ろうまんあんどぐりーす
「…え、えと!仲良くなったんですね!」
「…解せないぞー」
チエに首根っこを掴まれて、ネプが連行されてきた。
どう考えても痛そうだが、顔色一つ変えていないところがさすがといったところか。
「むふふー、海王星なんて所詮私の力で照らされている惑星なのよ」
「恒星は強いんだぞー」
「さっきの悪口、私たちが考えたんじゃないからな…」
スイジーは、ただひたすらにネプを煽れと言った。そして、そのネタをたくさん教えてくれた。アーテナイのうんぬんかんぬんや、デメテルのうんぬんかんぬんとか。
「色々な意味で会ってみたいぞー…」
「とりあえず。先に進もうか」
「…連れてくの?」
「だって、あんな海原に放置できないし…」
「放置されたくないし…」
物語的に困るし…。
「…今さりげなく天の声が聞こえた気がする」
「あら、チエ。あなたそれ、地獄からの呻き声と間違えてないかしら」
さすがオウカ、お見通しらしい。
さて、そんなわけで一行は洞窟の奥へと向かっていく。
「そうそうスィエル。そこら辺に変な紐があっても引っ張らな」
「えいやー」
遅かった。
どこからか重々しい音が響いてくる。それは水の流れる音だとすぐわかった。
「この遺跡は王道をわかっていますね」
「うおおおお水だ!さあ、私の半身よかもーん!」
元素ちゃん特有の、自分と同じ元素なら引っ剥がせる能力を駆使する。
便利だね。魔法の力だもんね。魔法なら出来るよ。
「でも私たち王道とかシラナイデスネ」
「ホウコ、お前疲れてる?」
「憑かれました」
「ふーん、なんか違う気がしたけどこれは会話だからよくわからないしー」
そうだね。会話だからね。
「まあ、今回は水だったからよかったけど…用心しなさいね」
「はあい」
あまり理解していない返事だった。
まあ、相当なことがない限りは大丈夫だろう。
それにしても、もともと岩で囲まれた洞窟は陰鬱な雰囲気と思われるが、不思議とそうは見えない。
じめじめとした空気や薄暗い道をものともしないこの元素ちゃんたちの軽い性格のお陰なのだろうか。
「それにしても、先程から道が一つですね」
「しかも整備されているわ。昔に使われていたのかしら」
「そうかもな。この木…樫の木とかかもな?」
「え?確かにどれも湿ってるけど、あっ…霊木…確かにね!」
「え?うん」
チエは何となくでそう思っているが、スィエルはその方が神話っぽいという理由で、むしろ願っている。
全く、この子は変わらない。
「ん、何か扉が見えてきたぞ」
「おっ、これは謎解き不可避ですね!?ね!?」
ホウコもホウコで変わらず願望を込めて言う。
確かに扉にはなにか石版のようなものが付いている。
「えーと?なになに…我を示すものこそ鍵だって。なんか文字が浮かんでるけど…、2LiNbO3…?」
「……」
「………」
「分解しよう」
「そうだな」
「あ、ちょっとそこの二酸化炭素」
「任せろしー」
「ソヨソヨー」
なんだよこの勉強パート。
シータスとオウカが二酸化炭素を作り、石版にぶつけると、文字が変化する。
「2LiNbO3+CO2になった!使うのが二酸化炭素なら、人間でも開けられるわね」
「ここに来るまでが大変だけどね。酸素の量的に。ちょっと貰ったけど、どこからも補充されていないわ」
2人がそんな会話をしている間、何かを考えていた様子のチエは文字に触れようとしていた。
そして、タッチパネルのごとくなぞって見る。
すると…
「おおー、動きました」
「最近の遺跡はハイテクだぞー」
「いやこういうのって魔術の類なん…あれ、お前魔術師じ」
「わあー、Li2CO3+NbO2になったー」
Liと書かれた石版が二つ、Cと書かれた石版が一つ、Oと書かれた石版が三つ、どこからともなく出てきて、床に落ちる。
浮かんでいる文字は、NbO2だけになった。
「おー、これはNbを残せばいいのかー?よくわかったなー」
そう言いながら、ネプは興味深そうに覗き込む。マイペースなやつだと思いながら、チエは操作を続ける。
「まあ、CとOはここにいるし、Liは最近見つかったからな。消去法だよ」
後は速い。O2を動かすと、またOと書かれた石版が二つ床に転がった。
「これでいいはず…恐らく」
「そもそもこの先にいるのが元素とも限らない気がしますが…」
「あっ」
普段から元素が近い場所に、というか自分が元素であるので、勝手に脳が化学モードに切り替わってしまったのだろう。
もしかしたら記号を並べ替えて名前を作れ的なやつだったかもしれない。
「でも、扉開いたぞー?」
いつの間にか扉を開けて中に入っている四人。
いつの間にかネプがとても馴染んでいる。
「…元素じゃないとも限りませんが」
「これで間違ってなにか起こったら一週間ぐらい立ち直れなかったかも」
結果オーライということにして、二人も続く。




