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Elements  作者: まそほ
希之女神編
27/81

そしてかえる

「…これからか?」

ディオーネは深く考え込む。

「少なくとも…元居た世界へ帰るつもりは無い」

「元居た世界…?」

「ああ。あそこは…あまりに危険な場所になってしまった」

この世界に降臨する前は、恐らく他のギリシャ神も住まう場所にいたのだろう。しかし、事情はわからないが、危ないという。

「しかしそうだな、アンダンサは私の加護がある限り安泰であろうし、無理に留まることもないな」

この女神…空気が読める!?

…さすが、天空の女神。

「じゃあ、引っ張っていってもいいのね?」

「おい言い方」

「はは、構わんよ。我々はここでは元素でもある。何も理解していない訳では無い」

「なるほどな…」

「よし、話は決まりだ。…脱出するぞ!」

パリンという音がすると同時に、空へと向かって飛び立つ。

「わあ…」

水や魚が、まるで自分たちを避けるかのように道を開ける。

「むふふ、海王の威厳だぞー」

こんな子でも海王の名は伊達じゃないらしい。

上へ出ると、本当に近くだったようで、そこからでもアンダンサが見えた。

「ところでディオーネ、ニオベちゃんはどうしたの?」

スィエルが聞くと、笑いながら答える。

「あの子なら、とっくにアンダンサにいると思うぞ」

人が変わり時代が変わっても、小さな女神がアンダンサへの深い感謝を忘れることはない。

「そうなんですね」

二人が伝承に残された女神だとはつゆ知らず。

…いや、チエ以外が忘れているだけで。

7人は海の上を飛び、アンダンサへ向かう。


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼

目的、珊瑚海に現れた海底洞窟の調査。

海底洞窟には二人の女神が眠っていただけである。害は何もないし、宝も何もない。…トラップはあるが。

アンダンサ付近で魔術の跡が確認されており、その儀式が原因で二人の女神を呼び起こしたと思われる。なお、儀式についての詳細は不明。

現在洞窟内は海水が入り込んでいると推測される。もはや用もなく行くような場所ではないだろう。


文之月 九日

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


「ふう…最低限のことは書いてあるからこれでいいでしょうかね…」

一人、報告書と向き合っているのはホウコ。

他の七人は挨拶に行っている。

書き終えて筆記具を置いた時、連絡機が震え出した。

何だろうと思いながら、応答ボタンを押して耳に当てる。

「ホウコです、どうかしました…?」

「女王陛下がお亡くなりになりました」

聞こえてきたのは、フェルニーの声だった。

「ああ…とうとう…、そうなんですね…」

前から陛下は病気をしており、周りの懸命な看病によりなんとか生き長らえていた、という状況だったのだ。

「ええ」

「陛下は…私たちにも優しくして下さって…それで、大変…、よくしてくださって…」

「ええ」

王族のなかでも、元素たちの扱いは議論となっている。

その中でも特に、陛下…シェーリの態度はとても寛容だった。

排他的な大臣たちを説き伏せ、今回のように依頼をしてくれることすらあった。

「ですから、しっかりと…報告をしましょう。陛下の最後のご依頼でございましたから」

通信は切れた。

ホウコは、もう1度ペンを握りしめる。



「大人しく帰れば見逃してあげてもいいよ」

どこかの森。空は灰色に曇り、今にも雷雨が降り出しそうだ。

そんな森の道で、一人の少女がある男を見下ろしていた。

「わ、わかった…わかった。わかったから、どうかこのことは…」

腰を抜かしたその男は、体格がよく、軽鎧を纏っている。

対する少女は、華奢な体の上に、Tシャツ短パンパーカーといった軽装である。

「べっつに言う相手いないし。早く帰りなよ」

少女の眼は男を捉えてなどいない。

「…」

見据えていたのは、その先に立つ少女の姿だった。

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