
「では、早く動物達を助けにいきましょうか」
無理に聞く必要も無いと判断し、二人にそう提案する。
「しかし…時間がかかりそうだな、あのやり方だと」
「うー、この森の中心ってどこ?」
「神樹だ。…恐らく魔力が集まってるはずだが、森の端まで届くだろうか?」
「あたし…歌以外には火とか雷とかぐらいしか完璧に使いこなせないけど、一応不得意な魔術ってのはないのよ。でもあんまり力が強くないの。だけど、魔力を借りれば大きな魔術が出来ない訳でも無い」
腕を組みながら言うが、それは一つの要求を表していた。
「…ああ、皆を助けるためだ。神も許されよう 」
キラキラお星様 まんまるお月様
ゆらゆら揺り篭 妖精が揺らすよ
森も眠る 木々が眠る
さあ眠りなさい
夜はこれから 朝はもう少し…




